タンゴ名曲百選にあげた曲を作曲年順に並べました。原語も入れるべきでしょう。特に古い曲の場合、作曲時からヒットしたのではなく、後からカバーして大ヒットになった場合もあるので、その年も書き込まなければならないでしょう。
そのうち、少しづつYouTubeにアップしていこうと思います。

19世紀のタンゴ

1890 泣き虫(エル・ジョロン):(詞)エンリケ・カディカモ(曲)伝アンブロッシオ・ラドリサーニ。
俳優のラドリサーニの作品というが、実際は当時流行した伝承曲らしい。カディカモの歌詞は後年映画主題歌として作られた。

1897 エントレリオの人(エル・エントレリアーノ):(曲)ロセンド・メンディサバル。
古典タンゴの中では最も古い作品。


1898 ドン・ファン:(曲)エルネスト・ポンシオ。


1900年代

1903 エル・チョクロ(とうもろこし):(曲)アンヘル・ビジョルド。
歌詞は1947年にエンリケ・サントス・ディセポロが作った。1953年に「キッス・オブ・ファイアー」と題されて米国のヒット・パレード上位に入った。

1905 混血娘(ラ・モローチャ):(詞)アンヘル・ビジョルド(曲)エンリケ・サボリード。

1906 オテル・ビクトリア:(曲)フェリシアーノ・ラタサ。
アルゼンチン中北部の町コルドバでオテル・ビクトリアというホテルが開かれた。その開業式典の席で初演されたものという。

1907 フェリシア:(曲)エンリケ・サボリード。

1908 7月9日(ヌエベ・デ・フーリオ):(曲)ホセ・ルイ・パドゥラ。
「7月9日」は1816年のこの日、独立宣言が発せられた記念日である。

1910年代

1910 独立(インデペンデンシア):(曲)アルフレド・ベビラクァ。
「革命100年」を祝う祭典(センテナリオ)で初演されたもの。

1910 ロドリゲス・ペーニャ:(曲)ビセンテ・グレコ。
題名はロドリゲス・ペーニャ通りにあるサロン、「サン・マルティン」を冠したもの。

1910 夜明け(エル・アマネセール):(曲)ロベルト・フィルポ。

1915 医学生(エル・インテルナード):(曲)フランシスコ・カナロ。医学部学生のダンスパーティのために作られた。

1916 デレーチョ・ビエホ(わき目もふらず)。(曲)エドアルド・アローラス。
直訳すると「昔の法律」、題名から想像されるように法学部学生に捧げられている。前の年の医学生がヒットしたから柳の下のどじょうを狙ったような気もする。

1916 ラ・クンパルシータ:(曲)G・H・マトス・ロドリゲス。
モンテビデオの無名の学生が作曲。24年にロベルト・フィルポが発掘し、バンドネオン変奏部や対旋律も加えられて大ヒットした。題名は仮装行列の意味で、キューバではコンパルサと言う。

1916 花火(フエゴス・アルティフィシアーレス):(曲)ロベルト・フィルポ&エドアルド・アローラス。

1916 霊感(インスピラシオン):(曲)ペレグリーノ・パウロス。

1916 わが悲しみの夜(ミ・ノーチェ・トリステ):(詞)パスクアル・コントゥルシ(曲)サムエル・カストリオータ。
ガルデルが最初に歌ってヒットさせたタンゴ。捨てられた女への「うらみ節」。それまでガルデルは民謡歌いだった。

1917 エル・マルネ:(曲)エドアルド・アローラス。
第1次世界大戦に於ける激戦地(フランス)を指す。アローラスはフランス系移民だったから祖国の戦勝を祝って書いたのであろう。

1918 バンドネオンの嘆き(ケハス・デ・バンドネオン):(曲)ファン・デ・ディオス・フィリベルト。

1920年代

1920 気取り屋(チケ):(作曲)リカルド・ルイス・ブリグノロ。

1920 ラ・カチーラ:(曲)エドアルド・アローラス。
「地面に住み昆虫を食べる雀に似た小さな鳥」のことなんだそうですが、想像つきません。

1922 狂女(ロカ):(詞)アントニオ・ビエルゴル(曲)マヌエル・ホベス。
品のいい歌ではないが、百選というと外せない、「そういう曲ってあるよね」という曲

1923 蝶々(ラ・マリポーサ):(曲)ペドロ・マフィア。

1923 五分と五分(マノ・ア・マノ):(詞)C・E・フローレス(曲)C・ガルデル/J・ラサーノ。

1924 ガウチョの嘆き(センティミエント・ガウチョ):(曲)F.カナロ、R.カナロ。
オデオン社のタンゴコンクールで第一位。その時の第三位は「たそがれのオルガニート」であった(うぃき)。

1924 たそがれのオルガニート(オルガニート・デ・ラ・タルデ):(曲)カトゥロ・カスティジョ。

1924 想い出(レクエルド):(曲)オスバルド・プグリエーセ。エドゥアルド・モレーノの歌詞がついている。

1924 淡き光に(A MEDIA LUZ):(作詞)カルロス・セサル・レンシ(作曲)エドガルド・ドナート。
ブエノスアイレスの繁華街「コリエンテス通り348番地」には、扉にこの曲の楽譜が描かれている。

