ベネズエラ経済の再活性化のために

Luis Enrique Gavazut との問答
Venezuelanalysis.com Jan 3rd 2019


実態分析の視角は妥当と思える。なぜそうなったか、とくに債務急増の原因はあまり追究されていない。解決の道筋はややヘテロドキシカルである。仮想通貨「ペトロ」の評価については“?”である。

 

質問 1

あなたの研究者としての見解では、ベネズエラの現在の経済危機を引き起こした状況と原因は何か?

答え 1

この数年間のベネズエラの状況は悪化しています。それは部分的には原油価格の下落の素直な反映です。

それは国家の現金収入の減少につながりました。これは、国民のニーズを満たすための鍵となるものです。(現金というのは実際にはドルのことなので以下ドルと訳すことにする)

ベネズエラ経済を理解するためには、ドルへのアクセスは最終的には一つの情報源、すなわち国家からのみ生じることを認識しなければなりません。

この100年というもの、ベネズエラのドル収入の95%は石油公社から来ています。これがこの国の主力企業です。

民間部門はドルを生み出さない。

生産的な装置の私有部分、少なくとも石油や鉱業に基づいていない部門は輸出向けではないからです。

社会のニーズを即座に対応すべき経済部門を見てみると大変な困難があることがわかります。

すでに危機以前の段階で、生産水準は急速に低下していました。 現在、国民経済は設備生産能力の22%で操業しており、輸入額は80%も減少しています。

この数字が私たちが今日直面している不足を説明しています。つまりそこにはひどい不況があることを意味します。

しかし、物事はずっとそうだったわけではありません。

数年前の2013年、チャベスが亡くなりマドゥーロが大統領に就任したとき、経済の状況、すなわち原油価格の動向はいまと変わりませんでした。

そのとき起こったのは、民間部門、特に外資系と国内大企業が、国家との経済戦争を始めるための決断を下したことです。

彼らの目的は何だったでしょうか? それは政府をひっくり返すことです。この国で最も強力な経済主体は、経済的な理由ではなく政治的な論理に従って行動し始めました。

その証しとしたのは、生産遅延と生産放棄の決断でした。2013年以降、彼らはベネズエラの商品供給に影響を与える措置を講じ始めました。それが、我々が「作られたモノ不足」と呼ぶものです。

これはベネズエラで起こった現象の真実です。それは「危機」の重要な要素です。

これに対しベネズエラ政府は給料を増やし、社会プログラムを維持することによって人々の購買力を維持しようとしました。

それは商品とサービスへの強い需要をしばらくの間支えました、しかし民間部門はすでに供給を遮断することを決定しました。

そうなると、需要が堅調にもかかわらず供給が減ることになるので、深刻な不均衡につながり、物価が急激に上昇し始めます。

 

質問 2

原油価格の不安定な中で、ベネズエラは多額の借金を抱えており、支払い負担は重くなっている。資金を借りることが困難になっている。

解決策としては福祉を削って通貨の供給を減らすか、かつてのアルゼンチンやエクアドルのようにデフォールトをかけるかしかないのだろうか。

答え 2

通貨不足は、ベネズエラの現状を理解するための鍵です。

ベネズエラでは国内の「為替市場」(ヤミ)が半ば公然と活動しています。まことに奇妙なのですが、政府がここに外貨を提供できないと、経済全体が暴走してしまいます。

これはベネズエラの経済が1世紀にわたって石油の採掘・販売料によって形作られてきたからです。

それは公共部門だけでなく民間部門もそうです。

石油は消費財だけでなく生産手段・中間財の輸入に影響を与えます。公共目的の配給システムに割り当てられた輸入も石油価格の動向次第で動揺します。

その石油ですが、石油公社(石油公社)の石油生産が急激に落ち込んでいます。これは国際石油業界における一連の悪い流れの結果です。

困ったことに、政府幹部は石油ボナンザがさらに長く続くと予想していました。それを当て込んで、オリノコ川流域の「オイルベルト」に多大な投資が行われました。それはベネズエラの重質油生産のための巨大プロジェクト地帯です。

そのオリノコ・プロジェクトに何が起こったのでしょう?

