デジタルアーカイブ 事始め 1

「デジタルアーカイブ」でグーグル検索すると、以下のような候補窓が開く。

デジタルアーカイブ_Google
「それで、いったい何を知りたいのだ?」と問い返されている気分だ。
私としては、前にも書いた「デジタル位牌」、あるいは「デジタル墓碑銘」みたいな物を作りたいのと、それを社会的に組織してみたいという夢があるのだが、それはいまのところ「夢想」に過ぎない。
まずはもう少し「ノウハウ」を勉強してみたいのだ。(そういえば最近は「ノウハウ」という言葉を使わなくなったなぁ)

まずはウィキペディア。
デジタルアーカイブ(以下DA)とは、博物館・美術館・公文書館や図書館の収蔵品を始め有形・無形の文化資源(文化資材・文化的財)等をデジタル化して記録保存を行うこと。
というのが基本で、つまりは図書館活動の一環ということだ。それは図書館の勝手であり、それだけの話しだ。

が、我々にとっては、文化資源がデジタル化することで、インターネットを経由して情報が得られるようになることのほうがはるかに重要だ。

インターネットでアクセス可能ということは、第一に無料であること、第二に手続き不要であること、言い換えれば匿名で使用できること、第三に複写・複製の制限がないことである。

率直に言えば、ネットで利用できないデジタル化は無意味だ。つまりネットで無制限にアクセス可能な文化資源のみをDAと言うべきだ。それ以外は“アーカイブのデジタル化”として論じるべきだろう。

そこで、現状としてはどこまでDAが広がっているのか、それはリアルアーカイブとの格差を縮小しつつあるのか、「DAリテラシー」のためのミニマムはどういうものか。
…というあたりを、基礎知識として確保したい。

いつまでもグーグルに独占させておくこともあるまい。そろそろ、DAに特化した検索エンジンができても良さそうな気がするが。
(個人的には見出し語にPDFとつけて検索している。これで大抵のものは引っかかるが、HTMLファイルを見逃すという弱点がある)

とりあえずこれで記事1回分にする。


デジタルアーカイブ 事始め 2

つぎはデジタルアーカイブ学会のサイト。

不思議なことに、ここには読むべきアーカイブは存在しない。
ただDAの当事者の抱える問題意識は「第3回研究大会 企画セッション」に示されている。

そのセッション名を列記しておく。

セッション (1) 記憶を集める・公開する―まだ存在しない「アーカイブ」を考える

デジタルアーカイブ構築の議論がさかんだが、技術への関心に先導され、「誰の」「どんな記憶を」「何のために伝承していくのか」という論点が置き去りにされている。
ボトムアップでアーカイブづくりを行う「イメージ」を作り上げたい。

セッション (2) デジタルアーカイブと東アジア研究

そういうセッション

セッション (3) デジタルアーカイブ推進法を意義あるものにするために

多少生臭い話

セッション (4) 災害資料保存とデジタルアーカイブ

大規模災害に際して、被災した資料をレスキューする活動がある。デジタルアーカイブ関係者がその最前線の活動にどのようにコミットするか。
とりあえず行政的課題でしょう。

セッション (5) 日本文化資源としてのMANGAをアーカイブする〜京都/関西における活動と課題

予算が取れそうなプロジェクトですね。

セッション (6) アーカイブの継承

これはデジタルであるか否かを問わず、いちばん大事なセッションです。

「デジタルアーカイブの黎明期から課題になっている、デジタルアーカイブの消滅と継続性、という問題に焦点をあてる」のだそうです。

この、もはや哲学的とも言える問題について、少し考えてみましょう。

アーカイブというのは「情報」という無形の財産を、「記憶遺産」として捉えたときに生まれる考え方です。

このまま滅びさせたくないからアーカイブ作りをするのに、そのアーカイブそのものが消滅してしまうんでは話しになりません。

去年だったか、孫を連れて「リメンバーミー」というアニメ映画を見に行きました。
えらく哲学的な映画で、「人間は二度死ぬ。一度目は肉体的に滅びる。そして二度目は、その人を憶えている人が誰もいなくなったとき、その時に精神を失う」というのです。
これはメキシコの古くからの言い伝えだそうです。

人は死ぬことは受け入れるが、自分が生きていたという証拠は残したいものです。しかしそれも無駄なことかもしれません。


デジタルアーカイブ 事始め 3

こんなことをいくらやっててもらちが明きません。

いま日本にDAと呼ばれる資源がどのくらいあるのか、どんな物があるのか、そのうちで公開されていてアクセス可能なものはどれくらいあるのか。

その話が書かれているのが下記の記事です。



で、国会図書館のリサーチ・ナビに掲載されています。

図書館や美術館・博物館、文書館などの所蔵資料や所蔵品のデジタルデータをデータベース化したものを一般的に「デジタルアーカイブ」と呼んでいます。

ということで「利用がしやすいDA」が一覧表になっているが、これが意外に少ない。

1. 国立国会図書館
2. 公立図書館
青森県立図書館  デジタルアーカイブ
大阪市立図書館デジタルアーカイブ
3. 大学図書館
東京大学 総合図書館
千葉大学 千葉大学附属図書館
九州大学附属図書館
京都大学京都大学図書館機構
島根大学附属図書館デジタル・アーカイブ
4. その他
国立公文書館デジタルアーカイブ
新日本古典籍総合データベース 国文学研究資料館

これだけだ。国会図書館はDAを相当狭く解釈しているようだ。国会図書館に限らず既存の図書館系DAはいわゆる「お宝画像」や「地域史」のアップに集中している。どうも私の考えたDAとは目指す方向が違うようだ。
私が考えているのはグーグルブックスや青空文庫に載るような普通の書物で、かつ「遺産性」の高いものだ。
各大学が力を入れ始めたリポジトリのようなものを、単行本くらいのボリュームで開示してくれるものがほしい。神田の専門書中心の古書店がまるごと収まるようなものだ。これはある程度公的な支えがないと不可能と思う。
現在のところ、「アジ研」(ジェトロ)のサイトがそういう目的に最もかなったサイトだろうと思う。