大阪AALAでのベネズエラ大使の講演内容です。新藤さんの配信を転載します。


大阪アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会(Osaka AALA)主催

「ラテンアメリカとカリブ:危機の時代の機会と課題」シンポジウム

セイコウ・イシカワ大使講演

大阪 2018224

 

敬愛する大阪AALA理事長及び友人の皆さま、

カルロス・ミゲル・ペレイラ、キューバ大使及び私を、この貴重なシンポジウムにお招きいただき、ラテンアメリカの最近の情勢を共に語りあい、友好と連帯を祝うことを主催者の皆さんに感謝します。このシンポジウムは、特にベネズエラと日本の国交樹立80周年と、わが国への日本人移民開始90周年の機会に行われています。

 

来る35日は、ベネズエラにおいてはわれわれの最高司令官のウーゴ・チャベス・フリアス没後5周年を記念して祝います。したがって、今日のこの集会は、人類と社会的正義の遺産を思い出し、祝福するための絶好の機会となります。

 

ボリーバル革命に対して継続される攻撃

l  ウーゴ・チャベス・フリアス(Hugo Chávez Frías)司令官が、1998年に政権につき、その後透明性のあるいろいろな選挙に勝利して以来、ボリーバル革命は政治的・外交的・経済的、そして特にメディア、といったあらゆる角度から絶えず計画的で、系統的かつ継続的な攻撃にさらされてきています。

 

l  長年、一連の事件が起きてきました。アメリカ帝国が、米国を支配するグローバル企業グループの指示のもとに行動し、当初は隠蔽されたあらゆる干渉行動を実施してきたことの全容と詳細は、恐らく世界中で知られておりません。その目的は、ベネズエラ・ボリーバル共和国の合法的かつ主権ある政権を打倒することであります。最初は2002年にウーゴ・チャベス・フリアス大統領を拉致し、2013年以降は継続的にニコラス・マドゥーロ大統領の合法的政権に対して、そうした行為を行っています。

 

ベネズエラは脅威なのか?

l  多くの人が、同じ疑問を頭に浮かべます。「なぜベネズエラを攻撃するのか?」。オバマ大統領行政命令は、ベネズエラは、アメリカ合衆国にとって異常で異例の脅威であるとしていますが、ベネズエラは他の国々にとって脅威なのでしょうか。ベネズエラのような国が米国のような余大国を脅すなどというばかげたことが、信じられるでしょうか?

 

l  ベネズエラには大量破壊兵器はないし、どこの国にも軍事基地を所有していませんし、どの国も爆撃したことも侵略したこともありません。19世紀に解放者シモン・ボリーバルが率いる部隊がスペイン植民地帝国から独立するために戦っていたコロンビア、ペルー、エクアドルとボリビアの国民とともに闘うために赴いたことがありますが、歴史を見てもベネズエラの軍は、兄弟国を守るためにしか国外に出たことはありません。ベネズエラは、平和主義の国であり、憲法は、目的の中に国家間の平和協力と核軍縮を明白に定めています。ベネズエラは原爆と水爆の存在が意味する危険に対する唯一の保障である核軍縮を擁護しています。

 

l  さて、米国の利害について語る際には、中でもベネズエラが持つ世界有数の石油埋蔵量とベネズエラの地政学的位置に触れることになります。最重要な2つの戦略的ファクターであり、社会主義国であると明確に認識していること、愛国的政権であることが、アメリカ帝国の懸念するところになっているのです。愛国者であるウーゴ・チャベスとニコラス・マドゥーロは、わが国の主要な天然資源である石油の所有権を行使するにあたり民族的な政策を維持してきました。しかし、それだけでなく、OPEC(石油輸出国機構)と団結する政策を推進してきました。ヘンリ―・キッシンジャーの時代からエネルギーの大量消費国は、OPECを破壊しようと策略を図ってきました。そして、もうすぐ目的を達成できる、という時期にウーゴ・チャベスが、世界の石油舞台に登場し、大量消費国に追従する諸国が奉仕していた計画を挫折させたのでした。

 

l  一貫した社会主義者であるチャベスとマドゥーロは、所得の分配に関するいろいろな政策を適用しました。それは、もはやベネズエラの特権層を豊かにするのではなく、ベネズエラ国民の生活条件を継続的に改善するためのものでした。

