正月を挟んで、グダグダとした日が続いている。

生活が落ち着かないせいもあって何かをまとめてやろうという気が起きない。

テレビの映画ばかり見ている。

A.「君の名は」

恥ずかしくて見に行けなかった「君の名は」が正月ということでテレビ初登場だ。

良い映画だった。しかしあまり記憶に残らないのはなぜだろう。作者の感じるリアリティと私の感じるリアリティのあいだに、かなりのギャップが出来上がってしまっている。

だからヒロインの苦しさとか悲しさとかがバーチャルなものとしてしてしか感じられない。これは世代問題なのだろうか? どうもそれだけではないように思えるが。

B.湯を沸かすほどの熱い愛

お風呂屋の映画の話は、このあいだしたよね。あの女優さんは良かったね。ビデオで取っておいて、ティッシュを用意して、夜中に一人で観た。

1.かなりカットしている。テレビ初登場というからには「ノーカット」でやってほしかった。2時間足らずの経過を伏線、伏線で積み上げていって、それで見せるのが映画だから、映画館で見た身には思い出がえぐられる思いだ。

2.うちの三菱のテレビは、内蔵ハードに絵を落として見るようになっているのだが、素で見るのとでは随分画質が変わってしまう。あっ、思い出した、宮沢りえちゃんだった! こんなにどぎつい絵でなく、普通に映してほしい。40歳の女性の肌が変にリアルだ。全然可愛くない。

ということで、「見なきゃよかった」篇。

それにもかかわらず、「君の名は」よりは1ランク上の映画だと、改めて思う。

C.「麦秋」

次はなんと言って良いのかわからない作品。晩春も東京物語もすでに見ているか、縁のない映画であった。

この映画は、それよりは遥かに食いつきが良い。外周りがしっかりと書き込まれているから、その分良く分かる。とくに「北鎌倉」という場所が昭和26年にどういう場所だったのかがしみじみと分かる。

もう一つは原節子がとてもきれいにチャーミングに描かれているから、小津映画がどうのこうのは関係なしにポカーンと原節子の顔だけ見ていて時間が過ぎていく。

とにかく登場人物がやたらに多いから、誰が誰とどういう関係なのかがわからないままに映画が終わってしまう。

あとで考えてみると、この映画には二人の謎の人物が登場する。

一人は淡島千景で、原節子の「お友達」として登場するのだが、全く無意味な登場人物なのである。

筋書きとしても全く無意味だのだが、それ以上に映画のキャラとして原節子とタイを張ること自体が無意味なのだ。

淡島千景という人は、銀幕界の歴史を飾るようなとてもきれいな人で、夫婦善哉などの演技は絶品である。

しかし原節子と並ばせたら可哀想だ。とくにこの映画の原節子は驚異的に美しい。これでは淡島千景はサラしものだ。

二人が裸足で鎌倉海岸の波打ち際を走るシーンは、当時としては“劣情を刺激した”に違いない。しかしこの映画の必然性から言えば原節子が一人で走れば良いのであって、淡島千景を一緒に走らせる必要はサラサラない。残酷だ。

ちょっと余談。

昭和26年という世相を知らない人が、彼女たちの暮らしをさも同情できるかのように書いているが、冗談ではない。それは雲の上の、サブ貴族層の、GHQに近い人々の生活であって、想像もできないような暮らしであって、したがって同情などしようもないのである。

私の母親は多分東京大好き人間だった。大正8年生まれだから原節子よりちょっと若いのかな。静岡にも文化はあったが、東京には東京にしかない文化があった。たとえ戦争で荒れ果てたとしても、そうなのだ。

よくリテラシーという言葉を使う。東京にある文化リテラシーは眩しいものだけれども、静岡のような田舎で暮らしていて、東京にはもう一つ上の文化があるというのを知っているだけでも、一つのリテラシーなのだ。ほとんどの人はそんなことなど知らずに一生を終えていた。

母親は私をダシにして東京に出かけた。静岡から鈍行列車で6,7時間だったろうか。私は駅の名前が全部言えた。私は胎内の時から染まった東京グルイだった。

大船の駅で、私の目はきらめいた。そこには湘南電車とは違うクリーム色と青のツートーンカラーの電車が並んでいた。それほど鮮やかではなかったが、そこにはお金とステータスの臭がした。

話が長くなった。

わたしたち田舎者、すなわち99%の日本人にとって小津映画は決して庶民感情を細やかに描き出したものではなかった。「雲上人でも我々と同じような悩みを持っていたりするんだなぁ」とダマしこむためのメディア・ツールでしかなかった。

そう思って小津映画を見たら良い。多少の楽しさも湧こうというものだ。

D.DESTINY 鎌倉ものがたり

本日映画館で見てきた。できたての映画らしい。マップ絵なのかCGなのか知らないが、黄泉の世界の描写は立派なもの。

ただ、「千と千尋」の向こうを張ったもののようだが、レベルが一段違う。映画の筋そのものも「3丁目の夕日」レベルで、インスピレーションには乏しい。

そこそこ楽しめる映画であって、家族揃っての映画見物にはきわめて良いと思う。