「9条の会」10周年講演会のメッセージが掲載されている。
なかでは韓国の金壇国大学教授の発言が光っている。

今の東北アジアは「敵対的相互依存」の悪循環の罠に陥っています。
中国という敵を作り、敵の威力を強調し、それで民族主義、保守的雰囲気を高め、それで政権の安定を目指す。
中国も、高まる民主主義、民主化の要求を抑えなければならない。
そのために日本という敵を作り、ナショナリズムを引き起こす。
そうすれば互いに敵でありながら、自ら敵に依存する「敵対的相互依存」の悪循環がエスカレートします。
相手への脅威が非常に高まれば、安全保障問題が問われ、そのために憲法を変えるべきだといえば支持率がどんどん高くなります。
韓国も含め「敵対的相互依存」の悪循環から抜け出すためには、市民の論理が、国家の論理・軍事の論理を圧倒すべきです。
そのためにアジアの市民社会が連帯し、アジア市民平和会議を開いてアジア全体の市民的平和憲法を作るべきだと思います。

もちろんこれは発言要旨なので、いくぶん筋道がギクシャクしているが、「敵対的相互依存」という考えは、なかなか斬新なアイデアだと思う。
私は、それぞれの国家と市民社会との敵対関係が、「敵対的相互依存」関係を余儀なくされているところにもっと注目すべきだろうと思う。
「敵対関係」の真の狙いは市民社会(という言葉が適当かどうかわからないが)との「真の敵対関係」をそれぞれの政府に都合よい方向に移すための、マヌーバーなのだろう。
だから連帯というのは、まずそれぞれの政府としっかり闘うこと抜きには存立し得ない。この点では、中国における市民社会の声というものがはっきりしない以上、安易な「連帯」は叫ぶことができないだろう。
さしあたり日韓の民主運動が、それぞれの闘いをもっと具体的に知り、手を携える必要があるのではないか。