 

l  ボリーバル革命は、ベネズエラ住宅計画(Misión Vivienda Venezuela)によって立派で設備を備えた家を与え、約200万世帯の尊厳を回復しました。市民の治安組織を強化し、全国民に対して例外なく推進してきました。すなわち、無料の初等、中等、大学教育、キューバ共和国との二国間協定に基づいた支援を得ての無料医療、研究奨励策としての奨学金、高齢者に対して物価スライド制による年金の増額、国の機関や国営企業での市民の労働賃金の増加、共同体が主導しての食料供給・生産についての地域共同体評議会制度の導入、そのための中央政府の確固とした支援、ベネズエラ全国に及ぶ住民自治組織と住民自治評議会のネットワークの拡大、様々な文化集団に対する支援など、国民の過半数の条件改善を目指す、枚挙にいとまがないほどの活動を実行してきました。しかし、エリートや経済力のある人々の集団は、こういう活動をよく思わず、食料と医薬品のテーマについては、特にコロンビア共和国との国境地帯において一時的な供給不足や危機を作り出して、頓挫させようとしてきました。

 

l  ベネズエラ政府の特徴である、ベネズエラ国民の物質的条件の改善と主権を重視する政策によって、ベネズエラは、国の富によるのではなく、ボリーバル的不屈の精神によって強い国になりました。

 

l  しかし、ベネズエラの国の利益に関わる政策の他に、ウーゴ・チャベス司令官は、アメリカ大陸統合の種を文字通り蒔き、水を与えました。アメリカ大陸の統合は、ボリーバルの時代以降、休眠状態になっていました。こうして多中核的・多極的世界の実現に貢献するためにALBA(米州ボリーバル同盟)、Petrocaribe(ペトロカリブ)、UNASUR(南米諸国連合)、CELAC(中南米・カリブ海諸国諸共同体)が生まれました。チャベスの指導力のもとで、ボリーバルは、崇拝対象の遺物ではなくなり、新たに現実の命を獲得しました。これらの計画は、的確で非常に示唆に富んだ計画であったと同時に、具体的な行動でもありました。「われわれのアメリカ」は、再び孤立した個別の国、存在するだけで満足する国ではなく、団結が代表する巨大な潜在能力を益々自覚し、またみずからの国土も、また主として国民の想像力も宿している印象的な富を益々自覚した国と変わりつつあるのです。

 

反ベネズエラの同じ戦略の中での様々な戦術、

l  1999年以来ベネズエラが被っている様々なハラスメントは、ウーゴ・チャベスが死去した2013年以降、またその後2015年に野党が立法府で勝利してから激しくなっています。ここ20年間にベネズエラは、様々な形で攻撃を受けました。それらは、クーデター、石油スト、殺人と絡めた暴力的過激行動、政治裁判の試み、組織的な品物の供給不足と買占め、OAS(米州機構)やメルコスール原加盟国(メルコスールをベネズエラ迫害組織に換えた)など多国家機関の絶えざる干渉的表明、また米国による制裁や干渉的な脅迫です。

 

l  問題は、南米地域の他の政権と違って、エネルギー資源をものにすることが大国の行動日程に入っているという地政学的状況下で、外国企業による石油産業の全面的管理(おまけに世界有数の確認済み石油資源を不法に占有しようとしている)を受け入れない政権を終焉させようとしていることです。

 

l  米国政府の政治・情報機関が、在カラカス大使館を隠れ蓑に、NGO(非政府組織)を通じて種々の行動に資金を提供し、指導してきたことは火を見るより明らかです。こうした地政学的行動からは、カリブ・南米・ラテンアメリカの国であるベネズエラ(「われわれのアメリカ」における典型的な地政学的性質です)を再び自国の権力下におこうという絶望的かつ誤った意図が垣間見えます。天然資源、特に石油・石炭エネルギーやウラニウムに加え鉄、ボーキサイト、コルタン、金その他ほぼ無尽蔵の既存資源に対する覇権を維持しようとしているのです。

 

l  レックス・ティラーソン米国国務長官は、20171月にシンクタンクLatin America Goes Globalのインタビューで、ベネズエラの体制転換への支援を確認しました。同長官は、マドウーロ大統領のチャベス派政権を交代させるたに地域の右翼政権や組織とともに努力する、と語りました。

 

l  南方軍司令官のカート・ティッド提督は、20174月の米国上院軍事委員会に対してベネズエラの深まりゆく「人道的危機」が「最終的に地域レベルでの対応を要求するかもしれない」と断言したことを忘れてはなりません。

 

l  2017年ベネズエラの野党が招集し、鼓舞した抗議行動の間に無責任な野党のせいで100名を余える死者が出ました。暴力が激化し、経済戦争が相当数の国民の苦しめていたなか、組織的な集団が連続的テロの状況を作り出し、統治不能で人道的支援と介入を必要としている状況を世界に見せようとしました。

