その3

FRB、マネー制御難しく
短期債を月600億ドル購入、長期債は温存
金利安定を急ぐ

ワシントン駐在の川浪記者の署名記事

リード部分

短期金融市場の資金が逼迫している。短期金融資金の不足は短期金利の乱高下を招いている。
FRBは短期国債を月600億ドルづつ買い入れると発表した。

量的緩和の後始末としての量的縮小が、今回の短期資金不足の原因となっている。

FRBはバランスシートを再び拡大することになり、金融政策の「正常化」は一段と遠のいた。

一連の経過は、量的縮小が予想以上に困難であることを示している。

11日のFRB発表の概要

① 短期債の購入を開始する。
② 「これは現在の金融政策を変更するものではない」

量的縮小と短期金利の経過

リーマンショック以降10年でFRBの金融資産は4.5兆ドルに達した。

17年から量的縮小に転じ、これまでの2年間で3.9兆ドルにまで減少した。ただしショック前の資産量は1兆ドル足らずだった。

しかしその量的縮小の影響が短期資金市場にシワ寄せされた。市場から余剰資金が吸い上げられ、民間銀行がFRBに預ける準備預金は3分の2にまで減少した。これが短期金利の乱高下する理由となっている。

政策金利は2%弱なのに、銀行間金利は1時10%まで急上昇した。FRBは引き締めすぎたとの声が上がっている。

7月以降2度にわたる利下げが続いている。今月末に追加利下げが行われたとしても、もはや利下げ効果は期待薄である。
とすれば量的緩和に再び頼らざるを得なくなる可能性が出てくる。

量的緩和の今後

たしかに通貨量は不足している。グローバルには新興国の経済発展がドル需要を高めている。国内的には、財政の拡大と赤字幅増大が民間マネーの吸い上げを引き起こしている。

量的緩和はたんなる金融政策ではなく、経済の拡大に伴う必然的な経過という側面もある。

記事の最後は次の言葉で結ばれている。
量的緩和後のマネーの流れは、いまだに金融当局すら予期できずにいる。
その先にナイアガラが待っているのかどうかは誰にもわからない。


リーマンショック以来の連銀の金融政策は基本的には量的緩和であった。というより金利はすでにゼロ金利まで済ませており、それ以上やるとすれば量的緩和しかなかった。
だから、景気が回復したとき連銀が真っ先にやりたかったのは量的縮小であり、その後に適正金利への復帰という路線であったろうと思う。
私としては以前から気になっていたのだが、量的引き締めのテンポが早すぎたのではないか。
金利の上げ下げは見せやすい。トランプももっぱらそちらに目が向いている。
しかしこの10年間、もっとも有効な金融施策は量的緩和だったのであり、通貨量の調整こそもっとも慎重に行うべきではなかったのかという思いがある。

ということで、この記事には非常に興味があった。