一ノ瀬秀文さんが亡くなったそうだ。
96歳だから、もう惜しいとは言えない歳だ。昭和19年に大阪商大事件で治安維持法違反。生き延びたのが不思議なくらいの人だ。
昭和37年に「経済」という雑誌が創刊されて、常連執筆者だった。
巻頭論文を30ページ位書いて、「この項つづく」と予告しながら、続編が載らなかったことも一度ならずある。
経済2号

多分、「おもろいおっさん」だったのだろうと思う。文章はたしかに我々ごときシロウト学生にもそう思わせるところがあった。



一ノ瀬さんの「現代の帝国主義をどうとらえるか」

という文章は、その「面白さ」が溢れ出るような文章だ。要約を紹介しておく。

革命運動にとって,これまでとは違う政治的,社会的情勢が現れたとき,それはなぜか,その客観的条件の本質的変化を解明する必要がある.

1.「グローバリズム」は帝国主義のあらたな一段階

資本主義の,帝国主義のあらたな一段階としてとらえる.とりわけ金融資本,独占資本,これと融合した国家機構のあらたな一段階としてとらえる.

多国籍企業の支配を基本的カテゴリーとし,多国籍企業こそ現代帝国主義の本質とする論者がいるが,これは間違い.

多国籍企業は,各国の金融資本によるトラスト形成を現象面から見たものに過ぎない.それは,各国国内での競争とカルテル形成の延長線にあるものとしてとらえるべき.

金融独占資本が存在する限り,その政治的代理人としての国家・政府はなくならない.さらにドル基軸体制という,一種の「フィクション」を支えているのも諸国家=独占の意思に基づいている.

とりわけ問題になるのは,「自由競争には民主主義が照応し,独占には政治的反動が照応する」というテーゼの現代的解明.

2.アメリカ覇権主義の再確立としてみる

第二次大戦後のアメリカ覇権主義の確立,その動揺と,ソ連崩壊以降の覇権再構築という三つの段階のなかで読みとっていく.とくに「動揺期」の客観的分析が必要.

この期間,米国の動揺にもかかわらず,資本主義はむしろ史上最大規模の発展を遂げた.そのための武器は覇権主義の確立のために創設された各種国際機関(ブレトン・ウッズ,国連,OECDその他)と,ドル基軸通貨体制だった.

第二次大戦後の変化は主要にはアメリカ覇権主義の確立であり,社会主義体制の出現ではない.

3.情報や金融技術はアメリカの創業者利益である

現在のアメリカの好況はコンピュータや情報などの面におけるアメリカの圧倒的優位にもとづく,一種の創業者利益である.それは産軍複合体が生み出した民生面での貢献である.

クリントン政策や,グリーンスパンの成功によるものではない.露骨な経済覇権主義はむしろ米国の支配基盤を弱めている可能性がある.


グローバリゼーションの四つの意義

1.一般的意味としての「国際化」という意味では,戦後の経済体制がそもそもグローバル化を目指したものである.その意味ではこと改めて強調するものではない.

2.グローバル産業(多国籍企業)の出現ととらえることもできる.しかしこれは,国際的なトラスト形成ということに本質があり,各国独占資本の利害調整の側面をしっかり見ておく.

3.情報,交通手段の発達を基礎に,金融資本そのものの国際化が進んだ.金融資本が世界を相手に取り引きできる技術的能力(バクチ的能力)を獲得した.いわゆる生産力レベルでの国際化.

4.世界の1/3をしめた社会主義圏の崩壊と,市場経済の組み込みによる海外市場の爆発的拡大.既存の地域共同市場の自由経済化.

 
「そのとおり!」と叫びたくなるところと、「うーむ?」というところが混じっていて、刺激的な文章だ。
コンピュータや情報などの面におけるアメリカの圧倒的優位にもとづく,一種の創業者利益 という表現はシュンペーターを思わせる。