 

l  ベネズエラの変革プロセスに対する国際的圧力が強まる中、米国の南方軍は、ベネズエラ周辺地域で様々な「活動」を展開しました。中でも際立ったのがTradewinds 2017(ベネズエラ沿岸の正面で行った軍事作戦)、最近ペルー、ブラジル、コロンビア三カ国のアマゾン三地域国境地帯で行った「Operación América Unida」(統一アメリカ・オペレーション)と称する軍事演習、また、20162月にホンジュラスにあるPalmerola(パルメロラ)基地からベネズエラを進攻する目的で準備したFreedom II作戦です。

 

l  南方軍のカート・ティッド提督は、10月にはっきりと、こういいました。「10年間挑戦をしてきた反米体制は崩壊しつつある。ベネズエラにおける民主主義に対する継続的な攻撃は、われわれの共有する価値を防衛する国々を結束させた」。ベネズエラの問題は「反米」の立場であることが明らかなのです。換言すれば、世界最大の石油埋蔵量を持つ国において社会・経済・政治秩序が提起している変革の過程は、米国と「西側社会」が推進する自由市場の民主主義に合わないと考えているのです。

 

l  しかし、米国がベネズエラ周辺地域で軍事的プレゼンスを持ち、常時監視しているだけでは不十分なのです。したがって、1113日にEU加盟国の外相たちは、ニコラス・マドゥーロ政権に「法の支配と民主主義」を強化するよう圧力をかける「規制手段」と考えるものの一環として、ベネズエラに対する武器輸出禁止策を承認したのです。

 

l  実際には物質的・象徴的に見てこの禁輸措置は、ベネズエラが「孤立し」、「包囲されて」おり、変革過程は「失敗した」という誤った印象を与えようと国際社会が講じて来た一連の政策に新たに加わったものです。具体的な例としては、マドゥーロ大統領に対して米州民主主義憲章を適用しようという強迫観念に駆られたOAS(米州機構)のルイス・アルマグロ事務総長主導でベネズエラに対して長年行ってきた運動があげられます。これらの「手段」は、経済戦争においては、包囲という不可欠の手段なのです。

 

l  このことは、むしろOASのいくつかの加盟国によるOAS民主主義憲章の原則の違反にあたります。不思議なことにこれらの国々は、いかなる加盟国の国土が侵害された場合にも適用されるべきTIAR(米州相互援助条約)の精神に違反しようとしているのです。これは、OASの最高責任者による法律上、また、客観的にもあらゆる法的秩序からOASが外れた行為なのです。

 

l  ティラーソン国務長官は、2月のラテンアメリカ諸国歴訪の際、この地域におけるベネズエラの役割を崩そうと願って、当面の地政学的目標を探しました。歴訪中にティラーソンが、「リマグループとOAS を通じてベネズエラに民主主義を復活させるために」、地域の諸国で行った会談について述べたことを考慮すると、もし仮に民主主義憲章適用の是非を問う投票が行われたならば、OAS内でベネズエラを制裁するのに必要な票数を確保する上で基本的に重要なのがカリブ諸国であることが理解されます。昨年OASにおいて、正にカリブ海の同盟国がベネズエラを援護して、米国は敗北したことを思い出すべきです。

 

l  ティラーソン国務長官が、右翼政権諸国のカルテル、自称リマグループを利用してベネズエラに対し、来る4月にリマで開催される米州首脳会議において、ベネズエラ政府を孤立化させ、連携して圧力をかけることを期待していると結論づける証拠が多数あります。

 

l  213日に米国と密接な同盟関係を形成している国々が合意した米州首脳会議における反民主的なベネズエラ排除は、各国元首と政府首班による議論や決定の水準まで上げられていないので、現在有効な基準には違反しており、失敗する方向に向かっています。

 

l  ティラーソン長官は、更にベネズエラ紛争で道が開かれるような新たな図式の中でモンロー主義を蘇らせようとしています。この主義を蘇らせたティラーソンによれば、ラテンアメリカにおける中国とロシアのプレゼンスが「欧州植民地主義」を思い出させ、それを口実に米国政府は、膨張政策を用いて西半球を米国の地政学的・軍事的・経済的後衛にしようとしています。ティラーソンは、中国とロシアが、彼の基準では「警戒すべき」「憂慮される」影響力を、有名な「裏庭」にたいして一層行使するのではないかという懸念を表明しています。

