ボルトン解任とアラムコ攻撃は一連だろう

ボルトン解任についての続報がほとんどないまま、早くも忘却の彼方に沈もうとしている。
そんなときにアラムコ施設への攻撃が起きた。これも世界を震撼させるほどの大ニュースだが、テレビはほぼ完全に無視、新聞も爆撃の軍事的・政治的意味をスルーして、「石油減産の影響」を論評するばかりだ。
“やれやれ”と思っていたら、ニューヨークタイムスのスッパ抜き。「ミサイルは西から飛んできた」というのだ。西といえばイスラエルだ。

そこで6月のホルムズ海峡での日本タンカーへの攻撃が生々しく思い出される。

あのときも今度も、アメリカは「イランのせいだ」と大宣伝を行った。しかし日本タンカーへの攻撃がイランのせいだと思っている人は誰もいない。

そして今度は、世界経済を揺るがしかねないほどの、けた違いに深刻な情報が飛び出してきた。

これらの事件をツラツラ鑑みると、ことは「米国政府がフェイクニュースを流したのではないか」という疑惑に達する。それが国防省筋なのか国務省筋か、それともCIA筋なのか、まずは発信元の検討から始めなければならない。

とりあえずの時刻表

少し事実経過を洗っておこう。
abukaiku
    米政府発表の衛星写真(これはこれですごいものです)
9月14日(現地時間午前) アブカイクとクライスの石油処理施設がミサイル攻撃を受ける。イエメンの反政府武装組織「フーシ」が犯行声明。

フーシ派は今年に入ってからサウジアラビアへの多数の攻撃でドローンを使用している。以前の攻撃では市販の標準的なホビー向けドローンだったが、最近の攻撃ではより高性能なモデルを使用し、飛行距離は約1500キロメートルを超える(国連報告)

9月14日 サウジのサルマン・エネルギー相、アラムコの施設2か所で生産が一部停止したと発表。ナセルCEOは負傷者は出なかったと語る。

この施設はサウジ最大で、日量570万バレルを精製する。これは世界の石油供給量の約5%に相当する。

9月14日 ホワイトハウスの報道官、トランプがサルマン皇太子と電話で会談し支援を申し出たと発表。

9月14日 ポンペオ国務長官、「攻撃はフーシ派のものではなく、イランが関与している」と述べる。さらに「イランは、ロウハニ大統領とザリフ外相に外交をしているふりをさせ、サウジに対する100回近くの攻撃を裏で操っている」と非難する。

9月14日 ザリフ外相はポンペオ発言について、「イランを非難しても、イエメンでの大惨事は終わらないだろう」と述べる。

9月15日 ブレント原油先物が1バレル11.73ドル(19%)上昇し、71.95ドルとなる。

9月15日 トランプ米大統領、必要ならアメリカの備蓄放出を認めるとツイート。「石油はたっぷり!」と大文字で書く。

9月16日 ロイターによれば、米政府高官は「攻撃は南からではなく、イランに近い西北西から実施された。巡航ミサイルが使われた可能性がある」と語る。

9月16日 サウジアラビア主導の連合軍、攻撃に使われた武器はイラン製だったと発表。

9月16日 米政府、15日に撮影された石油施設の衛星画像を発表。「衛星画像では攻撃が北あるいは北西の方向から実施されたことが示されている」とする。

9月16日 ニューヨーク・タイムズ、「すべて西側の方角から攻撃された跡が確認できる」と報道。

9月16日 コンウェー大統領顧問、「トランプ大統領は依然、ロウハニ大統領との会談を望んでいる」と語る。

9月16日 トランプ大統領、「誰が犯人か知っている。検証の結果次第では臨戦態勢を取る。サウジアラビア側から連絡が来るのを待っている」とツイート。

9月16日 22:37 JST サウジ外務省、攻撃に使われた武器はイラン製だったと発表。また原油生産が半減したと発表。

9月16日 英石油アナリストによれば、「現況は鎮火からは程遠い。供給混乱は数週間ないし数カ月続くとされる。

9月16日 ロシアは「すべての国に対し、状況を悪化させ得る早まった手段や結論を避けるよう」要請。欧州連合(EU)も当事者すべてが「最大の自制」を示すべきだと強調した。


極右・反イランのトライアングル

我々が念頭に置いて置かなければならないのは、この事件がボルトンが解任されるという事態に続いていることだ。前回もアメリカの忠実な番犬だったはずの安倍首相がイランを訪問し、イランの国際舞台への復帰に手を差し伸べたその矢先に起きている。

もう一つは、ボルトン解任直後の報道で解任理由がアフガン問題だとされている点だ。しかしこれは煙幕の可能性が強いと私は読んだ。本丸はイランだろう。

トランプが何を考えたかは知らないが、主要な問題は反イランのトライアングルにある。すなわちイスラエル、サウジ、そしてネオコンだ。

しかしこの三角同盟は徐々にメッキが剥がれつつある。とくにイエメン問題を頂点として、サウジの相次ぐ失政と軍事能力の低さが暴露されて以来、アメリカの中東管理の劣化はほころび程度のものではなくなっている。

誰かが戦争に引きずり込もうとしている

あまりメディアの注目は集めなかったが、8月にはコーツ国家情報長官も解任されている。このポストは中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)など、情報・諜報関係の全17機関を統括する要職だ。

一般報道では「イランや北朝鮮問題などの外交方針で大統領と対立した」としか書いてない。しかし前後の状況から見れば、明らかに6月20日の無人偵察機撃墜への報復作戦の発動と中止に関わっているだろう。

トランプのツイッターにはこう書かれている。(以下BBCニュースからの引用)
イランは無人ドローンを撃墜した。こちらは3つの別々の地点に報復しようとした。僕が何人死ぬんだと質問した。150人ですと将軍が答えた。そこで攻撃10分前に僕がやめさせた。無人ドローンの撃墜に対して相応じゃないからだ。

ニューヨーク・タイムズに対して匿名の政府高官は、「軍用機は離陸し、軍艦はそれぞれの位置についていた。中止命令が届いたとき、ミサイルはまだ発射されていなかった」と語った。
いままさに、アメリカの中東戦略の再構築を考えるグループと、そうはさせじと抵抗する極右派の抗争が頂点に達しているのではないだろうか。

確実なこと

私はこれだけ遠隔地にピンポイントに爆弾を打ち込める技術はフーシ派にはないと思う。しかしその可能性は否定はしない。

イランにはサウジ経済の心臓部をミサイル攻撃する理由がない。サウジとの全面戦争は、アメリカとの全面戦争を意味する。
彼らはトランプとの対話と制裁解除、核合意の再実現と実施を心から願っていると思う。しかしサウジ攻撃の論理的可能性を否定はしない。
abukaiku satellite
   この写真を拡大していくと、上の写真にたどり着く、結構怖い
確実なのはただひとつ、アメリカ軍とポンペオがどこからドローンがやってきたのかについて明らかに嘘をついて、イランに罪をなすりつけようとしたことである。