投資はすべて中途半端なままにとどまっています。目標実現のためには依然として膨大な量の資本投下を必要としています。

その一方でスリア州とアンソアテギ州では軽質油・中質油の維持管理が軽視され続けました。本当はこちらこそ重視されるべきだったのです。なぜならこれらの油は抽出も容易で、国際市場での販売も容易だからです。

石油公社はこの間不安定な状態にありました。原油価格の下落と生産の落ち込みに振り回されたのです。

それなのにオリノコ地帯への投資をするために巨額の借金をしたので、石油公社は借金のために厳しい返済条件を抱えることになりました。

経済的にペイする井戸に、借金を払い戻すための資金がしわ寄せされました。これが私たちを緊急事態に巻き込んだ大きな理由でした。

しかし、信用を拡大しようとしても扉のほとんどは閉鎖されています。業界が現在自覚しているのは、この悪循環です。

oil_graph_venezuela
       原油日産量の月次推移(単位:キロバレル)

 

質問 3

あなたは去年8月に発表されたベネズエラ政府の経済回復計画を批判している。あなたの主な論点はどこにあるのか?

答え 3

景気回復計画(以下プラン)は一連の理論的前提に基づいています。しかしその前提は、私の見地からすると間違っています。だからこそ、うまくいかなかったし、うまくいかなかったのです。

最初の問題は、プランが基づいているマネタリスト理論です。これは少なくとも今のベネズエラには当てはまりません。

基本的に、ベネズエラは経済の深刻な収縮、非常に深刻な不況のもとにあります。

 マネタリスト理論の前提は、通貨供給量を減らすと、消費者が商品やサービスの代金を払うことができず、その結果として価格が下がるという仮定です。

しかしベネズエラの場合は、引き締めがもたらすのは店舗の閉鎖だけです。それはさらなる景気後退を意味するにすぎません!

経済回復計画が発表された8月20日以降、まだ営業中だった工場、店舗、供給センターも、その大部分が、いま急激な速さで営業をストップしています。

大事なことは需要を維持することです。

ベネズエラでの経済活動の現状を維持し、現在も活動している企業を保護するためには、何らかの需要があることが不可欠です。

最低賃金が定期的に上がり、社会プログラムとボーナスを通じた労働者階級への直接支援が維持されなければなりません。直接および間接の助成金ももちろん維持されなければなりません。

これを続けることが政府の果たすべき役割です。

財政赤字ゼロを目標とし、裏付けのない「無機質の貨幣」を排除する再建計画は、今のベネズエラにおいては無意味です。

実際にも、国家は給与の引き上げを通じて「再建政策」を調整することを余儀なくされたではありませんか。計画が発表されてからわずか90日後に!

 

質問 4 経済回復計画のもう一つの柱、民間投資への動機づけについてはどうか。それは機能しているだろうか?

答え 4

その部分もまたかなり問題があります。

計画を設計した人は、「民間部門にインセンティブを与えることは、ビジネスマンから好意的な反応を生み出すだろう」と考えているようです。

インセンティブを受けた民間部門は、それをポジティブにとらえ、投資を行い、生産量を増やします。そうすると民間投資は経済の安定につながります。

しかし民間部門にインセンティブを与える根拠となる理論は、他国の経済では機能するかもしれないが、今日のベネズエラではうまくいかないでしょう。

いま、ベネズエラは世界で最も有利な為替レートと、世界で最も安い労働力を持っています。

労働は実質的に無料です。なぜなら、8月20日以降、国家が民間部門の労働者に賃金を払っているからです。

どこかの企業がベネズエラに来て事業を設立するならば、原理的には、国家が労働者の給料を支払うのです。

こんなことは今までになかったことです。ベネズエラは間違いなく経済史の年鑑にランク入ります!