 

l  一部の覇権的メディアにより、ベネズエラが債務不履行(デフォルト)に陥るという推測が流されました。これを後押ししたのはStandard & Poor’sのような国際的格付け会社の表明でした。しかしながら、ベネズエラ政府は、すべての金融債務を債権者に返済し、2017年と2020年までの国債を保障しましたので、2017年現在のすべての債務は返済されています。更にベネズエラ政府は、債務のリスケを予定しています。2018年には他の約90億ドルの国債の支払いをしなければならないからです。米国が科した最近の経済制裁は、ベネズエラでは大統領選挙が行われる年であることから、国際機関が米国の圧力のもとで債務のリスケを阻止、あるいは少なくとも邪魔をするかもしれないことを示しています。

 

制裁、さらに制裁

l  国務省ができる範囲内で「ベネズエラの状況に対処する」ために、「あらゆる経済的・政治的・外交的手段」を駆使する論理で、ベネズエラ経済に「悲鳴をあげさせる」目的で、米国による経済制裁は位置付けられています(サルバドル・アジェンデが率いる人民連合政権を懲らしめるためニクソンは、チリ経済に対して制裁を行うよう頼んだのでした)。このように、15日米国財務省は、海外資産管理局(OFAC)を通して、ベネズエラの4名の高官に新たな制裁を科しました。

 

l  数週間後の122日、EUが米国の政策に加わり、ベネズエラ社会主義統一党(PSUV)副党首デイオスダド・カベジョ、最高裁判所長官マイケル・モレノ、内務・司法・平和大臣ネストル・ㇾベロ、ベネズエラ・ボリーバル国家情報局長官グスタボ・エンリケ・ゴンサレス、全国選挙評議委員長テイビサイ・ルセナ、検事総長タレク・ウィリアム・サアブ及びベネズエラ国家警備隊元長官アントニオ・ホセ・べナビデス・トレス、といったベネズエラ政府のその他の高官に対して制裁を科しました。

 

l  制裁内容は、これらの人物の資産凍結及びEU の全加盟国への入国禁止です。これらの制裁に加えて、201711月以降EU が課した武器輸出禁止、「国内の抑圧に使用」できるかもしれないあらゆる物質の輸出禁止が加わりました。更に米国政府がPDVSA CITGOといったベネズエラの石油会社と米国におけるその子会社の役員と企業に対して、以前述べた制裁も加わります。

 

l  最近、マイク・ポンぺオCIA長官が、トランプ宛に政治的、経済的面について多数の報告書を作成したことを明かしました。それらの報告書が、ベネズエラ中央銀行(BCV)や国営石油公社(PDVSA)が新規に発行する債券所有を禁止した制裁のベースになりました。

 

l  ラテンアメリカについては、太平洋同盟加盟国の大統領たちが、カルテル、リマグループを結成して、ベネズエラ政府に対する執拗なハラスメントが継続しています。リマグループとして、あるいは個人として、メディアを通じて、ベネズエラが「自由、民主主義、法の支配と人権の尊重を回復し、ベネズエラ国民に悪影響を及ぼし、苦しめている深刻な経済的・人道的危機を克服する」必要性について、繰り返し公言しています。また、アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領も、最近行ったEU歴訪中に同様の意味の声明を出しました。この筋書きは、ラテンアメリカやヨーロッパの著名な元大統領たちが参加し、これらの声明を補強し、OAS に対し米州民主主義憲章を適用するよう執拗に申し立てるというものです。

 

l  今述べたあらゆる行動や声明と並行して、Human Rights Watchのような一見進歩的な人権擁護団体やシンクタンクの報告書が、「中立性」を装って刊行されています。これらのアナリスト達は、以前に述べた内容と軌を一にして、「体制転換」に向けて圧力をかけるためにベネズエラにおける「人道的危機」、「人権」の弱体や「民主主義」の不在を議論しています。数か月前にベネズエラの選挙の前倒しを要求していた人々が、今度は2018422日の大統領選挙実施を拒否しているのです。 

 

l  ドナルド・トランプ大統領は、最近の一般教書で「私の政権もキューバとベネズエラで共産主義と社会主義の独裁に厳しい制裁を加えた」と断言しました。

 

l  ドナルド・トランプは、ベネズエラ経済を攻撃目標にした行政命令(オバマ大統領が前に出した条例を継続して)を発令しました。詳細に読めば、ベネズエラが、米国にいるベネズエラの友人と関わりを持つことを阻止すると同時に、対外債務の返済や対外債務への新たな資金供給の可能性を規制しようという意図した、明白な妨害行為であることが分かります。

