アレイダ・ゲバラさん講演録

2008年5月 東京講演会

 こんにちは。今日はたくさんお話したいことがあります。でも……いつも時間はありません(笑)。

キューバ、教育と医療の革命

まずは大急ぎでキューバの歴史をふり返りつつ、教育と医療について触れたいと思います。
 キューバにとって大きな社会的変化といえばキューバ革命です。キューバ革命が起きたのは1959年1月1日。この日以来、キューバは革命を続けています。
 革命以前、国内の医療はほとんど皆無でした。医師は人口500万人に対し6000人しかいませんでした。乳児死亡率は0・6%でした。識字率は33%でした。

 こうした現状は米国による支配のためです。20世紀初め、キューバはスペインから独立しましたが、その後米国に支配されることになります。米国はキューバの広大な土地を独占していました。製糖業、酪農、銀行などが米国企業によって事実上独占されていたのです。
1952年のクーデターと軍事独裁以後、支配政治はさらにひどくなり、もうキューバの人は生きていけないと思い始めました。そういう機運が高まって革命が起きたのです。

 革命後、政府が最初に着手したのは教育でした。キューバ革命の先駆者ホセ・マルティは「人々は教養があって、はじめて自由になれる」と言っています。教育は人間としての権利です。
つぎに政府が緊急課題としてとりくんだのが医療の無償化です。健康もまた人間の権利だからです。人の命は売買できるもではありません。命は聖なものです。

 こうして政府は教育と医療の無償化を進めたのですが、みなさんは途上国である我が国がどうやってこれを可能にしたと思われますか。それは農業や天然資源を国有化したからです。ただし、そこから米国政府との戦いが始まることになりました。

米国が最初にとった行動は経済封鎖です。
 キューバは世界屈指のニッケル資源国です。米国は「キューバのために」と言ってニッケル工場を建設しました。それは罠でした。国際市場で売れるニッケルの純度は98%前後。しかしキューバの工場では85%前後です。米国企業は誰も買わないニッケルを購入して合金することで利益を得ました。

 キューバにとって不利な貿易でしたが、それでもいくらかの外資獲得を果たしました。ところが米国による経済封鎖が始まると、米国はもちろんのこと、日本など諸外国の企業もキューバのニッケルを買えなくなりました。米国がそれを許さなかったからです。キューバと取引した企業は罰金、または没収です。

 強調したいのは、食品や薬品などの輸出入は人道的にみて禁止されるべきではないということです。キューバの薬品の8割は米国製でした。食品も多くを輸入に頼っています。経済封鎖をされたならば、子どもや病人、貧しい人たちが犠牲になるのです。

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経済封鎖をする理由は?

 いまキューバは、さまざまな国に「輸出」をしています。ベネズエラに3万4000人の医師を、米国の先住民が住む地域には教師を派遣しています。
こうした人道的な派遣をしているいっぽうで、米国中心の国際社会から「罰」を受けているのです。

 この大変、理不尽な状況を生んでいる理由はたった一つです。それはキューバが「ほかのやり方でも生きていける」ことを示している国だからです。米国に頼らず、喜びをもって自由に生きる実例を示している国だからです。

 もちろん、キューバは完璧な国ではありません。しかしキューバは私たち自身のものです。私たち自身がつくる国です。キューバの問題を解決できるのは キューバ人だけです。他国の干渉によってでは解決できません。

 米国は大きな国ですが、非常に偽善的な政府だということを、私たちは知っています。偽善者たちはけっして尊敬されません。みなさんは知っていると思います。長崎・広島に落とされた原爆が、私が言いたいことそのものです。ただ、私たちは長崎や広島 のような惨状をまだ許しています。

 数年前、米国大統領は「いたるところでテロと闘わなければいけない」と言いました。これがまずは偽善なのです。
 みなさんはルイス・ポサダ・カリレスという人をご存じでしょうか。彼はキューバ国籍ですが、1961年に米国に亡命し米国陸軍で訓練を受けた人です。 1976年、キューバの旅客機が爆破され73名が亡くなる事件が起きました。亡くなった73名は誰一人として前科がありません。
ポサダ自身、この事件の首謀者であることを発言しており、FBIやCIAの公文書でもその関連性が明らかになっています。このほか、ポサダはキューバでのホテル連続爆破事件の指名 手配者にもなっています。しかし、米国はこのテロ行為の罪を問わずにポサダを釈放してしまいました。
テロリズムはどこに行ってもテロです。よいテロ、悪い テロはありません。米国のテロだけは許されるのでしょうか。

 米国をはじめ多くの国はイラクに軍隊を派遣しました。キューバは必要に応じて教師・医師・技術者を派遣し、貧しい人々の命と生活を助けたいと思っています。

 世界には爆弾はいりません。必要なのは連帯です。世界は人々のあいだの連帯を求めています。金持ちも貧しい人もいます。しかし、私たちは等しく 人間です。そして人間は守られる義務があります。すべての人間が尊厳を持って生きられるよう、キューバは最後まで戦い続けるでしょう。

 不登校新聞より抄出。