「雨の歌」抄 マリー・ウチティローバ(群像の制作者)

嘆きと、空腹と、恐怖と… それから底知れぬ闇
みんなお墓の石になって。ラヴェンスブリュックに眠っている
何かの弾ける音と、ガチャガチャという音と、大声と…それが止まったとき
リディーツェの母は声もなく囁やく
疼く唇たちがリディーツェの歌を囁やく
囁いた歌は、それから
リディーツェの家まで行って、こだまする

ねんねしな、可愛い子
泣くのをおやめ、静かにおし
くまさん人形の夢を見ましょ
それから、お庭でいっしょにいる夢も…
私の歌でお前は眠る
それは「雨の歌」と溶け合うでしょう
…もし、お前が生きていたら

リディーツェ村は、反ナチ抵抗運動へのみせしめのために攻撃された。男はみな殺された。女や子どもはラヴェンスブリュックの強制収容所へ連れてゆかれ、そこでガス室に送り込まれた。最後に村は形跡もなくなった。


申し訳ないが、世界のいたる処にリディーツェはある。残念ながら相対化せざるを得ないのだ。
ただマリー・ウチティローバが制作した子どもたちの群像は、ここリディーツェにしかない。
これも申し訳ない言い方になるが、ウチティローバの群像のリアリティーと芸術性が半端でないのだ。子どもたちの表情に「嘆きと、空腹と、恐怖と」が恐ろしいまでに具象化されている。それは息苦しいほどの圧力で見るものに迫ってくる。
この群像を見るだけでリディツェまで足を運ぶ価値がある。
でも、邪道かもしれないが、世界中を巡演して、世界中の人に見てもらいたい。あえて高飛車な言い方をすれば、“見てもらわれるべき”なのだと思う。