大西広さんの「香港での暴力デモは運動の破壊者、真の敵は香港財界」という文章がとても良いので、営業妨害にならない程度に紹介する。
「季論21」に近く掲載されるというので、いわば予告編になる。

1.香港の運動は安保闘争だ

安保では外交問題を闘争課題とし、学生が主体となった。暴力学生の妄動も同じだ。

しかし日本では、その後の経過を経て暴力反対が原則となった。それが立憲主義の根拠となった。

日本の運動が獲得したもう一つの原則は、「内政不干渉」という基準である。それは「相手のため」の善意のものであっても介入は認められないという原則である。

2.2つの原則から香港デモを評価する

① 暴力反対の原則からの視点

「民主派」は現在、穏健派、自決派、それに本土派と3分列している。

本土派というのは、本土人の排外と独立を主張する強硬派である。
この強硬派と暴力を伴う過激派学生集団とは重なり合っている。

このあと大西さんは2度にわたる現地調査なども踏まえ、事実に即した評価を行っている。これについては原著を参照されたい。

本土派の理論ではなく、彼らの暴徒・破壊者との性格について許してはならない。それは内政干渉ではなく、暴力反対という連帯の原則に基づいての判断である。

② 内政干渉を認めない視点

これは国際右翼組織との関連を問う問題である。「自決派」の指導者と目されている人物の中に、明らかに国際右翼組織の支援を受けているものがいる。

それは全米民主主義基金(NED)と呼ばれる組織である。NEDは世界各国での政権転覆運動を支援している組織で、アメリカ政府の予算で賄われている。

自決派の多くは平和的活動家であるが、指導層にはかなり怪しい人物がいると見るべきである。

3.いい奴も悪い奴もともに手を携えて

「ぐるみ闘争」になったのは理由がある。不正蓄財や汚職など後ろめたい活動をしている多くの財界人が、引き渡し条例に反対したからである。

彼らは行政長官が「条例改正案は死んだ」と発言すると、手を引いた。

運動が退潮局面に入るとき、暴力的様相を呈するのは日本でも見られた現象であり、店仕舞に入りつつある。

4.中国経済は深く静かに浸透しつつある

香港のGDPは20年前には本土の18%あったが、現在は2.7%に縮小している。

「香港経済」は本土経済との一体化で大きな利益を得た。香港の富裕層は巨利を得たが、庶民の生活は悪化している。

以下、香港の富裕層の驚くばかりの反庶民姿勢が具体的に明らかにされているが、本文を参照されたい。

庶民の生活を苦しめているのは、じつは香港の富裕層なので、それを「敵は中国本土だ」というのは敵から目をそらす結果にもなりかねない。



綿密な現地調査に基づく実証的考察はまことに説得力がある。

私が感心したのは、もうひとつある。それは、各地の民衆闘争を連帯運動の立場から見るときに、「二つの原則」がもとめられるという提起にある。

私はこの提起に大賛成である。これらについては大いに議論してよいのではないだろうか。暴力も裏金も下品という点で同じであり、さらにフェークとかデマとかカルトとかヘイトとかも付け加えられるかも知れない。

もう一つは、ある運動に対して歴史的・客観的評価をする場合の視点とは異なることも認識しておくべきかも知れない。