大竹昭郎さんという方がなくなったそうで、赤旗に大きく訃報が掲載されている。1951年の入党で、95年には滋賀県知事選にも立候補されているそうだ。
全然存じ上げない方であるが、その足跡に多少なりとも触れておきたい。
学生運動としては「イールズ世代」に属することになるだろう。朝鮮戦争、レッドパージ、全面講和が合言葉だ、山村工作隊に飛び込んだ人もいるかもしれない。
ウィキペディアには掲載されていないが、京都大学農学部を1952年に卒業されている。獣医の資格は持っているらしいが獣医で働いた形跡はない。
農学部の農林生物学科には南窓会という同総会があって、ウェブ同窓会誌というのを発行している。ただし2003年を最後に更新が止まっている。農学部の改組で農林生物学科そのものがなくなってしまったらしい。
目次を見ると結構食欲をそそる題名が並ぶ。農学部というのは、ファーブルみたいな人の集りで、意外と文系かもしれないなと思う。
化学の枠組みを勉強したとき、「あぁこれは応用物理学だな」と思ったのだが、おなじでんでいうと、農学というのは応用生物学なのかもしれない。医学も応用生物学ではあるが、生命を突き放すか、突き放せないかの違いがある。
話が飛んだが(別に飛んで困るというほどのものでもないが)、その同窓会誌に大竹さんの文章が2篇掲載されている。

1.「原爆展」のこと
1951年7月、未だ占領下、京都駅前の丸物百貨店(現近鉄百貨店)で「綜合原爆展」が開かれた。
京大同学会(学生自治会)が主催し、10日間で約3万人が入場した。
以下は原文よりの抜粋
当時、農学部自治会の委員だったわたしも、この原爆展にかかわりました.
農学部の学生ということで、放射線の生物への影響について、会場でパネルの説明係をやりました。
同志社大学の学生がかの女と一緒にやってきました。同志社の角帽は一種独特のあか抜けしたものでした.
それにかれは色白の貴公子で、わざわざ入場料を払って原爆展にくる客種としては珍しく感じられました.
「放射線の影響で4つ葉のクローバの発生頻度が高くなる」と説明した途端、この2人組は顔を見合わせてニヤリとしました.
わたしが顔を赤くしたかどうかは覚えていません.
文章の大筋とは関係ないこのエピソード、たぶんこれが書きたくて、この文章を書いたのでしょうね。

2.架空インタビュー「あれやこれや」
たぶん65歳ころの身辺雑記であろう。
遊びを遊びにできない人の典型である。
退職後に何をしようと考えたら、迷うことなくアブラムシとなりました。
いくつかの種類について試行錯誤の後、自宅近くの歩道の植え込みについたナシミドリオオアブラムシを数年いじりました。
しかし、そのアブラムシはどうも気にいらなくて、いまはセイタカアワダチソウにつくヒゲナガアブラムシの一種を扱っています。
わたしは野外で、あるいはもち帰って、ひたすらアブラムシを数えていますが、「こんなことをして意味があるのか」と、ときどき自己嫌悪に陥ります。
ここでもうひとりの自分が質問を投げかける。
それはセイタカのアブラムシという一種に絞りすぎているからであって、周りの他の生物との関係などを考慮する必要があるのではないでしょうか。
そしてそれに答える。
ごもっともな意見と思います。しかし、対象の種の個体群そのものに、しつこくこだわる人がいてもいいと思います。
これは大事な点で、まずそのものが持つ矛盾を突き詰め、そのものの持つ駆動力を理解することが基本なのであろう。そのことが理解されて初めて、他者との関係で逆規定される存在が理解できるのだろうと思う。

実は、ネットには長大論文が乗っていてなかなか面白そうではあるのだが、いかんせん長い。
とりあえず書名とまとめだけ載せておく。

ダイコンサルハムシの分布一特に成虫の分
、散が次の世代の分布に及ぼす影響について

1958年 島根農業大学応用昆虫学研究室業績  No.22 P107~116

比較的分散能カの弱いダイコンサルハムシの成虫が、畑の中をどのように分散してゆくかについて明らかにするために、野菜畑での観察および,実験圃場での実験を行った。
野菜畑を毎日見廻り,9月14目サルハムシ成虫を初めて発見した。翌日から,畑の申の成虫の分布の定期的な調査を行った。
畑の周りの雑草の申などから移動してきた成虫は,多くは畑の縁の都分に止まっている。
成虫の活動状況は,外部条件(主として気象条
件)によって影響され,非常に不規則であった。

要するに先っパシリの個体はえらい勢いで拡散するが、本隊の拡散は意外に時間がかかり、同心円状の形態を取るということらしい。

これは例えば西部開拓史などを見ると納得がいく。初期の征服者や探検家の行動力には凄まじいものがある。
しかし生活者が鍋釜持って移住するのには意外と時間も掛かるし、一進一退を繰り返すものだ。
生活者の拡散には物理的な障壁は意外に低く、山でも谷でも越えていくが。暑さ寒さなど行動性を左右する因子は相当な影響を与えるようだ。

ただそれを方程式化できるかどうかは、数をこなさなければなさそうだ。