サウジの「覇権化」と湾岸諸国の動向
その1. カタール封鎖をめぐる各国の動き
アラブの春からシリア内戦、そしてISと激動が続く中東であるが、報道されない主役としてサウジの覇権主義的行動について注目する必要がある。
といっても私にも「気になる」という以上の情報は目下ないのだが、一番奇異なのはむしろこのメディアの沈黙ぶりなのだ。(ベネズエラでの大はしゃぎとは天地の差がある)
とりあえず気になることとして、
イランへの政治的挑発、カタールへの攻撃(これについては、攻撃そのものもさることながら湾岸諸国連合の私物化が気になる)、イエーメンへの侵略、そしてレバノン首相の軟禁事件(これほどの事件が全くフォロろーされない理由が分からない)
などがある。
湾岸諸国もこれらの動きに無関心ではいられないはずだが、カタール(ということはアルジャジーラ)を除けば、その反応はほとんど報道されない。
おそらく日本語資料はほとんどないだろうが、少しあさってみようかと思う。
2.サウジの本音はシーア派弾圧
サウジの中東覇権戦略は二つの柱があって、その関係が微妙に揺れ動く。
一つはイラン人に対抗するアラブ人世界の団結であり、もう一つはシーア派に対するスンニ派盟主としての対抗である。
アラブ世界の盟主となることはサウジにとっては最も大きな意義があると思われる。またほかのアラブ国家からの支持も期待できる。
イラン人というのはペルシャ人であり、人種、民族が異なる。ただしこれは、トルコ人に対しても言えることであり、その差をあまり強調するのは、イスラムの教えに反することになる可能性がある。
さらにイスラエル、サウジ、イランの間で微妙に成り立っている中東の力関係を改変することには危険もつきまとう。
だから、こちらの戦略を本気で自力で展開する意志はないだろうと思う。(エジプトに担わせて背後で操る手法の継続)
これに対してシーア派への弾圧はもろにみずからの権力基盤に係る課題となる。
中東の多くの国でシーア派教徒数はスンニ派を凌ぐ状況になっている。しかし彼らはそれぞれの国家で下層階級を形成し、不満を蓄積している。
「アラブの春」が各国で展開されたとき、シーア派の不満が表面化した。それは条件さえあればいつでも燃え上がるだけの力を備えている。
これをどう抑えるかという戦略は宗派戦略ではなく階級支配の戦略なのだ。
ここを踏まえて、各国の状況を見ていく必要がある。
3.サウジ対カタールの対立図式
湾岸諸国の政治的立場はサウジ対カタールの対立図式で表される。
カタールは首長国である。UAEが首長国連邦であるのに対し単独で国家を形成している。
前首長のハマドは基本的にサウジとの意見の違いはなかった。しかし現首長のタミームは、「アラブの春」において反政府側の主張を基本的に支持した。さらにエジプトのイスラム同胞団と交流し、ガザのハマスを支援してきた。
これに対しサウジを支持するのはUAEとバーレーンである。クエートとオマーンは、基本的にはサウジに近い立場ではあるが、対立の回避を優先する立場から調停に動いている。
アラブ域外国であるイランとトルコはカタールを支援するというよりは、サウジのアラブ分裂行動に批判を強めている。
とりあえず第1報。
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