この文章は、下記の文章を私なりに解説したものです。
Mar 15th 2018 ベネズエラ・アナリシス
ベネズエラの「亡命」についての誤解と歪曲

Fallacies and Inaccuracies About Venezuelan Migration

ベネズエラのいわゆる「亡命」について多くの見解がぶつかりあっている。
誰を信じるべきだろうか?


というのですが、日本においてはぶつかりあうどころか一方的に反ベネズエラ情報が垂れ流されています。この文章も蟷螂の斧にすぎませんが、出しておく価値はあるでしょう。

はじめに
この1年あまり、ベネズエラの危機に関する物語がますます強烈に印象付けられている。
最初は警察による野蛮なデモ隊弾圧で多くの死者が出て、ベネズエラが内戦状態に陥っていると報道された。ついでマドゥーロ政権が反民主的な言論弾圧を行い、国内は戒厳令状態に陥っているとされた。そして医薬品がなくなってインシュリンも打てなくなり医療が崩壊していると報道された。その後は、5万%にも上る超インフレで、人々の生活は崩壊していると報道された。最近では難民が大量発生し近隣諸国は大混乱に陥っていると報道されている。
我が国の報道機関は左右を問わずこれらの報道を無批判に受け入れ垂れ流している。しかしこれらがすべて真実であるなら、ベネズエラという国家はとうの昔に消失していなくてはならないだろう。
そろそろこれらの国際報道に疑いの目を向け、常識を働かせて判断すべきときに来ているのではないだろうか。とくに世界のメディアは2002年反チャベスのクーデターに際して、白を黒と言いふくめる重大な間違いを犯している。そのことの反省を忘れないでいただきたいと思う。

「難民」に関するいくつかの信じられない数字
国際メディアの主流と世界的機構によると、200万人以上のベネズエラ人が故国を離れたという。
率直に言えば、まず数字そのものが信じられない。
国連難民委員会の発表(2017)では以下の国が御三家である。
シリア:550万人
アフガニスタン:250万人
南スーダン:140万人
これだとベネズエラは一気に堂々の銅メダルということになる。普通の報道関係者なら、内戦国でもないところで、しかも突然に説明不可能な難民が出現したというのなら、まず情報源を疑うべきであろう。
この200万人という数字は、「ベネズエラ亡命者観測機構」というNGOが提出した報告にもとづいている。ベネズエラはいかなる周囲国とも正常な国交を維持している。したがってこれが出入国管理当局の数字ではないことに十分留意すべきである。
反チャベスの新聞「タル・クアル」は、2017年11月17日から12月4日までのあいだに409万人のベネズエラ人が出国したと報道している。それは“Consultores 21”が組織した2千人のスタッフの調査に基づいているという。
同紙によれば、ベネズエラの家族のうち3割で、少なくとも誰か1人、平均すれば1.97人が国境を越えて生活しているという。
ここまで書きたてると、流石に欧米メディアも手を出さなくなるようだ。ただこの報道から明らかなことは、「亡命」が一種のキャンペーンとして計画的に行われているということだ。

