米国・欧州における進歩派の前進

4日の日曜日に全道教研集会でしゃべるのに大急ぎで書いています。

A. アメリカ:「民主的社会主義」が前進しつつある

いま米国ではトランプの暴政に対する反撃が強まりつつあります。おそらく1週間後に控えたいわゆる中間選挙で、明確な結果が出るでしょう。

この「中間選挙」というのは、その影響力から見て「中間」などというレベルではありません。上院議席の3分の1、下院の全議席、知事、州議会などが対象となっています。日本で言えば衆議院選挙と参議院選挙と一斉地方選を一度にやってしまうようなものです。日本ではこんなメガ選挙はありません。

いまのところ、各種世論調査を平均すると民主党48・8%、共和党40・5%となり、民主党圧勝の可能性があるようです。

ただし、そこで話題になるのはトランプがどのくらい目減りするか、選挙後にトランプの政策は変化するかどうか、というあたりに集中しています。ほんとうは世界史的に見れば、米国の中で真のリベラル進歩勢力がどれだけ前進するかが最大の焦点です。

ということを念頭に置きながら、とりあえずはサンダース派と呼んでおきます。サンダース派は中間選挙で、国民皆保険・銃規制・最賃引き上げを前面に据えており、これが有権者の支持を集めています。

7月に行われたある調査では、「革新」派と呼ばれる81人が、民主党内の各級予備選で勝利しています。これは3ヶ月前前の31人から急増しています。米国内の予備選では130人の青年・女性候補者が勝利しました。そのうち100人以上が民主党の候補者でした。

ギャラップ社の世論調査では、民主党員のうち57%が社会主義に「肯定的」な印象を持っていると回答しています。資本主義について同じ質問をしたところ、47%にとどまりました。このような結果は調査を始めて以来の10年間で初めてのことです。サンダースはこれを受けて、「社会主義は多くの米国人の支持を集め主流になった」と述べています。

このような情勢の変化の中で、サンダース派にとって最大の勝負となるのがフロリダ州知事選です。予備選を勝ち抜いて民主党の知事候補となったアンドリュー・ギラムは、タラハシーの市長を務める39歳の黒人青年です。非白人層の青年、女性が熱い支持を寄せています。もし勝利すればフロリダの史上初となる黒人知事ということになります。
ギラム
       フロリダ大学構内で演説するギラム候補

B. 民主的社会主義の背景

我々はサンダース派と呼んでいますが、実はそういう人的なつながりというレベルではなく、すでに一つの政治集団が形成されています。「アメリカ民主主義的社会主義者」(DSA)といいます。それは目下のところ民主党の中の派閥を形成していますが、いずれ独自性の高い政治結社へと発展していく可能性を持っています。

オカシオ・コルテスはDSAについてこう語っています。
「モラルある豊かな現代社会において、すべての人が十分に教育を受け、医療の機会や住居を得られること。基本的な経済的社会的尊厳を受けるべきこと、これらを主張する組織はDSA以外にない」
C. 社会主義を志向する労働運動
DSAは青年の自主的組織ですが、さらに米国労働運動の伝統に根ざしたしっかりした組織がその背景にあります。それが社会運動的労働運動(Social Movement Unionism:SMU)という運動です。
これは組織というよりはAFL-CIOがうちだしたキャンペーンですが、明確に社会主義を志向したものです。SMUは、労働組合の目的を組織維持でなく「社会正義の実現」とそのための組織の拡大におきます。
そのため、組織化の対象を従来顧みられなかった女性、マイノリティ、低賃金労働者などに拡大し、企業だけでなく、NGO、地域コミュニティ、宗教コミュニティとの連帯を重視しています。
具体的な取り組みとしては、ビル清掃労働者の組織化、訪問介護ヘルパーの組織化、ホテル・レストラン従業員の組織化、ファストフード労働者の最低賃金獲得要求などの運動などです。
こうした運動が、いざというとき労働者の闘争を支えてくれるのです。
SMUのたたかいの中で、最低賃金要求のたたかいは最も知られたものです。過大な生活負担に苦しむ労働者・国民の切実な要求として多くの支持を得て大きく前進しています。
アメリカの労働者の運動は、そのまま貧困者の運動でもあります。労働運動を担っているのはかつてのような華やかな大工場労働者ではありません。公立学校の教師、公的病院の看護師、消防士、バス運転士など一言で言って貧困者の中のエリートです。自らも厳しい生活に喘ぎながら、もっと苦しくもっと差別されている人たちに、サービスを提供する仕事をしています。
アメリカの労働者の生活は本当に厳しい。都会のアパートの家賃は1LDKで35万円です。さらに過大な医療保険代・医療費はよく知られています。
彼らが「社会正義が最優先される社会」すなわち「社会主義」の社会を志向するのは当然でしょう。