 

l  国際金融システムの大半は、近年ベネズエラの金融活動に対する封鎖体制を進めてきました。つまり、いろいろなベネズエラ国内機関(公的及び私的)によるベネズエラへの輸出業者への支払い、入金、送金、投資案内の管理、債務返済、国際的な資金源へのアクセスを制限しているのです。ベネズエラに反対して銀行のコルレス(代理支払い)契約が、一方的に相次いでキャンセルされました。PDVSAが発行した債券の支払い代理店であるデラウェアは、20177月から同銀行の米国にあるコルレス(代理支払い)銀行が、PDVSAからの資金の受け入れを拒否すると連絡しました。一方ポルトガルのノボ銀行(Novo Banco)は、20178月に仲介業者が封鎖しているためベネズエラの公的機関によるドル建ての業務はできない、と通知してきました。ベネズエラ債権のかなりの部分を保管しているベネズエラの国債のかなりの部分を管理しているユーロ・クリアー(Euroclear)社は、「見直し」の過程にあるかなりの額の保留国債の取引を留保しています。それは、OFAC の圧力によるもので、12億ドル余となります。ベネズエラと提携しているチャイナ・フランクフルト銀行(Bank of China Frankfurt)は、カナダの鉱業会社Gold Reserveに対する1500万ドルに上る債務を支払を履行することができませんでした。

 

l  食料及びその他の基本物資の輸入支払いが、封鎖を受けています。例えば11月の第三週には食料の代金支払いに向けた23余の業務で3,900万ドの支払いが返金されました。といいますのは、輸出業者の仲介銀行が、ベネズエラからの資金を受け入れようとしなかったからです。似たような状況が、クリスマス用品の買物、医薬品(インシュリン、マラリア治療薬)、種子、ベネズエラのスポーツ選手の移動(ウエルズ・ファーゴ銀行Wells Fargoが業務を阻止しました)、通信(オランダ・ラボ銀行Rabobankが、送金名義人がOFACの制裁対象であるとして国際通信社テレスルTelesurの運営のための支払いを拒否しました)でも起きました。

 

l  トランプ政権は、ベネズエラ経済にとって石油輸出が戦略的価値を持つことを認識して、ベネズエラに対し石油禁輸措置の適用を考えています。公式には最初この考えは、昨年9月に米国の国連常任代表、ニッキー・ヘイリー大使から出されました。2月、ティラーソン国務長官がアルゼンチン訪問時に、「米国における石油の販売やベネズエラ製品の精製に制裁を加えることをわが国は考えている」と述べました。

 

カリブ海においてベネズエラの石油に対抗する米国

l  経済戦争は、エネルギー分野に対する圧力も含まれます。周知のように、ベネズエラは、2005年にペトロカリブ(Petrocaribeカリブ石油供給協定)の創設を推進しました。このイニシアティブには、カリブ15カ国余が加盟し、ベネズエラがこれら加盟国に助成価格で石油を販売し、支払いにも便宜を図る、という形で協力しています。問題は、ベネズエラから見れば、同盟国のエネルギー安全保障を確固なものにして、その発展を保障し、それまでとは異なる地政学上の協力の基礎を築いていることです。

 

l  米国は、伝統的に米国の影響下にあったこれらの小さく経済力が脆弱な国にとって、関係を多角化し、より自由に行動できるようになる通商協定を実現することは戦略的な意味をもつことを認識していました。それゆえ、バラク・オバマ大統領の政権時からPetrocaribeから石油を調達するのを止めて米国との新しい同盟国から調達するよう、カリブ海諸国に対し圧力をかけました。米国は、ベネズエラの対外政策の支柱の一つを壊そうとしたのです。このようなことから、20151月に米国は、CELAC(中南米・カリブ海諸国諸国共同体)の第三回首脳会議開催に合わせて、カリブ諸国を招集して会議を行いました。その会議の後、4月にCESI(カリブ・エネルギー安全保障イニシアティブ)が、設立されました。米国は、石油価格下落後ベネズエラが、経済危機に陥ったことを、またそれがペトロカリブの協力関係に影響を及ぼし得ることを利用して、カリブ海の島嶼国を自らにひきつけようとしました。Petrocaribeが不安定である、という考えは、Atlantic Councilのような米国のエスタブリッシュメントの複数のシンクタンクが事前に研究しており、2014年にはUncertain Energy: The Caribbean’s Gamble with Venezuela(不確実なエネルギー:カリブ海によるベネズエラへの賭け)というタイトルの報告書が公表されました。

