前540年  イオニアのエペソスでヘラクレイトスが生まれる。
宇宙の秩序は、いかなる神も、人も造ったものではない。それは常にあったし、今もあり、これからもあるだろう。
この世界は、対立するものの調和によって「変化しながら成る」ものであり、そこに「在る」ものではない。
「われわれは、存在するとともに、また存在しないのである」

存在を突き詰めていくと「非在」に行き着いてしまう。それは空気という非在でもあり、変動という非在でもある。

したがってアルケーは非在を存在とする「成」のエネルギーである。おそらくそれは熱力学、とくにエントロピーの法則を念頭に置いたものだろう。

火は、絶え間なく揺らぎ、燃え続ける点で「変化」であるが、一定の明るさを保ち続ける点で「不変」である。ロゴスとはこのようなものである。
これは物質存在の「量子性」の表現としての「火であるが、エネルギーと存在の相互転換を示唆する言葉もある。
万物は火の交換物であり、
火は万物の交換物である。

このアルケーの規定は、アナクシメネスの空気=根源論を大きく進めるものであり、エネルギー根源論と確率的存在論に踏み込んだものだ。

プラトンはこれを万物流転論に流し込むことによってイデア論の論拠にしようとするが、それではあまりに狭すぎるように思う。