さらに、「景気回復計画」は輸入関税を撤廃しました。

国はこれらすべてを提供しています。これなら多くの民間投資を引き付けるはずです。

それだけではありません。税金は非常に低く、累進性はありません。(莫大な脱税があるという長年の事実は別にして…)。

ベネズエラには、世界で最も安いエネルギー、最も安いガス、最も安い電気、そして最も安い水資源もあります。

それに加えて気候から場所(アメリカ市場に近い)まで、ベネズエラが持つすべての比較優位性を加えることができます。

つまりベネズエラは、インセンティブ理論と比較優位理論に従えば、民間投資にとって夢の楽園なのです。

それでも、民間部門はここに投資していません!

正統派の経済学者はどのようにこの状況を説明しますか?

彼らは、「ベネズエラには法的な保障がない」と言うかもしれません。言い古された議論です。

しかし、マドゥーロ大統領の時代には一つも収用が行われていないのです!

収用と国有化の政治はチャベス大統領で終わったのです。6年間、一度も収用はありませんでした。この政府は二度とやるつもりはないといっています。

1年前、憲法制定議会は外国投資法を可決しました。それは世界で最も外国資本に優しい法律で、「治外法権的」とさえいえる法律です。

さらにベネズエラには、法的安全保障を含む、あらゆる種類の便宜を提供する「経済特区」があります。

したがって問題は明らかです。
事態の解決策は、法的安全保障にも、民間部門にインセンティブを与えることにもありません。

最近、中国のある政府高官が、ベネズエラの公共テレビでマドゥーロ政府の指導部と話をしました。

彼は、中国には堅固な民間部門があると宣言しました。なぜなら中国政府がその分野にインセンティブを与え、育成したからです。 
しかし中国ではうまくいったかもしれませんが、ベネズエラではそのやりかたは当てはまりません。

ベネズエラ経済を刺激するための唯一の方法は、石油の使用料を増やすことです。それが唯一の有効手段です。

これは歴史的に確認でき、正確な相関関係が見られます。石油の賃貸料が増えるほど、そしてそれゆえ私たちの為替市場での通貨の供給は増えます。

それにより設備の生産能力が増加し、国内外の投資が行われます。しかし、これは経済的成長期にのみ起こります!景気後退期には石油収入が縮小し、国家は補助金を提供することができません。

景気後退期、石油収入が縮小すると、国家は補助金を提供することができません。

それがさらに進むと私有企業だけでなく公営企業も、売却したり、工場などを閉鎖したりせざるを得なくなります。これが今起こっていることです。

ところで、よく誤解されている問題があります。公的企業は民間企業より効率が悪いという“常識”です。それは全く間違っています!

例えば、今日のベネズエラでは、公営企業も民間企業も非効率的です。崩壊するかその境界にいます。石油の使用料が入ってこないからです。

それでも、通貨が国家の財源に入った瞬間、経営は再び活性化するでしょう。

このように考えてください。企業にとって最大の非効率性は、企業が業務を停止することなのです。

そう考えると、民間企業も国営企業も同じように非効率的なのです。

 

質問 5 石油生産国としての世界経済におけるベネズエラの役割はなにか。そのことがもたらす問題はなにか。

答え 5

ベネズエラは、賃貸・寄食経済です。自分自身では科学技術を開発しません。この状況は、通貨に過度に依存する経済を余儀なくさせています。

民間部門は、石油使用料収入が減ったときにベネズエラに投資しないのはなぜでしょう? それは、ここでの投資がドルで行われるからです。

民間投資家はドルで彼の収入を得ることを期待しています。彼は以前に技術、機械、その他の投入物をドルで購入したからです。だから彼はドルで投資を回収することを期待しています…

このため、投資家は言います。「まあ、ドルへのアクセスが制限されるようになれば、私はベネズエラに投資するつもりはありません」

投資家が戻ってくるのは、その国でドルがふたたび利用可能にったことを知ったときです。つまり石油の価格が回復し、経済が拡大期にあるとき、石油ブームが起きたときです。

どうして他の国の場合のように、個人投資家がドルを生み出さないのか。それはグローバリゼーションが姿を現したときに、ベネズエラが輸出志向経済を取らなかったからです。

例えば、プロクター・ギャンブル社はメキシコ、ブラジル、アルゼンチンで輸出施設を、コロンビアとパナマではより小さい設備を備えました。しかしベネズエラではそんなことはしませんでした。

なぜなら、ベネズエラは石油以外について、企業の輸出拠点とはみなされていないからです。

中南米には輸出拠点で労働者を搾取するための国もあれば、たんに料金を引き出すだけの国もあります。ベネズエラは後者です。

  

質問 6 ベネズエラの困難に対処するための解決策は何か?

