私のホームページの「更新記録」(以前ブログ代わりに使っていた)に面白い記述があったので再掲します。リーマンショックの始まる直前のもの、この頃の世界銀行はスティグリッツの影響があるかもしれません。10年後の今も通用するということは、世の中あまり進歩していないということかもしれません。

2008.08.25
 世銀は、2000年頃からIMFと一線を画し、「貧困削減志向の成長」(Pro―Poor Growth)という考えを打ち出すようになりました。世銀によれば、「途上国の成長過程で、トリックル・ダウン(trickle-down)理論が実現されないという事実が明らかになった」ためだとされます。(かといって世銀がにわかに善人になったというわけでもなさそうですが)

 レーガノミックスに代表されるネオリベラリズム理論は、トリックル・ダウンのセオリーをこそ錦の御旗にしていたのに、事実はその逆になってしまいました。現実には、途上国における経済成長は、貧困層の生活改善に対してほとんどプラスの影響を与えなかったばかりか、場合によってはマイナスの影響を与えてきました。これはどうしてなのでしょうか。

 そこから得られる結論は、「たしかに経済成長は必要であるが、どんな経済成長でも貧困削減に有効であるわけではない」ということです。経済成長のパターンには、貧困層に対して有益なものとそうでないものがあるということです。したがって計画立案者は、その内容を分析したうえで、「貧困削減志向の成長」戦略を定立しなければなりません。

 いずれにしても、ネオリベラリズム路線は「貧困削減志向の成長」の戦略とはなりえません。このことはいまや疑問の余地なく明らかとなっています。

 しかし、そもそもネオリベラリズム路線の前提であるトリックル・ダウンの仮説は正しかったのしょうか。むしろ、ネオリベラリズムのオーセンティックな適用により、トリックル・ダウンなどというものは存在しないことが証明された結果になったのではないのでしょうか。