聴覚の発達・進化

勉強を始めるにあたっての問題意識

もともとは振動覚であろうが、嗅覚が味覚から分離したように聴覚も振動覚と分離し特化した。
しかし嗅覚に比べると、聴覚ははるかに複雑である。
我々は身近に録音・再生装置を持っているから、それとの比較で聴覚を考えてみよう。基本は①マイクで音を拾い、②これを電気信号に変え、③さらにそれを機械的エネルギーに変換し、④それを記憶媒体に刻み込む。これがレコードである。再生はこの逆の過程をとる。
オーディオの性能(スペック)は①Fレンジ、②Dレンジ、③時間分解能、④S/N比で示される。まずはこのハード面での進化を見なければならない。
しかしそれだけではない。音を聞く(脳の中に音像を展開する)という能力の他に、音をつながりとして理解する能力、それを信号として翻訳する能力も必要とされるからである。さらに受容→応答という循環の中にインテグレートする能力も問われるであろう。ついでながら音のつながりを音楽として主観化する能力も必要だ。
聴覚はいわば振動覚から聴覚(ハード)、そして意味付け(OS)というホップ・ステップ・ジャンプのバージョンアップを達成してきたのであろうから、3脳型モジュールを基礎に、積み上げ型の理解を心がけようと思う。

最初は下記の講演から
岩堀修明 特別講演「聴覚器がたどってきた道
Otol Jpn 23 ( 1) : 51- 54, 2013

原索動物(ヤツメウナギ) 内耳に相当して半規管(三半規管に至らない)が出現。側線系の特殊化したものとされる。
魚類 側線系が発達し振動覚が強化される。三半規管が完成するとともに、内耳の耳石器を構成する有毛細胞の中に、振動に対して反応する細胞が分化。次第に周波数の高い振動にも対応するようになる。耳石器(ラゲナ、球形嚢)が魚類の聴覚器に進化する。嗅覚とは異なり聴覚(の原型)はすでに魚類に存在していたということになる。最初は三半規管の間借り人だったわけだ。
水の密度は空気の1千倍あり、音波のエネルギーも強いため、ゲルマニウムラジオでも十分対応可能だった。また高周波の音は、どうせ吸収されてしまうので感度は低くても構わなかった。
魚の耳
約3億5千万年前 両棲類に始まる陸棲動物が誕生する。聴覚器につながる伝音機構(中耳・鼓膜・耳小骨)が形成される。最初の耳小骨はアブミ骨のみ。内耳にはコルチ器を備えた蝸牛管が分化する。
大仕掛けな改造が施され、これによりエネルギーの小さい空気の振動、高周波の振動を受容することが可能となった。耳小骨は他所の家からアタックしてきたらしい。とられたほうがどうなったか詳細に解説されているが省略。
ほかに大事なことは、「声」を獲得したことだ。聴覚は「声」とあわせコミュニケーションの手段となった。

爬虫類 鼓膜の外側にくぼみをつくって、鼓膜に音波が集まるようにする(外耳道)。これは哺乳類にも受け継がれている。

哺乳類 外耳道の外に耳殻(耳介)ができ集音機能が強化される。アブミ骨の他にキヌタ骨とツチ骨が形成され、3点セットとなる。これもアタックしてきたようだ。蝸牛の有毛細胞の可聴域は100~1万ヘルツに拡大。
耳小骨