 

l  米国の更なる戦略は、エネルギーの代替をアピールするものでした。表面的に環境保護を唱える議論の裏には、カリブ海のような米国にとって地政学戦略的に重要な地域において、ベネズエラの影響力をくつがえそうとする地政学的な議論が隠されています。この文脈において、昨年1115日に米国国務省は、「カリブのエネルギー多角化を支援する」ために430万ドルを供出すると発表したことが理解されます。この発表が、「米国・カリブ海の繁栄に関する円卓会議」の枠組みでなされ、資金は、CESIの推進とカリブのための2020年戦略のために役立てる、といっていることを強調することは、重要です。この計画には、国務省のエネルギー資源局、米国開発庁(USAID、近年類似の諸計画を既に持っている)と海外個人投資会社(OPIC)が参加しています。国務省自体の説明によると、その仕事は「エネルギーに関する技術援助、計画準備のための補助金、企業にとって新規機会並びに世界で競合できる米国エネルギー輸出」をもたらすことです。

 

 

干渉の可能性

l  こうして、都合により合同で、または単独で実行する様々な規模や戦略が、明らかになりました。すなわち、国際機関や外交を通じた政治的圧力、経済的圧力、破壊活動、市街での暴力的なシナリオの構築、軍部による決起の誘い、「不安定性が高度になった」場合での介入の脅迫(これは南方軍の役割でしょう)です。これらすべてに、国際報道が付け加わります。実際、英語メディアや、スペインにある大手メディアでベネズエラに関して偏った(悪い方に)報道をしないものはありません。世界の世論に干渉者側の表現(「人道的危機」「警察国家」「麻薬独裁体制」)を売り込むのは、報道企業のできあがった確認されている戦略なのです。ますます、追いつめられた無法の、破産した国家であると語るのです。すべては、ベネズエラが直面している「人道的危機」について、同意を得るためであり、そのことにより、様々な種類の干渉を正当化できるからです。

 

l  今述べたことに、ラテンアメリカ地域における米国軍のプレゼンスが増していること、最近カート・ティッド提督がコロンビアを訪問したこと、コロンビアとブラジルに駐屯していた複数の部隊がベネズエラとの国境地帯に移動したこと、他方ではベネズエラ移民の問題で悪印象を与えようとしていることを勘案しますと、最小限の口実でベネズエラに軍事介入するための完璧なシナリオが作られつつあるように思われます。後は挑発することで、虚偽であってもいいのです。コロンビアからの偶然の攻撃か、ベネズエラ国内での何らかの暴力行為か、それが、ラテンアメリカの1カ国または複数の国の軍隊の干渉を正当化する、というもので、そのことにより、米国南方軍が何らかの形で介入する状況が作られることになるのです。

 

l  先週、ベネズエラのネストル・ㇾベロル(Néstor Reverol)内務・司法大臣は、コロンビア陸軍が150名以上のベネズエラ人を徴兵したことを非難しました。これは、彼らにコロンビアの身分証明書を迅速に供与して、彼らに反コロンビア行動を行わせ、ベネズエラ=コロンビア国境地帯で偽の身分証明書であることが暴露される事件(虚偽の身分証明書をもった行動)をでっちあげるためです。 

 

制憲議会

l  国内外の構成員を使った帝国主義の攻撃が、強まるなか、ニコラス・マドゥーロ大統領は、201751日に国の平和と対話のための制憲議会選挙を招集しました。大統領直属の委員会が設立され、選挙基準案を策定し、地域別と分野別の投票を決定しました。制憲議会を招集する決定は、ベネズエラのテロリスト野党が引き起こした紛争と暴力のただ中で、高級の対話を行うことを提起したものです。日常的な厳しい批判という困難を解決し、わが国における経済、政治、社会モデルにおいて構造的な矯正を実現するために、制憲議会は必要な場なのです。

 

l  昨年730日に制憲議会の選挙当日、多数の国民の投票行動を困難にしたのは、暴力行動でした。問われていたのは、マドゥーロ大統領の政権が、2015年に投票しなかった200万人の一部のチャベス派を取り戻せるかどうかでした。しかしながら、攻撃と暴力が、チャベス派=マドゥーロ派及び批判派を制憲議会に関わって団結させるにいたったのでした。その時、選挙キャンペーンは、平和の呼びかけが設定されました。制憲議会により、議員たちが属する分野や地域に基づいた提案をもった、新たな基礎的指導層が出現したのです。

 

l  制憲議会が成立して以来、ベネズエラは、平和への道のりに戻ることができました。われわれは、国に対する極右分子が行う暴力による不安定化キャンペーンを打ち破りました。それは、彼らが外国の介入とニコラス・マドゥーロ共和国大統領に対するクーデターを正当化する計画を、再活性化しようとするものでした。

