ニューズウィークというアメリカの雑誌があって、タイムスよりは多少マシだが、決して親ベネズエラでも進歩的でもない雑誌だ。

しかし、日本の某進歩紙よりははるかに筋の通った議論を展開している。ちょっと紹介しておこう。
8月6日の記事で、某進歩紙がこう表現した時期に書かれている。
マドゥロ大統領が8月に発足させた制憲議会は、野党主導の国会の立法権を剥奪。大統領は事実上、全権掌握を宣言し、野党リーダーの迫害や与党内の政敵の排除を続けています。
この文章を念頭に置いて読んで下さい。

現在の経済危機の原因は?
単純な答えを言うなら、チャベスとマドゥロ両政権の浪費だ。行政に抑制と均衡の仕組みが存在しない。
しかしこうした問題点は、全て、民主主義時代(1960~2000年)のベネズエラにも存在していた。
チャベス以前にも存在したこうした問題点が、経済危機の結果とあいまって、二大政党制を崩壊させた。
それはなぜ起きたか。私に言わせれば、二大政党が貧困層のために何もしなかったからだ。二大政党制は非常に腐敗していた。予算もないのにカネを使い、多くの問題を引き起こした。
インフレの原因は?
今の政府が紙幣を乱発したからだ。それでインフレが発生した。今年のインフレ率は720%に達すると予測されている。
チャベスは正当な選挙で勝利するというプロセスなしに行動したことはない。新憲法を制定した際には、国民投票で圧倒的な支持を取り付けた。そして憲法を拠り所として政治を進めてきた。
今の政府はそういうプロセスを軽視している。それは確かだ。
しかしチャベス以前の政府はそんなプロセスなど無視した。軽視ではなく無視だ。
内戦の危険は?
ベネズエラに内戦の恐れがあるのは銃所有率が高いからでもある。しかし問題はそういうレベルではない。そこには全く異なる主張がぶつかり合っているからだ。
反対派には二つある。
ひとつは「二大政党制」の古き良き時代の復活、市場経済制度の完全な再現をめざし、政府への徹底抗戦を唱える人々だ。彼らとチャベス派のあいだに妥協の余地はない。だから彼らは強硬派を形成する。
もうひとつは、憲法や制度の枠組みの中で解決策を探ろうと主張する穏健派の人々だ。
問題は、強硬派がアメリカとより強く結び付き、そのことによって強い影響力を保持していることだ。
彼らは「社会主義vs資本主義」という構図ですべてを割り切ろうとしている。彼らは古いイデオロギーにしがみついている。
アメリカがとるべき態度
まずアメリカは一方的な行動を避けるべきだ。アメリカが政府を倒すために介入したと、ベネズエラ国民に思われてはならない。
ベネズエラ産の石油の輸入を制限することは非常に危険だ。石油以外に外貨を獲得する手段がない国に対して、その蛇口を締めてしまえば大変なことになる。食糧も医薬品もないベネズエラで、人道危機が大幅に悪化することになりかねない。
デフォールトを避けなければならない
ベネズエラの最大のリスクはドル建て債務だ。このまま行くとデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高い。これは非常に懸念すべき事態だ。デフォルトは他国にも連鎖するし中南米全体にとって好ましい事態ではない。
「つなぎ」が可能であれば、原油価格の安定にともない債務の返済は可能となる。長期的に為替体系の安定化に向けて努力が必要だ。

問題の歴史的評価、解決の基本的道筋など、評論としての最低の構成は踏まえている。進歩的な新聞であれば、せめてこのくらいの格式は踏まえてほしい。