コロンビへの亡命という矛盾
米南部軍司令部のカルト提督は、米上院軍事委員会でベネズエラの亡命の動きについて証言した。証言によると、コロンビアへのベネズエラ移民は50万人に達した。さらにブラジルに40,000人、エクアドルに93,000人が向かっていると述べた。
しかしコロンビアの上げている数字はこれよりはるかに低い。
コロンビア外務省と国際移住機関(IOM)が発表した報告によると、コロンビアとの国境を越えた人の69%は、日常的に国境地域を往来する地域住民、労働者、研究者であった。
残り30%のうち23%は、数ヶ月間コロンビアにとどまる予定と申告、ベネズエラを恒久的に離れるとした人はわずか5%に過ぎなかった。
コロンビアの統計によれば、153,443人のベネズエラ人が法的に許可された滞在を超え、ビザなしで滞在している。彼らは「不法移民」ということになる。社会保障制度の裏付けなしに雇用され、搾取される可能性がある。
この他に合法的に移住手続きを行った人が47,305人いる。あわせて約20万人がベネズエラを離れ、コロンビアに移ったことになる。
これは決して少ない数ではない。
しかし少し長い目で見ると、これはきわめて奇妙な現象であることが分かる。
第一にコロンビアこそ世界有数の難民国である。先ほどの国連難民局の統計でそれより1年前の数字を見ると、2016年末時点でコロンビアでは730万人が難民登録されている。これは世界最多である。これに続くのがシリア(630万人)、スーダン(330万人)、イラク(300万人)、コンゴ民主共和国(220万人)である。銅メダルどころか国歌付きの金メダルなのだ。
和平が実現した後、この難民数は大幅に減少し圏外へと去るのだが、このような国に避難するいわれなどない。
第二に、過去においてコロンビア人の避難先は圧倒的にベネズエラだったのである。国連の難民局の公式発表では、ベネズエラ在住のコロンビア難民数は172,000人に達している。難民だけでなく経済移民や出稼ぎをあわせ、ベネズエラのコロンビア人は約100万人を数える。
ベネズエラは豊かで雇用(下働き)があるからだ。そのかわり、コロンビア人はベネズエラにおいて差別と偏見の対象となってきた。
ベネズエラ人の生活が苦しくなったとき、そのしわ寄せをまっさきに受けるのはコロンビア人のはずだ。おそらく大量にコロンビアに脱出しているのはこういう人々ではないだろうか。

以下は「思想運動」からの引用
ベネズエラ国内には隣国コロンビアからこの20年間に600万人の人びとがベネズエラの出生を差別しない社会保障を求め移住している。
また、コロンビアの法律では国外で生まれたコロンビア人の子どもは自分の意志を法的に宣言すればすぐにコロンビア人として認められる権利を持っている。
コロンビア・ベネズエラ国境を越える人びとの70%はこのコロンビア人のベネズエラ生まれの子どもたちで、残り30%の大半がベネズエラ居住のコロンビア人である。また、その人たちの大半が富裕層に属している

出る人も入る人もいるが…
マイアミのメディアは「150万人以上のベネズエラ人が国外居住しているが、その90%はこの16年間に祖国を去った」と報道する。
下の図は国連の人口統計である。ベネスエラ生まれで外国居住の流出者と、外国生まれでベネズエラ居住の流入者を対照したものだ。
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イミグレは入国者、エミグレは出国者である。ともに累計である。ざっと倍以上の入超である。
これがまず1つ、もう一つは出国者は16年間の累計で65万人。国外居住者が150万人とすれば43%にすぎない。
国連のデータによれば、このように移入が一貫して移出よりも高くなっている。ただしCIAの発表した世界ファクトブックは異なる状況を示している。「世界各国の移民率」の表では、ベネズエラはー1.2パーミリとなっている。これは僅かな出国過剰を表している。
国連のデータが嘘で、CIAのデータが真実を述べているというのではなく、統計のとり方によるのだろう。
ではこのCIAのランキングををラテンアメリカの他の国と比較してみよう。リマ・グループ諸国(親米諸国)の12カ国のうち9カ国で、ベネズエラと同じマイナスの移民率となっている。
例えばメキシコがー1.80、グアテマラ ー1.90、ペルー  ー2.20などである。

たしかに多くの出国者がおり、その背後に経済困難がある
この間に少なからぬ人が経済困難を理由に国外へ逃避した。その経済困難はどのようにしてもたらされたのか。
その経済困難は封鎖によって強化された、ベネズエラの財政的包囲によって引き起こされた。 その経済封鎖と財政的包囲はトランプ政権が実行し、コロンビア、ペルー、ブラジル、アルゼンチンの大統領が支援しているものだ。
そして国外脱出そのものは、前国会議長のJulio Borgesが煽っているキャンペーンが影響している。先にも述べたとおりである。