田中靖宏さん(日本AALA連帯員会代表理事)の報告 「核兵器のない平和な世界への展望を示す、第18回非同盟首脳会議に参加して」が発表されました。
何分にも長い文章ですので、感想部分のさわりだけ紹介させてもらいます。私の「抄訳:非同盟首脳会議のバクー宣言」も合わせてお読みください。

1.バクーの非同盟サミット会議

第18回非同盟首脳会議が10月、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれました。会議には120の加盟国と17のオブザーバ国・組織の首脳らが参加しました。日本AALAは今回は私と清水学さんがAAPSO団員、大村哲、浅尾剛の2人が随員として参加しました。

2.迫力のある首脳たちの討論

会場となったのは大きな会議場でした。なにしろ150カ国ほどの国の代表団が参加するので、広すぎて向こう側の首脳の顔は肉眼では確認できないほどです。しかし、それぞれの首脳たちの肉声はとても力強く、訴えの真剣さはひしひしと迫ってきました。

会議の成果は、採択されたバクー宣言に集約されています。

核兵器のない平和な世界の実現は可能だ、それにむけて力を合わせて頑張ろうという内容です。オブザーバーの中国やブラジルを含めると、世界人口の8割、国の数でいえば7割が反核・平和の課題で一致して声明を発したのです。
残念ながら日本の一般マスコミは、「赤旗」を除いてすべて無視しましたが、非同盟諸国のメディアは一斉にその成果と内容を報じました。

3.会場の模様

首脳会議に先立つ24、25の両日が閣僚会議でした。オバザーバーの席は後部で、AAPSOの席は最後列で全体が見渡せる場所にありました。私たちのすぐ前が中国で、右がプエルトリコ独立党、左がアルゼンチンといった配置でした。日本政府はいつもゲスト国として参加しているので、会場に席はありませんでした。

論議されていたのは閣僚会議に先立って開かれた準備会議がまとめた249ページ1172項目にわたる最終文書案です。

南米での事態をめぐる議論: 直前のボリビアの選挙でエボ・モラレス大統領が当選しました。これを祝福するとの表現にチリが反対をのべ、これにキューバが反論するなど議論がありました。

南シナ海の覇権問題: 中国の覇権主義的な行動に懸念を表明した項目はいわくつきのものでした。3年前にベネズエラで行われた首脳会議で、議長国のベネズエラが中国に配慮して表現をやわらげました。これにASEANを代表したラオスが抗議をして、採択では「留保」を表明しました。
今回の最終文書も前回の表現が引き継がれたため、タイ(ASEAN議長国)が「保留」を表明しました。議長をつとめたアゼルバイジャンの外相の采配はたいしたもので、合意点を提案し、不一致点は首脳会議に委ねることで承認されました。

4. やや低調だが、主役が交代

首脳会議といっても、首脳自身が参加したのは十数カ国しかありませんでした。とくに運動の推進役となってきたインドやインドネシア、エジプトなどが首脳の参加を見送ったことは、運動自体の影響力の現状を反映しているのかも知れません。

その代り、新しい諸国が運動を担う意気込みが感じられました。その象徴が開会総会ではその隣にイラン、ベネズエラ、マレーシアやバングラデシュ、キューバといった首脳が並びました。これらの国の多くは、米政権から敵視されて、さまざまな圧力や干渉をうけています。
それらの国がバンドン精神という国際的な大義をかかげ、世界の秩序と平和を守る姿をアピールしました。その姿勢が色濃く反映された会議だったと言えるでしょう。

5.議長国アゼルバイジャンの面目躍如

そうしたなかで首脳会議の象徴となったのが今回の議長国になったアゼルバイジャンです。非同盟運動に2011年に加盟したばかりです。
この国は旧ソ連の一国でした。北海道ほどの面積に人口1千万弱の小さな国です。90%がイスラム教ですが、第一次大戦後に世俗の民主共和国として独立しました。しかし独立は2年しか続かず、ソ連に組み入れられました。ソ連が崩壊した1991年に独立を回復しました。その後も隣国との争いが絶えず、ナゴルノ・カラバフの民族紛争とその後のアルメニアとの戦争で百万人もの国内難民が出ました。(私の「アルメニア民主化の話」を読んでください)

その国がなぜ非同盟を選んだのか。私が得た印象は、国民がヨーロッパの一員でありながら、東西文明の接点として架け橋になることをとても誇りにしていることでした。

たしかにこの国は十字路の上に位置しています。北のロシアと南のイラン、西のアルメニアとジョージア、さらにその先はトルコにつながっています。それだけにこの地域は古くから文化の融合と対立を繰り返してきました。国内にも民族間の矛盾、宗教間の対立をふくんでいます。

アリエフ大統領は開会の演説のなかで、独立後、国内の民族紛争の克服に努力する一方で、すべての国との友好を促進してきたと述べました。文明間の対話をうながす「バクー・イニシアチブ」を主催し、ロシアと米国・NATOの対話の架け橋になってきたと説明しました。それらの路線は非同盟運動の目標と役割に完全に一致するとし、今回の議長国として承認されたことに感謝しました。

6.会議に押し寄せる電子化の波

いちばん驚いたのは、会議の運営や資料のやり取りがすべて電子メールでおこなわれることでした。一時代前はいつも大きなプレスセンターができて、事務局や各国政府の担当がきて資料を配布し、ブリーフィングしてくれました。記者はその資料をうけとって記事にしていました。

