アバドの時にも書いたのだが、ポリーニとアバド、政治的姿勢はまことにけっこうで共感すべきものがあるのだが、音楽的にはどうもサラリとしすぎてているというか心酔わせるものがない。

ポリーニのショパンはきわめつけと言われるが、そんなものかねぇと思う。もっともYouTubeはどういうわけか低音質ばかりで、そういえばCDも皆スカばかりだ。というより、トスカニーニと同じで、こういう音が好きだったのかもしれない。

YouTubeは親切で、ポリーニがショパンコンクールで優勝した時の実況録音をアップしてくれている。この時のマズルカ(作品59の3)がいいんだね。

モノで低音は全然聞こえない。しかし演奏はそれを補って余りある。完全無欠という感じだ。


この後ポリーニは長い休みに入って、それから楽壇にデビューする。それからの音作りはまったく違う。

2千とか3千人の聴衆を相手に弾くショパンだ。そちらも完全無欠かもしれないが、私にはさっぱり響いてこない。

ポリーニのノクターン全曲というのが高音質で聞ける。さっきからずっと聞いているのだが、完全無欠だが少しも面白く無い。お経を聞いているようだ。いかにすればショパンを、完璧かつ面白くなく弾けるかというのが彼の目標ではないかという気すらしてくる。


しかしコンサートの残響たっぷりの会場で聞けば、印象は違ってくるのかもしれない。シンフォニー・オーケストラを聞くように、その響きに身を委ねていれば、自ずから一種の快感が湧いてくるのだろう。ポリーニに代表される現代の音作りは、バイオリン1丁、ピアノ1台で大ホールを埋めた数千の観客を感動させるように作られているのだろう。

良い演奏かどうかを決めるのは、そういうコンサートに足繁く通う熱心なフアンなのだろう。

当然そうであっていいのだと思う。そっちがほんものなのだから。しっかりカネもかけているし、苦労も厭わずに聴きこんでいるのだから。


私のようにYouTubeで低音質の音をただで聞いている連中の出る幕ではない。ただそういう連中が聴くときの評価は少し違ってくるということだ。

ふと思いついたのだが、YouTube大賞みたいなものがあってもいいんじゃないだろうか。もうちょっとひねれば「貧乏人大賞」とか、「ただ聞き屋大賞」とか…

演奏家にしてみればそんな賞もらってもひとつも嬉しくはないだろうが。