スポーツ新聞の埋め草記事だが、とてもいいので紹介する。
DNAの筒香選手が故郷の堺市の少年野球チームを訪問。
イベント終了の後、報道陣に20分間にわたって「熱く語った」のだそうだ。
まず、彼の問題意識
野球人口の減少は深刻だ。
いっぽうで、人口の現象と並行して、不祥事とパワハラが続発している。
スポーツ界全体が変わらないと危機は打開できない。
「僕は野球界から変えていきたい」
ということで3つの提言を行っている。
1.指導者のあり方を変える
すべての暴力の排除が絶対に必要だ。
そのためには一般論や精神論を語るのではなく、個別の暴力・パワハラ問題を掘り下げて検討し、総括するべきだ。
その総括のなかで、指導者のあるべき姿を考える。
2.勝利至上主義の排除
個別の問題を総括するということは、「なぜ?」という問題を考えることだ。
指導者のあり方で、より本質に関わる問題が勝利至上主義だ。
指導者の役割は2つある。一つは選手をより強く、よりうまくすることである。
結果としてチームを勝利に導くことだ。
もう一つは、選手を鍛え、教育し、将来に向けて育て上げることだ。
指導者には2つの世界がある。一つは彼に期待し、指導者に指名し、勝利を待ち望む大人の世界だ。もう一つは彼の指導を受けながら成長を目指す選手との世界だ。
これらの事情が絡み合って勝利至上主義が生まれる。
だから勝利至上主義にならないようにするには集団的な意思統一が必要だ。
さらにそれを揺るぎない原則に鍛え上げることが必要だ。
3.子どもたちへの目線
子供は指導者にとって、直接的には「仕事の対象」である。しかし大きな目で言えば、子どもたちは彼に指導を委ねた家族たちの期待と希望の対象なのである。
さらにいうならば、子どもたちは多様に発達する権利を持つ主体である。枠をはめる権利は誰にもない。
筒香選手はこう言う。
指導者が、勝ちたいために子どもたちに細かいことを求めすぎている。そして罵声や暴言を浴びせている。でも、子供はできないのが当たり前なんです。
筒香選手は、2つの具体的な改善案を語っている。
一つは、球数制限のルール化である。これについては比較的よく知られているので省略する。
もうひとつはトーナメント制の廃止である。これは新しい発想だ。
青少年が参加する多くの大会はトーナメント方式を採用しています。
この方式では勝ち進むほど過密日程になります。
その結果、子どもたちが犠牲になっていると思います。
ということで、たしかに卓見だ。

彼の抱負はまだ形としては定まっていないが、意欲は満々のようだ。
勝利至上主義こそが問題の根っこにある。勝負である以上、勝利にこだわるのは当然だ。それだけになかなか難しいところもある。
いきなり大きく変えることは難しいけど、同じ思いの大人たちが協力しあえたらいいと思う。
僕は野球界から変えていきたい。野球界が変わることがスポーツ界の変革につながると思う。


追記 1月25日

さすがは赤旗、本日配達された日曜版の裏表紙に一面使って筒香選手の記事を載せている。筒香選手も赤旗の取材に真正面から応じている。
彼の言葉を引用しておく。
「野球が大人の自己満足になっていないだろうか。勝つことが全てになってしまい、子どもたちを追い込んでいる。大人が変わらないと、このままでは子供がつぶれてしまう」
「指導者が謙虚に学ぶこと、子供が主人公だという考えを徹底することが必要だ。そして、たたかう相手への敬意を抱く立場を貫かなければならない」
「指導者が子どもたちをリスペクトできれば、野球界は変えられる」
輝かしい言葉です。