「昭和陸海軍の失敗」(文藝春秋)という本があって、下記のような興味深いくだりがあった。

福田 誤解を恐れずに言えば、この時点で日本の陸軍は「デモクラシーの軍隊」になった。東条英機は岩手、永田鉄山は長野の出身です。…長州閥という地縁、血縁的な関係ではなく、陸士や陸大で好成績を上げたエリートたちが中心になる、ある意味できわめて民主的な形で運営されるようになった。
戸部 「昭和の軍隊のパラドックス」といえるかもしれません。軍隊は出身が民主的にななると政治的になる、…平民出身の将校ほど天皇を持ち出して、独善的にあらぬ方向へ進んでいくようだ。 

ということで、どうもこれはデモクラシーと呼べるようなものではないのだが、それに対するうまい呼び方がない。
似たようなことは歴史上のさまざまな場面で経験することがあり、どうもその評価には手を焼く。「衆愚政治」とバッサリ切り捨てても仕方ないし、ソクラテスのようにみずから毒を飲んで命を断つのも間違いなのだが、これをどう評価しどのように対応するのか。
ここにリベラリズムとかあるいは立憲主義とかいう概念が外挿されるのだろうが…

この本に基づいて 
2016年03月19日
永田鉄山と一夕会 年表
を増補しました。