 

l  制憲議会は、本来、国民に存する権力を解き放ち、今やベネズエラ社会の重要な仲介者としての役割を果たす構えでいます。制憲議会は、最も多様な民主主義を現実的に行使するという精神を常に持ちつつ、論争に終止符を打つためには、欠かせない場なのです。国は、引き続き、他の各権力とその機関の権限と相互依存性を尊重しつつ、これまでの道を進んでいます。

 

l  全国選挙評議会の規定に沿って、選挙日程が決められました。ベネズエラでは7月末から1210日までの間の140日間に3つの選挙が実施されました。制憲議会選挙、県知事選挙及び基礎行政区選挙です。これらの三つの選挙で、チャベス派は、再評価され、再び選挙での力を増し、明白な勝利をおさめました。

 

l  10月におこなわれた県知事選挙は、投票率は54%で、チャベス派は54%の得票率を確保しましたが、野党は得票率45%でした。国内23県のうち18県でボリーバル革命が認められました。

 

l  基礎行政区選挙には、70余の政党が参加し、チャベス派は、6,517,605票(得票率70%)を獲得したのに、野党は2,749,778票(得票率29%)を得票しただけでした。ボリーバル革命は、305の基礎行政区長(92%)を獲得、野党は25の基礎行政区長(7%)、その他の政党が5の基礎行政区長(1%)を獲得しました。

 

l  同様に、来る422日に大統領選挙が招集され、12政党が候補者を出します(224日現在)。ニコラス・マドゥーロ大統領は、最近開催されたPSUV(ベネズエラ社会主義統一党)の全国大会においてチャベス派の候補者に任命されました。

政府と野党の対話

l  前述した判断材料を見れば、ドミニカ共和国における野党とベネズエラ政府の対話の場を崩そうと急いだ、米国とコロンビアの寡頭政治支配者の行動を理解できます。もし、両者が既に用意し、双方が承認していた合意書に署名していたならば、ベネズエラに対する介入の陰謀が少なくともしばらくの間は停止することになるはずですから。

 

l  2017年末、マドゥーロ大統領が推し進め、ダニロ・メディーナ(Danilo Medina)ドミニカ共和国大統領が後援者となり、スペインのホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテーロ(José Luis Rodríguez Zapatero)元首相が仲介者となり、ドミニカ共和国で政府と野党間の対話が行われました。フリオ・ボルヘス(Julio Borges)を団長とするベネズエラ野党代表団が、合意書の作成を作業しました。いつものように、ボルヘスは、様々な国や国際機関に対して、一方で対話を肯定しながら、他方で経済封鎖を更に厳しくし、制裁を拡大し、ベネズエラの内政に外国が介入するよう求めました。

 

l  このような状況を前に、サパテーロ元首相は、公開書簡によって、マドゥーロ大統領側は既に合意を果たしており、野党には最後の瞬間に態度を変えて攻撃するのではなく、これまで形成してきた合意を尊重するよう主張しました。結果として、ボルヘスは、何度も矛盾する表明を行ったあと、ベネズエラ全国選挙評議会により行われた選挙の呼びかけを拒否しました。ところが、この同じ評議会が、数度の選挙で野党が勝利したことを承認しているのです。

 

ベネズエラの同盟国

l  ベネズエラが国際的に孤立しているという考え方を押し付けるのは、基本的に、強力な経済権力に結びついたメディアによるプロパガンダによるものです。これらのメディアにとって、国際システムは、西側の中心的な大国の存在に限定され、中華人民共和国、ロシア連邦、インド、ブラジルなどのすべての新興国は無視されているようです。しかし、これはBRICSに限ったことではありません。ウーゴ・チャベス元大統領は、ベネズエラの外交政策を、ベネズエラの二国間関係においても多国間関係においても、また、影響範囲の多様化においても、それまではベネズエラ外交が開拓していなかった国や地方まで展望を広げました。その結果、ベネズエラ国家は、過去10数年間、国際的に第一級の積極的で精力的な国になりました。OPECの交渉においては、世界の確認済石油資源の主要な保有国として中心的な役割を果たし、国際的な反帝国主義の基準にもなっているという特徴からも、国際的孤立という図式は、偽りであることが分かります。

 

l  事実20169月から2019年までベネズエラは、NAM(非同盟諸国運動)の議長国を務めています。ベネズエラは、初めてこの国際組織の責任を負っていますが、海外で国が、大いに問題視されている時期だけに、大きな象徴的意味があります。また、ベネズエラは、2017年からカリブ諸国連合の議長国でもあります。

