加藤節さんの「立憲主義論」
あまり馴染みのない名前だが、政治哲学(特にロック)が専門の方で、私より2つ年上。
院生時代に南原繁(曲学阿世の徒で有名)の薫陶を受けたということで、筋金入りの立憲主義者と言ってよい。
今回は赤旗の「焦点・論点」に登場し縦横無尽に語っている。

1.ロックの政治思想
① 固有権
話は固有権の概念から始まる。固有権は英語でProperty。生命権・健康権・自由権・資産権からなる。
それは人間が人間であることの証となる権利であり、これを守るのが近代政治である。
② 法の支配と人の支配
最高裁長官も内閣法制局長官も時の内閣が決めている。結局は人の支配だとも言える。
法を無視する内閣が出てくれば法の支配は崩れる。
それを防ぐ手だてはないのか。それを探るのが立憲主義である。
③ 抵抗権と革命権
ロックは、法の支配が破綻しようとしたとき、唯一の歯止めは抵抗権と革命権だと主張する。
ただそのままでは現代社会には飲み込みにくい。そこで加藤さんは「リベラルな民主主義」と言い換えている。
④ リベラリズムと民主主義
おそらくここが加藤さんの主張の勘所なのだろう。そのままの言葉で引用する。
「法の支配」が「人の支配」(すなわち法の非支配)に転化したとき、それを乗り越える運動としての民主主義が重要になります。
つまり、「人の支配」を打ち破るのは「法」ではなくて、「多数者の支配」なのだということだ。
これが民主主義(デモス+クラシア)であり、ここに立憲主義と民主主義の結合がある。
さらにそこに「行動規範としてのリベラリズム」(解放実践)がインテグレートされ、「リベラルな民主主義」が出来上がるのであろう。

2.南原繁の「全面講和」論
まず加藤さんは「南原繁は非常に面白い意見の持ち主でした」として、南原がオーソソックスな政治的立場ではなかったことを認めている。
そのうえで、現代日本が彼から引き継ぐべきポイントを列挙していく。
① 憲法9条に反対した南原繁
南原は必要最小限の自衛のための兵力は必要だと考えた。
自衛権は次のようにインテグレートされていた。
自衛権を保持し国際社会に復帰するという主権国家の論理と、国際社会に復帰して国連軍の一員として戦争勢力に対抗するという集団的安全保障が統合されたもの。
これは重要な視点で、憲法前文と9条は切り離せるということ、肝心なのは憲法前文の精神であるということだ。
ただし、世界史的スパンで考えれば、この順序は逆になるかもしれない。
② 政治と普遍的「正義」
南原繁は政治の目的として「正義」を重視しました。
この「正義」は、永久平和を実質的な内容とする普遍的な原理であり、世界はこの正義のもとで単一でなければならないと考えた。
ここから2つの「正義」を前提とする片面講和路線は許せないと断罪した。結果、吉田首相から「曲学阿世の徒」と罵られることになる。
③ 憲法9条の精神
これは南原繁ではなく加藤節さんの考え。
日米安保を解消して、多元的な平和条約をあらゆる国と結ぶ、まさに「全面講和」こそが憲法9条の精神だと思っています。
実践的にはそれで良いのだが、南原繁の意に沿うならば、それは9条というより憲法前文の精神なのではないか。