以前から思っていたのだが、中大兄と中臣の蘇我親子に対するテロは、明らかにヤマト王権を守るという明確な目的を持っていた。
1.蘇我一族と蘇我稲目の家系は別物
なんと言ったらいいのか「蘇我氏」は大和政権の一部を形成しているのだが、本質的に「非ヤマト」勢力なのである。しかも倉山田の蘇我とか身内としての蘇我氏もいるので、蘇我と名が付けば全部が「非ヤマト」ではなく、飛鳥に広がる蘇我一族の中で、蘇我稲目に始まる系統のみが「非ヤマト」なのだ。稲目一族は本来の地方豪族の蘇我ではなく、宿借り蘇我なのだ。
分かり易いが不正確な言い方をさせてもらうと、在日の金さんや李さんが金田とか新井とかを名乗るようなものだ。
蘇我稲目一族もかなり血まみれの経過でトップに上り詰めているが、そろそろ露骨なヤクザ路線でなくても権力を保持できるだけのプレステージを獲得しかけていた。
蘇我稲目一族虐殺事件は、明らかに主役・中大兄の激しい殺意に基づいているが、それは預言者中臣に焚き付けられたものであり、被害者意識とジハード観に裏付けられている。
これほどに激しい焦燥感はどこから生じるのであろうか。それは蘇我稲目一家が九州の倭王朝の流れをくんでいるからではないだろうか。
例えば葛城や大伴がたまたま姻戚関係でのさばったとしても、大和政権が乗っ取られ断絶するというほどの危機感は持たないだろう。中臣らが蘇我氏に対して感じる危機感というのは何か異質なものを感じてしまうのである。
彼らが九州王朝の流れをくんでいるという積極的根拠は何もない。しかし、蘇我氏がただの飛鳥の田舎豪族ではないという状況証拠はかなりある。そこを結びつけるものがない。それは蘇我本家の焼き討ちにより焼失したのではないか。