答え 6

取るべき3つのステップがあります。 まず、国家がみずから生産的な投資をしなければなりません。 ベネズエラはこの役割を避けられません。

国家は民間投資を刺激するのではなく、生産手段への投資をしなければなりません。

もう一つの選択肢は、いまのままブルジョアジーと共に歩き続けることです。しかし非効率的なインセンティブで、個人投資家に媚びを売るようなやり方を続ければ、早晩破産してしまうでしょう!

第二段階は、マクロ経済対策の分野です。 私たちはベネズエラの為替レートを安定させる必要があります。 これを行うには、私の視点からは、2つの戦略が必要です。

一つ目は、ベネズエラの為替市場を完全に自由化することです。そうすることのポイントは、ドルの合法的な売却を引き付けるためです。

現在ドルは、送金を通して国に到着しています。あるいは、小規模な商品・サービスの輸出業者の手に渡っています。

これらのドル収入は年間100億ドルを下回る微々たるものですが、私たちの経済にとっては非常に重要です。それは為替規制を排除することによってのみ起こります。

現在ヤミ市場に参入しているこれらのドルを引き出し、合法的、正式、公的、透明な市場で取引できるようにすることは、重要な一歩前進です。

今、私たちはDICOM市場を持っています。それは合法であるが全く役に立たない為替市場です。それはドルを惹きつけることがなく、またそれらを提供することもない、見掛け倒しの市場です。

私の提案は、現在のヤミドル市場を透明な市場に転換することです。それが為替レートを安定させる第一歩です。

もう1つの重要な戦略は、「ペトロ」(仮想通貨)が金融資産として正しく機能するための条件を生成することです。

金融資産とは、市場で代替可能であり、他の通貨と簡単に交換できる資産です。そして取引コストを巡っては激しい競争にさらされています。残念ながら、ペトロはこの仮想通貨の論理には従うことができません。 

通貨ボリーバルと仮想通貨ペトロの交換レート固定が失敗したのはそのためです。最近の150%の切り下げは、その証明です。


質問7 マクロ経済学の分野であなたは為替レートの自由化プラス「ペトロ」を提案する。その際ペトロは交換可能な資産として機能することになっている。
あなたはまた“地域共同体の組織化と共同した生産的プロジェクト”への国家投資も提案している。これがあなたの勧める第1段階と第二段階だ。それでは第3段階とは?

答え 7

それは石油公社の救済です。これは待ったなしの課題です。

石油公社の生産水準の回復は、今や私たちの経済政策の焦点となるはずです。 私は、すべての国家の努力、そのすべての資源が、石油公社に向けられなければならないと思います。

石油公社にドル収入があれば、そのたびに、それが石油公社に再投資された場合と他の分野での使用との効果を比較・評価する必要があります。

国家は、人的な可能性、利用可能なすべての通貨資源を、石油公社の生産レベルを上げるために使用しなければなりません。他の生産資源に分散させてはいけません。

なぜなら、他の生産分野の活動はドルを経済にもたらすことはないからです。目下の状況では、ドルにならない生産は全く役に立たないのです。

私達の主な焦点は石油公社であるべきであり、他に一部として鉱業セクターを含むべきです。

そのセクターは現在の危機において必要かもしれません。たとえ環境への影響が避けられないにせよ、そして先住民コミュニティにもたらす破壊的作用を及ぼす危険を伴うにせよ…

結論

ベネズエラには新しい金融政策が必要です。私たちは生産力の発展をもたらす国家が必要です。組織化された地域共同体の参加がもとめられます。

そして何よりも、すべての努力を集中し石油公社の生産を回復することです。