以下は三井住友銀行の森谷亨さんの談話。森谷さんはリーマンショックをはさむ10年間、ニューヨーク拠点でエコノミストを務めた方である。

07年の初め、サブプライムローンを担保にした「不動産担保証券」と米国債の利回り格差が急拡大した。振り返ると、これがショックの予兆であった。
しかしFRBや米政府もふくめ、みんな事の重大さに気付いていなかった。サブプライムローンの市場規模は実体よりはるかに小さく見積もられていた。
08年3月 ベアー・スターンズが経営破綻。しかしまだ危険は認識されずリスクテイカーの破たんとしてスルーされた。
そして9月、リーマンショックが発生した。その直後、エコノミストはドルの資金繰りをどうするかに集中し、原因の分析は疎かにされた。

1990年代以降の金融資産はデリバティブにより複雑化されている。しかし、ふだんから注意深く眺めていれば必ず見つけられるはずだ。

例えば、問題の一つはサブプライムローンの大量証券化にも拘らず、リスクヘッジがAIGに独占的に集中していたことだ。
この脆弱性は、通常のエコノミストのマクロアプローチだけでは見つけることはできない。

どこで見つけるか。それが金融セクターの収益率だ。金融セクターがボロ儲けし、金融マンの羽振りが異常に良くなるとき、世間で過剰な投機が進んでいる可能性が疑われる。
それは対応するリスクヘッジが行われていないということだ。

リーマン・ショック以降、各国は金融システム規制を強めた。デリバティブ市場も成熟した。しかしこれからも、投資家や金融機関が、未知の世界で過剰なリスクをとる可能性はある。


ということで、リーマンショックの発生要因として、デリバティブ商品が急速に普及したが、隠された商品リスクが実はベラボウに高く、しかも投資家のリスクヘッジが不十分であったということだ。
それをエコノミストが見抜けなかったのは、従来型のマクロアプローチに頼ったからだ。

これらの問題は克服されつつあるが、投資家のリスク志向体質は変わりようがないから、形を変えて再現される危機はなくならない。
これに巻き込まれないようにするためには、賭場としての市場の生態に精通するしかない。

ということになろう。

おそらくその賭場としての生態を解析しているのが「資本論」の第三部なのだろうと思うが、まだそういう視点からは読み込めていない。