リーマン・ショックから5年

―世界の証券市場は量的にどう変化したか

平成25 年9 月10 日

杉田浩治

(日本証券経済研究所)

という報告が読める。

これで市場の反応がだいたい分かった。この間のMITIのレポートで実体経済の方も見ることが出来た。

後は中銀と金融機関の動き、財政の変動だが、もうひと頑張りかな。

欧州危機の時はニュースだけ追いかけてたが、それでは何が起きているのか分からない。サミットである対策が議題になったから、そこに問題があるのだなということはわかるが、それがどう問題なのか、なぜ問題なのかは分からない。

リーマン・ショックは終わっていない。形を変えて広がっているという予感がある。そこを情緒的にではなく、二次処理されていないマクロの数字で明らかにする必要があると思う。

そしてそれを貨幣資本、利子生み資本の論理のなかに定位させて、初めて作業が終わるのだろうと思う。


07 年末を起点として12 年末に至る5 年間について、世界証券市場の変化を量的側面から概観した。

1.株式縮小、債券・デリバティブ拡大―証券別の市場規模の変化

証券市場推移

1.株式の時価総額

株式の時価総額は08年のショックで46%縮小した。一時回復の兆しを示したが、欧州危機等により再び縮小。12年末時点でも07年比82%である。

株式市場の取引規模は債券市場との比較で82%から55%に低下した。

株式の売買金額は08年の108兆ドルから12年の50兆ドルに半減した。

株式市場では、発信地であった米国がシェアを拡大し、欧州の地位低下が目立った。新興国時価総額の長期的シェアは09年をピークとし、その後下がり続けている。

2.債券発行残高

債券発行残高は23%増大した。政府債のシェアが11ポイント上昇し、債券の半分を占めるようになった。逆に金融機関債は10%以上減少している。

債券発行が増えているのは新興国であり。先進国は17%増にとどまっている。ただし新興国は元々の発行高が少ない。先進国でありながら58%も増加した日本は特異である。

3.デリバティブ市場

デリバティブ市場はヘッジ需要の高まりから56%拡大し、時価評価額25兆ドルに達した。ただし、123%増となった08年末より伸び幅は縮小している。

(想定元本残高では633兆ドル=6京円に達しているというが、「想定元本」は説明を読んでも理解不能)

08年に急増したCDSの時価評価額は6分の1に急減したが、これに代わり金利関連の比率が高まり76%に達している。

(CDSはクレジット・デフォルト・スワップの略で、元は債務不履行リスクに対する“保険もどき”だが、証券化され売買されている。債務危機になれば価格は急上昇する)

4.投資信託

投資信託は証券への間接投資手段であり、個人投資家の投資意欲を反映する。その残高は08年に72%まで急減したが、その後回復し、リーマンショック以前の26兆ドル水準を取り戻している。

とりわけ債券ファンドが急増している。株式ファンドが48%から40%(11兆ドル)に縮小し、債券ファンドが16%から26%へ拡大した。

株式ファンドの減少1.7兆ドルの殆どは資産時価の変動によるものである。つまり投資家がすったことになる。

一方、債券ファンドは金利低下により債券価格(割引債)上昇の恩恵をこうむった。

5.実体経済に対するマネー資本の肥大化は一段落

世界の資本市場規模は260兆ドル。その世界GDP に対する比率は、07 年末の440%から11 年末に369%へ低下した。

(世界資本市場はIMFの提唱するカテゴリーで、株式時価総額・債券発行残高・商業銀行資産額を足したもの。商業銀行資産には商業銀行が保有する債券・株式も含まれるため、過大評価の可能性がある)

6.これらの傾向は13年に入ってから様変わりしている

株式市場の時価総額、取引金額はともに上昇している。投資信託も増加に向かっている。