脳神経の研究史
紀元前4世紀から21世紀まで、脳研究2500年の歴史を辿る
というファイルを中心に、いくつかのデータを寄せ集めて、とりあえず作成してみた。
自分としては不満が残っており、いずれ増補していきたいと思っている。

BC1700 古代エジプトのパピルスに「脳が知覚や運動機能などと一定の関係を持つ」との記載。(エドウィン・スミス・パピルス)
papirus

BC400頃 ヒポクラテス、『神聖病(=てんかん)』の原因が脳にあると記載。呼吸によって取り入れられる精気をこころの担い手と考える。
脳によって、そして脳だけに、快楽、喜び、笑い、戯れが生まれ、同時に、悲しみ、痛み、憂いも生まれる。
BC387 プラトンは、叡智の心は頭の中にあるとして、脳は精神作用の源であると述べた。これに対しアリストテレスは、思考と感覚を司る器官は心臓であり、脳は冷却器にすぎないとする。
BC300頃 古代ギリシャの解剖学者ヘロフィロス、脳と脊髄に神経が集中していることや、4つの脳室が4つあることを発見。第4脳室に心の座があると考えた。
BC170頃 ガレノス、ヒトの脳を解剖。流体に満たされた脳室を発見。3種類の流体(霊気)がヒトの行動を制御しているとする。また動物の解剖から、大脳が感覚を受容し小脳が筋肉を制御していると推測。
AD5c~ キリスト教 人体の解剖を禁止。医学の発達が止まる。ガレノスの解剖学が1千年にわたり金科玉条となる。
1500頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ、脳の解剖図を描く。ワックスを注入して脳の鋳型を作ったといわれる。ダ・ヴィンチの人体観そのものはガレノスの学説を脱却せず。
1543年 ヴェサリウス、「ファブリカ」(人体構造論)を出版する。脳室の位置と形を正すなどガノレスの約200ヶ所の誤謬を修正。
17c デカルトが「心身二元論」を発表。ヒトの体は機械であると考え、松果腺を精神の世界と身体が繋がる場所とした。
18c ウィリスとレン、神経機能が血流に依存することを示す。
18c末 フランツ・ガル、『骨相学』を唱える。大脳の各部がそれぞれ特定の機能を有しており、頭の形を見れば頭脳の特徴が分かると主張。脳の機能局在論のきっかけとなる。
1848 フィネアス・ゲージのケース。事故による前頭前野を損傷。事故後、性格が一変し抑制が効かなくなる。このことから、前頭葉が情動の抑制や常識的な判断と関係していることが知られる。
1861 ブローカ、左前頭前野後半の損傷で運動性失語が起こることを発見。
ダーウィン、人間の情動には動物の名残があると主張。ロマネス、動物行動を観察する中で比較心理学を樹立。
1870 ドイツのフリッチュら、サルの大脳皮質の一部に電気刺激を与え、筋肉を動かす部位を同定。
1873 イタリアのカミロ・ゴルジ、硝酸銀を用いて細胞を染色。細胞どうしの境界を明確に観察。神経網状説を唱える。
スペインのカハールは、神経が直接つながっていないことを確認。神経細胞の情報の流れには入力と出力があるとするニューロン説を唱える。脳細胞は動物種によらず類似していることを指摘
1874 ウェルニッケ、発話はできるが相手の言葉が理解できないケースを報告。患者の側頭葉に障害があったことを確認。
1875 イギリスのリチャード・カートン、神経細胞の電位を発見。
1878 イギリスのデーヴィッド・フェリエ、サルの脳の各所に電気刺激を与え脳地図を作成。
1886 フロイト、精神分析を提唱。フロイドには多くの異論が現れた。アドラーは性欲より劣等感や優越欲を重視、ユングはリビドーを性欲を超えた生命エネルギーとする。
1902 パブロフ、条件反射のセオリーを提起。ジョン・ワトソンは刺激と反応の観点から行動主義を提唱。
1906 アルツハイマー病が発見される。
1906 ゴルジとカハールがノーベル賞を共同受賞。
1909 ブロードマン、層状構造の違いにもとづいてヒトの大脳皮質を52の領野に区分(ただし9つの欠番がある)
1924 ハンス・ベルガー、脳電位の存在を確認。
1932 電子顕微鏡の開発。カハールのニューロン説が確認される。また神経細胞が細胞体と軸索、樹状突起より形成されることも確認。
1934 ロボトミー(前頭葉白質切除)手術の普及。50年ころにはてんかんに対する脳梁切断術。これにより脳機能が詳しく解明される(副作用として)。
50年代 クロルプロマジンが臨床に導入される。少し遅れて三環系抗うつ剤も使用開始。
1952 カナダのペンフィールド、ホムンクルスを作成。
ホムンクルス
1953 海馬摘出術を受けた患者で、記憶能力が喪失することが判明。
1960 ポール・マクリーン、大脳辺縁系を提唱。三位一体説を唱える。
1963 神経幹細胞が発見される。ここから神経細胞とグリア細胞が分化。
1970 ハンズフィールドら、X線CTを開発。
1975 ドパミン遮断薬による統合失調の治療が始まる。
1980 PETの臨床応用が始まる。各種行為と脳の活性化部位について知見が集積。
1982 アルツハイマーの病因としてβアミロイドが特定される。
1983 鳥成体の大脳、哺乳類の海馬などにおける神経の新生が発見される。
1990 MRIが開発される。
1992 fMRI(機能的MRI)により各種行為時の脳局所血流変化を非侵襲的に調べることが可能になる。
1993 光トポグラフィーの開発。小型の装置での測定が可能となる。
2006 iPS細胞を使った神経細胞の再生の試みが始まる。