米朝合意の評価 非核化と非戦化を分けるべきだ
非核化と非戦化という考え方は、孫崎さんの言葉ではなく、孫崎さんの発言を読んでいるうちに私が思いついた言葉だ。

米朝合意の軍事的意味
議論を軍事的側面から整理しておこう。
北朝鮮は核兵器を開発し、大陸間弾道弾を完成させた。
まだ核弾頭として搭載できる保証はないし、誘導システムもないので、核脅威が本格化したわけではない。
これに対して国際世論は核兵器の放棄を強く求め、そのために経済制裁などの圧力を加えてきた。
アメリカ政府とトランプ政権は、これまでも核兵器の放棄を求めてきたが、昨年後半に北朝鮮が大陸間弾道弾の発射に成功してからは、にわかに戦争圧力を強めた。
これに対し危機感を強めたのは韓国政権とアメリカCIAのポンペイオ長官らであった。
当初のポンペイオの提起はミサイル開発停止と経済制裁の見直しであったと思われる。
これに力を得た韓国のムンジェイン政権が積極的な仲裁に乗り出した。
ムンジェインは当面する核・ミサイルと軍事脅迫・経済制裁のバーゲニングに加え、より長期的な、朝鮮戦争の終結と米朝国交回復の工程を結合させることを提起した。
そのなかで、米朝首脳会談による両国の外交関係樹立が生まれてきた。

非核化と非戦化のバーゲニング
以上のような大づかみな把握から導かれる結論は、一連の交渉過程が非核化と非戦化の取引(ディール)だということである。
アメリカも国際世論も北朝鮮の非核化を求めている。
北朝鮮は非核化を約束し、その代わりに自らの安全に関する保証を求めている。それは朝鮮半島の「非戦化」と呼ぶことができる
「自らの安全に関する保証」の内容は具体的には不確かだが、最低レベルでの米韓合同演習の見直しと経済制裁の緩和、長期レベルでは駐韓米軍の撤退であろう。
これが非戦化の内容である。

平行四辺形の取引き
ただし非核化と非戦化のバーゲニングというのは、入口と出口がちがう代替型取引である。
取引は、本質的には相互の非核化、相互の非戦化の二本筋で行われなければならないものである。
それでは相互の非核化とは何か。それはアメリカの核の傘をどうするのかということだ。
核の傘はおそらく米韓軍事同盟の骨格であるはずだ。“非核的”軍事同盟への移行は可能だろうか。
ついで相互の非戦化であるが、ここはそれほど難しくはないと思う。北朝鮮も米韓合同演習の縮小・中止以上に踏み込んで要求することはないとおもう。
米軍の撤退と米韓安保条約の廃止はもう少し先、南北朝鮮の統一議論と並行しながらの話になるのではないか。

中国のバランサーとしての役割
北朝鮮は非核化とミサイル放棄により軍事的プレゼンスを一気に弱めることになる。
短期的であるにせよ、これを補填する役割は中国に期待することになる。
中国はアメリカとの合意の上で、バランサーとしての役割を買ってでた可能性がある。
妄想に属することではあるが、アメリカが韓国に核の革を提供するように、中国が北朝鮮に核の傘を提供する可能性もある。

韓国の非核化・非戦化が今後の鍵
先日紹介したNHKの解説にも明らかなように、米朝合意の今後の動きは、韓国における米韓安保体制の動きに関わってくる。
すでに米韓合同軍事演習を巡って激しい鞘当が始まっており、韓国における平和闘争の役割が重要なものとなっている。
また東北アジアの平和の枠組みを構築していく上で、憲法九条を守る日本の戦いの役割も大きいものがある。
今後も注目していきたい。