奥さんの訪問入浴が来るので、「どこか行かなきゃならない」と思って映画館の案内を見たら、おあつらえ向きの映画があった。
「羊の木」という題でまだ封切ったばかり。原作の山上たつひこというのが気に入った。不朽の名作「がきデカ」の作者である。その後まったく消息を聞かなかったのだが、生きていたのだ。彼の作ったものなら間違いないだろうと即断した。
「羊」というのがいかにも「羊たちの沈黙」を連想させる。2時間を超える映画でいささか胃にもたれるが、要所要所での迫力は満点だ。床屋のカミソリの場面と、トラックでひき殺すところ、そしてじわじわと忍び寄る恐怖は、この映画の醍醐味だといえなくもない。
ただし、ストーリー展開には強引なところがあって、6人の元受刑囚のキャラクターもごちゃごちゃとして書ききれていない。ヒロインは美人だが、ヒロインにふさわしい魅力がない。変なお化けめいた作り物は目障りだ。そんなこんなで素直に映画の世界に入りきれないのは残念だ。
私なら元受刑者を3人か4人に絞って、話を刈り込んで90分物にする。ヒロインは原作にはなく映画作成時に加えたらしいが、それがこの映画の災厄の根源になっているようだ。元ロッカーで故郷が嫌で東京におん出て、なぜか挫折して帰ってくる。それがまたなんの屈託もなくヘビメタを再開するというのがいかにも支離滅裂だ。ヘビメタは高校のブラスバンドではない。
この作品でヒロインは主人公ではないのだ。だからもっとキャラを単純化すべきだ。そもそも必然性のない存在だから消去してしまうのも方法だろう。
それにしても怪優北村一輝の存在感はすごいですね。松田龍平、市川実日子…聞いたことのない名前ばかりだが、みな存在感のある名役者だ。主役と言うか狂言回しの役者もみごとに善人に徹している。
これだけの役者を集めて、これだけの原作を受けて、これだけの“愚作”(駄作ではないが)が作れるというのも一種の才能なんでしょうかね。
羊の木1