 

l  ボリーバル革命に対して虚偽の証言がなされたり、国内政治に不安定化が誘引されたりしても、それにもかかわらず、ベネズエラは、ここ重要な数カ月間に中国やロシアといった大国と通商協定に調印しましたし、これらの国の政治的支援を受けています。ロシア企業は、米国による制裁が行われているさなかに、PDVSAに前払いをして支援しています。

 

l  ベネズエラの変革プロセスに対して、日々軍事・政治・経済及びメディアによる包囲が行われており、包囲の当面の目的は、ベネズエラは孤立しており、強力な同盟国がなく、「出口が無い」という考え方を植え付けることです。しかしながら、ベネズエラ国民は、強さと自尊心があることを見せています。それは、去る7月の制憲議会選挙と2017年の県知事選、基礎行政区選での国民の参加に示されました。一方ベネズエラ政府も、引き続き、国際的な同盟を強化しています。包囲は現実にありますが、失敗しています。新自由主義のメディアの予測に反して、ベネズエラ国民が変革プロセスの強化を目指しているという「想定外」の現実がありますが、そのことは、来る422日の大統領選挙で再び示されることでしょう。

 

結論

l  帝国主義はベネズエラに対する干渉の水準を高め、ボリーバル革命への攻撃を強化するための条件を作り出そうとし、合法的なマドゥーロ大統領政権を不安定にし、「体制の転換」を招こうと企図しています。

l  この条件には、国際世論の前で、ベネズエラを否定的に画き、帝国主義の戦略を正当化する容赦ないメディア操作が含まれています。ベネズエラ人の近隣諸国への「想像上の大量の恒常的な移民」による人道的危機という場面が強調されています。

l  かくして、干渉の仕組みは、政治的、外交的、メディア的、経済的圧力を含むまでに拡大され、最も懸念されることは、軍事的オプションとなっています。

l  軍事介入の脅迫は、この恒常的な増大している強力な圧力に加えて、革命の過程に「制裁」を科すために、より不安定化を招く要因として使われています。

l  ワシントンにとって、唯一の解決は、今や、ニコラス・マドゥーロの交代及び「体制の転換」となっています。このオプションは、内戦と甚大な人的・経済的損失の危険を内包するもので、最近イラク、リビア及びシリアで適用された荒廃と悲惨なモデルと同じものです。

l  そして、ベネズエラの反政府派は、このオプションを支持して、ドミニカ共和国での対話で到達していた合意に署名することを拒否しました。この合意は、内部の政治的紛争を減少させるためには必要な一歩となっていました。この反政府派による拒否でもって、ベネズエラに対し金融的、経済的に最大限の包囲を進めるための必要な口実を作り出そうとしたのです。

l  帝国主義の攻撃は、ベネズエラを米州の政治的に重大な問題点と認識し、転覆する―それも急速に―必要性があるとするものです。というのは、ベネズエラは、米州において新興の多国間ブロック(中国、ロシア、2018年の国家安全保障戦略の地政戦略の視点に従えば)の導入のために地政学上の橋渡しとなっているからです。米国は、米州を専一的な地政学上の後衛と考えているのです。

l  日程と要因が組み合わされており、危険で憂慮されるものとなっています。こうした干渉行為を合法化することを支持し、推進している地域の右翼政府が果たしてきた悲しむべき役割がそれを代表しています。

l  帝国主義の増大する攻撃に対決するために、ボリーバル革命は、引き続き社会的成果を前進させ、参加型、国民が主人公の民主主義を改善し、住民共同体を通じた社会運動組織を拡大し、変革の過程を支持する政治勢力と団結し、疲れを知らぬほど努力しています。これは、フィデル・カストロ司令官が「思想の戦い」と呼んだ、国民の意識改革です。

l  ベネズエラにおいては、平和、民主主義、独立、主権、民族自決権を擁護する決定的な戦いが展開されています。

l  連帯は、ベネズエラ及びボリーバル革命が覇権主義大国に抵抗できるための道具です。独立、主権、民族自決権の擁護のために闘う人々の努力を結集し、相互の連帯を強化することが必要です。

 

終わりに当たり、永遠の司令官、ウーゴ・チャベスがわれわれに残したことば、皆さんとともに共有したいと思います。「帝国主義が存在するかぎり、ボリーバル革命は、危険、脅迫にみまわれる。というのは、われわれは、彼らの代替モデルを建設しており、もしわれわれが成功するなら、資本主義が一掃されるからである」。

 

ボリーバル革命との一貫した連帯に感謝いたします。