「日経ビジネス」に面白い記事があると紹介されたので読んでみました。
大変面白いです。要約を紹介します。
インタビュアーが“知ったかぶりのアホ”に見えてしまいますが、瀬口さんの的を得たコメントを引き出したという点では見事なインタビューというべきでしょう。



瀬口 清之 
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
2019年11月14日 


1.最近の香港の状況

香港の抗議活動は10月以降、急速に状況が悪化している。抗議活動が暴力化している。

リーダー格の人が拘束されるにつれて歯止めのないものになっている。

香港政府への怒りや、共産党政権への不安や怒りは理解できるが、よりよい社会を作る運動に向かっていない。

2.抗議活動の過激化を促した3つの出来事

1つは7月に白いTシャツを着た人々による抗議運動の参加者の襲撃だ。

警察はこれに対し、一般市民を十分に保護しなかった。ここから反警察の機運が高まり、抗議活動の暴力化が進んだ。
 
2つ目は、10月4日のマスクなど覆面の着用を禁止する法律の制定である。
これも人々の怒りの火に油を注いだ。

3つ目は、香港区議会議員選挙で、ジョシュア・ウォン氏の立候補が拒否されたことである。氏は2014年に広がった雨傘革命のリーダーで香港自決を主張している。

11月5日には、デモに参加した学生が駐車場ビルから転落死した事件も発生した。以上のように予断を許さない状況が続いている。

3.一般市民まで襲われる事態

中国系の施設襲撃や略奪が頻繁に起こっている。

中国系銀行はシャッターをこじ開けられ、火炎瓶を投げ入れられた。
中国出身の人が営む店舗も襲われている。それだけではない。デモ参加者を「暴徒」と呼んだ香港人の菓子店も略奪の対象になった。

香港市民は、自分たちがターゲットにされるのが怖くて何も言えなくなっている。

4.警察は暴力や違法行為を抑えられなくなっている

11月11日に警察官の発砲事件が発生した。これは警察にとって深刻な事態である。こういう対応しか取れなくなってきているということが問題だ。

香港の警察力は狭い香港の地域内に限られている。本土や他地区からの応援をもとめることは出来ない。
中国の武装警察が深圳に待機しているが、深刻な米中摩擦のもとでは、出動はほとんど不可能である。

5.闘争は深刻な経済的損害をもたらしている

中国人の訪問者数は半減した。土産物店、化粧品店、宝飾店などが続々と閉店している。

6.抗議活動の出口が見えない

当初は逃亡犯条例への反対でした。その後、経済格差への反発、香港政府・香港警察への反発、中国政府への反発へと課題が広がった。

現在は5大要求に集約されている。しかし獲得目標が曖昧なため一般市民からの支持がない。

香港の経済格差は激しく、約40人の富裕層に総生産の4分の3が集中している。これに対する手立ては明確ではない。むしろ反本土で真の問題がおおい隠されている側面もある。

本来なら、不動産税や相続税、贈与税などを富裕層に課す、所得税の累進度を高める、社会保障制度を充実させる、といったことを求めるべきだ。

しかし、こうした要求は見られない。

“香港市民社会の安定を目指して経済格差を本気で解消するための抗議活動とは思えません”

7.なんのための自決か

自決をもとめるなら最大の課題は行政長官の民選・普選であろう。

しかしその前に何のために自決が必要か、何のために参政権が必要なのかを明確にしなければならない。
そこが曖昧なのである。

その理由は実は、みんなのために命がけで義を貫き通すリーダーがいないからではないか。

8.香港の歴史的悲劇

なぜリーダーが輩出しないのか。それは香港が自決した経験がないからではないか。

香港は英国植民地として、参政権のない非民主的な統治体制に貶められてきて、それが政治的に血肉化している。

自決した経験を持たない人は、自決の仕方を知らない。そういう発想にならないのだ。彼らにとって香港は“自分たちの祖国”ではない。

少なくともエリート層はそう見える。自分の財産をいかに守るか、自分の移民先をどこにするかを考える。

抗議活動に参加している当の学生たちでさえ同様だ。富裕層の子弟が多いので、いつでも香港の外に脱出できる。
「庶民のために」という意識でやっているわけではない。

“これが香港問題の本質です”

習近平の評価については省略。せめて赤旗にこれくらい言ってほしかったが…