赤旗経済面で注目すべき連載が始まった。
「米中デジタル競争」という題名で、寄稿者は愛知東邦大学教授の夏目啓二さん。本日は(上)でありこの後下になるのか中・下と続くかはわからない。
いづれにしてもインタビューでなく寄稿ということなので、相当力の入った記事であることは間違いない。
本日の見出しは「GAFAの支配と動揺」となっている。「支配」だけでなく「支配と動揺」というのが気に入った。
以下、要旨を紹介していく。
1.はじめに
GAFAはデジタル多国籍企業である。
それは世界のデジタル産業を支配している。
GAFAこそ現代世界経済の支配者である。
GAFAの2つの特徴として、①顧客の囲い込みによる利得拡大、②投資ファンドとの結合が挙げられる。
2.囲い込みで巨利
GAFAはプラットフォーマーと総称され、膨大な顧客を囲い込むことで、巨額な利益と高い利益率を確保する。
GAFAはいづれもデジテル技術開発により規模を拡大した後、投資ファンドの注目をあびるようになった。その後、新規株式公開(IPO)を利用して資本を調達して一気に巨大化をなしとげた。
これにより新たに巨大な顧客集団が創出され、高い売上対利益率をもたらす。
こうしてGAFA経営者と投資ファンドは、高利益率と高株価を一手におさめる一握りの独占者となる。
3.投資ファンドとの結合
投資ファンドはGAFA株の時価が押し上げられることで、さらなる投資家を引きつけるようになった。
新興プラットフォーマーはスタートアップ(二軍)と呼ばれる未公開企業からスタートする。
そのうちIPOにあと一歩というめぼしい企業はユニコーン(次世代GAFA)と呼ばれ、投資ファンドはテコ入れの機会をうかがっている。
投資ファンドはプラットフォーマーに対して、一種のパトロンとしての力を急速に獲得しつつある。
4.投資ファンドの実体
投資ファンドのうち最大手のバンガード・グループはアップル、フェイスブック、アルファベットの筆頭株主となっている。
このバンガードにブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社が世界の株式市場を席捲している。
彼らの持ち株総額は990兆円と言われ、そのうち500兆円をGAFAへの投資が占めている。
ここに今日の世界的な所得格差と資産格差の実態が厳然と示されている。
5.GAFAのゆらぎ、それをもたらしたもの
この強固な覇者連合のうち、GAFAの側に揺らぎが出ている。ここに現在の経済覇権をめぐる混乱の原因がある。
GAFAの18年通年利益(税引前)は合計で約15兆円だった。しかし売り上げ対利益率は6年前に26%だったのが20%にまで低下している。
この低下傾向はかなり確実な傾向(超過利潤の低下)であり、GAFAによる世界経済支配が揺らぎつつある兆候である。
「利潤率の低下傾向」は一般的なものであるが、直接的には強力なライバルの出現によりもたらされる。
それは具体的には中国のプラットフォーマーである。彼らはGAFAに倣ってBATHと呼ばれる。
すなわち、バイドゥ(百度)・アリババ・テンセント・ファーウェイの4企業である。
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