1.イスラエルから見ないと話の筋は分からない


なにか中東で訳の分からない事件が起きるとき、だいたいそれはイスラエルの作戦だ。

推理小説では犯行動機として「受益」の可能性が問われることがよくある。しかし中東ではこの問題がいつもうやむやのまま推移していく。なぜだろう。

それがイスラエルという国の「死活的利益」を軸に見ていくと実に良く分かるのである。むずかしい幾何学の問題が補助線を一本引くことによって、ガラスがダイヤで切れるように鮮やかな切断面を見せるのである。

イスラエルの死活的利益を探るのは容易いことではない。なぜならそれは間違っていて歪んでいて、短期的で衝動的だからである。ただ、これまでの積み重ねの中から、「こうなったら連中はこう考え、高行動するだろうな」というのは薄々分かるのである。

2.トランプは弱みを握られている

自分の地位が安定していれば、トランプはこのような冒険をしない。彼はディーラーだからだ。ノーベル賞が欲しいからかも知れない(悪い冗談だが)

彼の岩盤的地盤は中西部の「錆びたベルト地帯」の労働者である。ティーパーティーや南部保守層ではもはや選挙には勝てないから、共和党もトランプに依存するしかない。

しかしトランプはセクハラ、パワハラなど不正の百貨店みたいな人で、中央政界には人もコネもない。ほおっとけば明日にでも倒壊しかねない弱体政権だ。

とりあえずなんとかして、二期目の当選を果たすしか眼中にはない。そのまえになんとかしてこれ以上のスキャンダルが発覚するのを抑えるしかない。

ところがそのスキャンダルの種を一手に握っているのが、情報力と強制力を持つ国家機構だ。だからトランプはこいつらに頭が上がらない仕掛けになっている。

3.トランプも一時は頑張った

「トランプも一時は頑張った」と言ってよい。

相次ぐ閣僚スキャンダルと更迭により政権はガタガタになった、打つ手に窮したトランプは、軍産複合体のエージェントであるボルトンとポンペイオを受け入れざるを得なかった。
ポンペイオとはなんとかうまくやれたが、ボルトンはトランプなどなきがごとくに政府を引きずりまわ始めた。

しかし習近平を相手に引き起こした米中摩擦が「ディール」として成功すると、トランプは強気になった。
日本のタンカーがホルムズ海峡で爆撃を受けると、国防総省が発令した報復行動を寸前で止めた。そして作戦を勝手に進めたナマズヒゲのボルトンを馘にした。


4.軍産複合体の操り人形となったトランプ

ところが、弾劾裁判が開始され新たな疑惑が浮上するに及んで、ふたたびトランプは軍産複合体の意のままに動くようになっている。

思えば、米朝会談で当日になってちゃぶ台返しをしたのもボルトンだった。つまり軍産複合体だ。
彼らの最大の圧力は議会証言にあった。おそらくFBI、CIA、NSAなどが情報を握り、それを小出しにして真綿で首を絞めるようにトランプを脅迫しているのだろう。彼らにしてみればなんのエスタブリッシュメントも背景に持たないトランプなど赤子の手をひねるようなものだ。

だからと言って、トランプ政権が倒れてしまわれても困る。その辺の手綱さばきが難しいのだろうと思う。


5.イスラエルの思惑

イスラエルはとにかくイランをやっつけたい。核兵器の生産はなんとしても阻止したい。そのためにユダヤロビーを最大限に働かせ、さまざまな策略をねっている。それがタンカー爆撃事件、無人飛行機によるサウジの石油施設爆撃、そして今回の事件だ。

イスラエルのやり口はきわめて謀略的である。思い出せば、シリアの民主化運動が内戦へと発展したとき、イスラエルはアサド政権を支持し、ヒズボラにフリーハンドを与えた。その結果、アサド政権は崩壊の危機を辛くも切り抜けることが出来たのだ。

その後ロシアがしゃしゃり出てくると、情勢はアサド優位に傾いた。そのときイスラエルは後景に却いた。シリアに民主派政権ができて、それがエジプトの政権とつながってふたたびアラブの大義を掲げるようになること、それは中東戦争の悪夢の再来だ。それだけは防がなければならない。

反イスラエル派の台頭を抑えてしまえば、あとはアラブ諸国が相争い潰し合う状況が永続してくれればそれで満足だ。肝心なことはアラブ・イスラム諸国の何れであっても核武装させないことだ。

そしてイスラエルはふたたびイランやヒズボラと事を構えるようになった。それにアメリカの軍産複合体もガッチリ組み込まれている。昨今のレバノンの「市民デモ」は、誰がやっているかは不明だが、どうせただの芝居なのではないか。

6.もろとも葬り去る他ない

このような悪のトリオはお互い持たれあい、支え合って、世界を軍事的に支配している。この邪悪なトライアングルを突き崩すには、内部矛盾に期待しても始まらない。もろともに葬る他ない。

それには大統領選挙にすべてを流し込むような他力本願を止めて、今すぐあらゆる場面であるゆる勢力が立ち上がって、彼らを全体として追い込んでいくことが唯一の解決策だ。