我が家には50インチの堂々たるテレビがある。三菱製で絵は多少落ちるが音がすごい。もともと嫁さんがテレビ人間で、それでこんなすごいのがあるのだが、今は寝たきりで事実上私のものとなっている。
日曜の昼間にカーテンを閉めて、絨毯に座って少し見上げる風に見るとなかなかシアター風である。
連休中に借りたビデオで、「阪急電車」というのが良かった。基本的に女性映画で、男役は刺身のツマ的にしか出てこない。
2011年3月の公開というから東北大震災に完全にかぶっている。これは大方の日本人にはまったく知られない映画ではなかったろうか。めぐり合わせが悪かった映画である。
この映画の舞台となったのは、シックな阪急の中でも宝塚と関西学院、西宮をつなぐ郊外路線で、関西では屈指の洒落たところらしい。20年くらい前、何故か池田で心臓ペーシングのセミナーがあった。帰りに宝塚に寄った記憶がある。私は手塚治虫の記念館を見てきた、連れは宝塚歌劇場を見てきたらしい。
と言うくらいで、あまり馴染みのない場所である。
映画の方だが、宮本信子と南果歩が圧倒的によい。実は最初、ふたりとも誰かわからなかった。口元と喋りと仕草がすごくて、「誰やろう? なにか見た気がしてしょうがないんだけど…」と言ったら嫁さんが指盤で教えてくれた。「目は口ほどにものを言い」と言うが、口元の美しさがえらく目立つ映画であった。
主役の俳優は中谷美紀という人らしいが私はよく知らなかった。ちょっとゴツめの顔立ちであるが、映画ならではのドぎつめなキャラなので、それをリアルに作り上げた実力はそれなりのものなのであろう。衣装と宝飾は間違いなくA級だった。
あと、うまいなと思ったのは田舎出の女子大生を演じた女優さん。谷村美月というらしい。横にいたらちょっと引いてしまいそうな、ちょっと濃すぎる映画向きの美人だ。
その他、これだけ多くの役者がみなうまく化けていて、登場人物をつなげる脚本が良く綾んでいて、エキストラまでふくんで画面の目が詰んでいて、この上なく贅沢な映画だった。ごちそうさま。