リーマンショックの巨大さを知る

通商白書 2011年版から、実体経済に関わるグラフをいくつか転載する。

まずは主要国の政策金利の推移。

政策金利

ほとんどの国が公定歩合を0%近くにまで下げている。金利操作でやれることはなくなった。国家の経済調整機能は半分失われたことになる。それが現在まで続いている。あとは量的緩和で、「毒を以て毒を制する」しかない。

その「毒」のまわり具合を示すのが財政収支ということになる。

財政収支

ばらつきはあるのだが、平均で-4%から-10%まで悪化し、12年に至っても-7%にとどまっている。それが誰にしわ寄せされるかは別の話として、国家の懐は大打撃を受けたままにとどまっているということだ。

もしもう一度リーマン・ショックが襲えば、国家という国家は枕を並べて討ち死にすることになる。これだけははっきりしている。

下の2枚は鉱工業生産指数をリーマンショックの発生時を100としてプロットしたものである。上が先進国、下が新興国である。

鉱工業生産

鉱工業生産指数2

落ち込みの谷は半年後に来ており、先進国では平均して15%の落ち込み。問題はさらにそれが遷延化しており、2年を経過しても95%にとどまっていることである。新興国も中国を除けば同様の落ち込みを経験しており、先進国に比べ軽微とは言っても程度の問題にすぎない。

日本の落ち込みが少なかったのは、ひとえに中国のおかげだ。

次の図は貿易量の推移。通産省がオランダの統計局から拾ってきたもののようだ。

貿易推移

 縦軸の数字の単位がわからないが、ピークの160に対して谷底が130だから18%の低下ということになる。鉱工業生産の低下を上回る低下だ。

投資性向の指標として株価の動きを見てみると、下の図になる。

株価推移

図形の処理が間違っていて、08年9月としたところは、実は09年9月だ。ピーク・ポイントがまさしく08年9月だ。谷底には09年11月に達している。

粗々見ると、60%の低下となる。ほとんど商いがなくなってしまったと考えてよい。しかもそれは2011年に至っても全く回復の兆しを見せていない。

鉱工業生産の回復は、遊休設備が再稼働したに過ぎず、新たな投資はなされていないことになる。ということはいずれ設備の摩耗に伴い第二の谷が来ることになる。

新興国への投資はさらに深刻である。

新興国投資

投資額はピークの1兆ドルから4千億ドル弱まで落下した。とくに目を引くのは商業銀行融資で、5千億ドルが一気にゼロになり、谷底の時期にはマイナス収支まで落ち込んでいる。

これが新興国にいかなるダメージを与えたかは想像に難くない。


世界恐慌の波の終着点は、地理的には新興国ということになる。階級的には雇用だろう。ただこの統計は通商白書のものだから、雇用の問題は明らかにされていない。金融出動や財政問題もほとんど触れられていない。

また資料を探すしかないだろう。