「母性は女性の集団的属性に過ぎない」と、ふと思いついて、まず書いてみた。
字面は悪くない。一見真実性がこもっているようにも見える。
しかし多分ウソであろう。それがウソだと言い切れない自分がいるし、おそらく「現代社会」がいる。

むかし同期の仲間に私以上にケンカっ早いやつがいて、婦人科医になった。
あの頃は労組の婦人部がさかんに活動していて、「生理休暇」を取りましょうと旗を振っていた。
彼は「生理休暇」に反対していた。「高血圧の人が高血圧休暇を取りますか?」というのだ。

生理になったら具合悪くなる、それはそうなのだが、「それは高血圧の人が血圧が上がったのと同じで、具合が悪くなったら休めばよいのだ」というのだ。
「具合が悪くなれば休んで療養する」というのはすべての労働者の権利なのだ。「その根源性をもっと突き出せ、安易にフェミニズムに頼るな」というのが彼の論理だ。

もともと「母性保護」は軍国主義と結びついた「産めよ増やせよ」の厚生思想の賜であり、女性の権利擁護とは何の関係もない。

残念ながら昨今の風潮は「血圧が上がったら休ませろ」ということさえ否定する「ブラック・モラル」が蔓延している。「生理休暇」という言葉は死語となり、どんなに辛くても働くという「男女同権」が常識となっている。

そして「闘え」とアジった友は、今は帰らぬ人となった。