1926 小径(カミニート):(詞)コリア・ペニャローサ(曲)ファン・デ・ディオス・フィリベ。
ラ・ボカに近い鉄道廃線跡地が「カミニート」公園になっている。

1926 パリのカナロ(カナロ・エン・パリス):(曲)ファン・カルダレーラ+アレハンドロ・スカルピーノ合作。
フランシスコ・カナロ楽団のパリ公演成功を祝う歌。

1927 さらば友よ(アディオス・ムチャーチョス):(作詞)セサル・ベダニ(作曲)フリオ・サンデルス。
アルゼンチンでは、この曲を演奏すると不吉なことが起こるといわれ、最近では余り演奏されない。

1927 ミロンガのすすり泣くとき(クアンド・ジョラ・ラ・ミロンガ):(曲)ファン・デ・ディオス・フィリベルト。

1927 悪い仲間(マーラ・フンタ):(曲)J・デカロ/P・ラウレンス。

1928 黄金の心(コラソン・デ・オロ):(作曲)フランシスコ・カナロ。

1928 今宵われ酔いしれて(エスタ・ノーチェ・メ・エンボラーチョ):(詞・曲)エンリケ・サントス・ディセポロ。

1930年代

1930 ジーラ・ジーラ:(詞・曲)エンリケ・S・ディセポロ。
不況と政治不安の時代でもあり、この曲はこの年最大のヒット曲となる。「俺は河原の枯れすすき」と通じるものがある。

1931 告白(コンフェシオン):(詞・曲)エンリケ・サントス・ディセポロ。

1932 エル・ウラカン(ハリケーン):(曲)エドガルド・ドナート。

1931 交わす盃(トモ・イ・オブリーゴ):(詞)マヌエル・ロメロ(曲)カルロス・ガルデル。ガルデルがフランスで撮影した映画「ブエノスアイレスの灯」で歌われた。

1934 下り坂(クエスタ・アバホ):(詞)アルフレド・レペラ(曲)カルロス・ガルデル。同名のパラマウント映画の主題歌。作曲者ガルデル自身が主演。

1934 わが懐かしのブエノスアイレス(ミ・ブエノスアイレス・ケリード):大歌手ガルデルが自ら主演した映画「下り坂」の主題歌。

1935 古道具屋(カンバラーチェ):(詞・曲)エンリケ・サントス・ディセポロ。映画「バンドネオンの心」の中の1曲。

1935 想いの届く日(エル・ディア・ケ・メ・キエラス):(詞)アルフレド・レペラ(曲)カルロス・ガルデル。ガルデルが主演した米パラマウント映画の主題曲。とうでもよいが、曲名は正式には帰還(ボルベール)。

1936 ナイフで一突き(ラ・プニャラーダ):(曲)ピンティン・カステジャーノス。ミロンガに編曲したダリエンソのレコードはミリオン・セラーとなった。


1936 郷愁(ノスタルヒアス):(詞)エンリケ・カディカモ(曲)ファン・カルロス・コビアン。
不慮の死を遂げたガルデルを主人公とした「ブエノスアイレスの歌い手」のために作られた。


1940年代
1942 酔いどれたち(ロス・マレアドス):(詞)エンリケ・カディカモ(曲)ファン・カルロス・コビアン。1922年に発表された古い曲を、トロイロが発掘してフィオレンティーノが歌ったところリバイバル。
1943 人は(ウノ):(詞)エンリケ・S・ディセポロ(曲)マリアノ・モレス。

1945 さらば草原よ(アディオス・パンパ・ミア):(作詞)イボ・ペライ(作曲)マリアノ・モレス/フランシスコ・カナロ。カナロの音楽劇「パリのタンゴ」の挿入歌。

1946 ラ・ジュンバ:(曲)オスバルド・プグリエーセ。

1947 エネ・エネ(何某):(曲)オスバルド・ルジェロ。若くしてオスバルド・プグリエーセ楽団の第1バンドネオン奏者となり、後にセステート・タンゴの中核として活躍したルジェロの作品。

1948 降る星のごとく(ジュビア・デ・エストレージャス):(曲)オスマル・マデルナ。
1948 南(スール):(詞)オメロ・マンシ(曲)アニバル・トロイロ。ブエノスアイレスの南部ヌエバ・ポンページャ地区を題材とした曲。


1950年代
1951 うそつき女(ラ・トランペーラ):(曲)アニバル・トロイロ。

1952 兵隊風のブーツ(タキート・ミリタール):(曲)マリアノ・モレス。以前は「軍靴の響き」と訳されていた。

1953 来るべきもの(ロ・ケ・ベンドゥラ):(曲)アストル・ピアソラ。

1957 バイーア・ブランカ:(作曲)カルロス・ディサルリ。

1959 アディオス・ノニーノ:(作曲)アストル・ピアソラ。父親ビセンテ(愛称ノニーノ)への愛情と愛惜がこめられた名作。

1960年代以降

1965 ブエノスアイレスの夏(ベラーノ・ポルテーニョ):(曲)アストル・ピアソラ。「ブエノスアイレスの四季」4曲中で最初に作られた。舞台劇「黄金の垂れ髪」のためにピアソラが一晩で書き上げたという。

1974 リベルタンゴ:(曲)アストル・ピアソラ。「自由」と「タンゴ」を組み合わせた合成語。