ところがいまは、すべて電子メールで行われるのです。記者や関係者はIDをもらってスマホでアクセスし、そこでダウンロードして資料を入手するのです。スマホの操作に精通していないと話になりません。旧世代のわたしは途方にくれることが一度や二度ではありませんでした。

会場にはいれない随員たちは、控え室や会場の隣にしつらえられた映画館のような大ホールで大きな画面をみながら会議をウオッチするのです。一般メディアの取材陣は車で30分もかかる別のホテルに設けられたメディアセンターでの取材でした。記者たちの間からは制約の多い取材環境に不満がでていましたが、会議の運営という観点からは、国際会議や外交を重視するアゼルバイジャンの面目躍如たるものを感じました。

7.多国間主義と主権の擁護

今度の会議のテーマは「バンドン原則を擁護し、現代世界の課題への一致した適切な対応を確保するために」でした。この「現代世界の課題」は、各国の首脳からいろいろなかたちで言及されました。それらは最終文書の「前書き」に端的にまとめられています。

かいつまんでいうと、
* リーマンショックに象徴される世界経済・金融危機のもとで、世界的に貧困と格差が拡大し、地球環境が破壊され、新しい軍拡競争が始まっている。
* そのしわ寄せを勤労者とりわけ発展途上国の人民が被っている。
* そういう状況の下で、トランプ米政権のような自国優先の単独行動主義が広がり、力を背景に途上国にたいして不平等な交易条件や特定の発展モデルを押し付け、従わない諸国には制裁と称して「一方的な強制措置」がとられている。
* 非同盟諸国はこういう傾向に団結して対応しなければならないというものでした。

8.トランプとユニラテラリズム

とりわけ首脳たちが一様に強調したのが、ユニラテラリズムの動きです。ユニラテラルというのは、一方的なという意味です。ユニラテラリズムというのは単独主義とか一国行動主義という意味になります。

かつては軍備の削減や撤廃を、相手と関係なく自主的にやる意味(例えば一方的停戦とか一方的軍縮)でしたが、今は自分の思い通りに振舞う独善的な行動という否定的な意味で使われています。

端的に言えば、それはトランプ政権による一連の政策と行動です。

米国はもともと、「死活的な利害がかかわる場合には単独で独自に行動する」と宣言してきました。それでいて他の加盟国には国連安保理決議違反を厳しく追及し、場合によっては制裁を課し、武力行使さえ行ってきました。ユーゴースラビア空爆やリビア攻撃、さらにイラク侵攻など、すべて国連安保理決議なしでおこなわれました。つまり単独行動主義は米政権の一貫した政策です。

トランプ政権はそれにとどまらず、「アメリカ・ファースト」を掲げ、パリ協定やTPPからの離脱、核軍備管理協定の破棄、一方的な関税上乗せなどむき出しの自国優先主義をとっています。自国が結んだ国際条約や安保理決議さえも一方的に破棄する点で、一歩も二歩も進んでいます。

懸念されるのは、ミニ・トランプともいえる指導者が各地に現れて米国の一国主義に追随し、国内の引き締めを強化し国際的緊張を煽っていることです。関連しますが、首脳会議の会場で私の隣にすわっていた難民救援の国際団体の係官と話した際に、「日本と韓国の対立もありますね」といわれたのにはハッとさせられました。世界は日韓対立を同じようなナショナリズムや一国主義の広がりという角度でみているわけです。

9.国家の主権とマルチラテラリズム(多国間主義)の堅持

そのうえで首脳たちが強調したのが「マルチラテラリズムの堅持」という表現でした。それは国連を中心とする多国間の国際システムと、それを尊重する国際協調主義の考えを指しています。

マルチラテラリズムは日本国憲法の精神でもあります。憲法の前文にも「われらは、いずれの国家も自国のみのことに専念してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」と書かれていますが、まさにこれこそがマルチラテラリズの核心なのです。

こうした認識にたって首脳たちが採択したバクー宣言は、前文で国連憲章の目的、原則、規定をしっかりと守るとの決意を示したあと、最初の項で次のように述べています。

世界には違った経済、政治、社会、文化の体制をもつ国があり、国連はそういう違った国の存在を前提に成り立っているのだから、それらはお互いに尊重し、受け入れなければならない。

ここはとても大事なところだと思います。かつて日本共産党の不破哲三議長は、2005年の日本AALA創立50周年の記念講演のなかで、おなじことを強調しています

私たちはAALA諸国が歩んでいる道や状況を、その国がたどった歴史的経過を尊重してみる必要があります。その国が我々と同じ水準の代議制民主主義を実現していないからといって、安易に批判したり干渉したりしてはなりません。

バクー宣言はまずなによりも、各国の主権が尊重されるべきことを強調します。そしてこの各国の独立にたいする武力行使やその威嚇は許されないと訴えます。

そのうえで、
1.非同盟運動は、植民地主義と新植民地主義、人種差別、あらゆる形態の外国の介入、侵略、外国による占領、支配または覇権にたいするたたかいを貫いてきた。
2.非同盟運動は、これらのたたかいを通じて、大国中心の軍事同盟の一員ではなく国際関係のバランス要因になることを目指してきた。
と述べ、それを貫いてきたことが、非同盟運動の有効性と歴史的な発展を特徴づけていると宣言しています。

後編に続く