神川さんの本で、ひとつ興味ある記載がある。

言語…まずは持って聴覚言語だが、その音響的受容と言語化は利き腕の反対側の側頭葉後半(角回)で行われる。

以下、面倒なので「左脳」と呼ぶ。

これがウェルニッケ(聴覚言語野)だが、「それではその反対側、つまり右脳の側頭葉後半領域は何をしているのか」、ということである。

1.右脳に聴覚言語野は再建できないのか

もちろん耳は両方にあるのだから、それに対応する聴覚野も存在する。これは破壊実験で確認されている。

だからおそらくその先にはウェルニッケとして働ける潜在領域が広がっているはずである。

だから、何かの理由でウェルニッケが機能しなくなったとき、右利きの人が左利きになれば、ウェルニッケ失語は改善するのではないか、というのが素人考えである。

2.右脳の聴覚言語野→は遊んでいるのか

これについては、神川さんがケースを紹介してくれていて、大変面白い。(本人にとっては面白いどころの話ではないのだが)

左脳の角回付近はいろんな機能がかたまっているが、大きく言うと

① 体性感覚(ペンフィールドの絵でおなじみ)

② 聴覚(ウェルニッケ言語野につながる)

③ 視覚(二次情報化された)

の3つだ。

この内特殊なのが視覚で、ここに来る映像は網膜から直接投影されたものではない。これは聴覚との大きな違いだ。

おそらく右脳がダメージを受けても左が健在なら聴覚言語はほとんど影響を受けないだろう。

しかし視覚はそうは行かない。たんに立体視ができなくなるだけではすまないだろう。“Where” 認識が効かなくなるだけではなく、いわゆる動態視力的な認識能力が重大な影響を受けるはずだ。

3.具体的なケース

左の角回がやられると失行・失認が現れる。いわゆるゲルストマン徴候である。

右の角回がやられた場合は、奇妙な失行・失認が現れる。これは半側性空間失認と呼ばれる。

左側だけの失行・失認である。ものを描くと、左半分が空白のまま残される。体の左半分を無視してそれが存在しないように振る舞う。

しかし患者の視野には異常はなく、半盲ではないのである。

これをもって、神川さんは下記の如く結論する。

空間の認識に関しては視路に接した角回に中枢があり、右脳半球が優位と考えると説明がつきます。

そうだろうか?

私は、両方に視覚関連認識の中枢があり、両者の共同で空間認識が存在しているのではないかとおもう。

つまり言語中枢に関しては明らかに優位・劣位はあるが、空間認識については優劣はないのではないかと思われるのである。下の図で言えば、左脳の言語領と書いてある部分は「言語+空間の見当識」領なのだ。

kakkai

もう一つ、頭頂葉で構成される画像はたんなる空間認識ではないということである。それは画像ではなく映像であり、“時空間認識”のためのイメージなのである。

視覚には“What”系視覚と“Where”系視覚がある。この内“What”系視覚には重大な支障は出ない、視神経→膝上体→視放射が直接侵されているわけではないからだ。

しかし“Where”系視覚、とりわけ時間軸を伴う動的視覚には重大な影響が出る。ここに特徴があるのではないか。