ウィキの解説を元ネタとし、最近の知見を加えてある。

1868 メタンガスが微生物の働きにより発生することが確認される。

1922 高度好塩菌が分離される。

1936 嫌気性培養の技術が発達し、メタン菌が発見される。分離は1947年まで下る。

1962 高度好塩菌の細胞膜が真正細菌とは異なり、エーテル型脂質で構成されていることが分かる。

1970 好熱好酸菌が発見される。細胞壁はS層単独で構成されるが、熱に対して極めて安定。

1970 好熱好酸菌の細胞膜が好塩菌と同じくエーテル型脂質で構成されていることが明らかになる。後に古細菌の特徴として注目され、古細菌の定義となる

1976 カール・ウーズ(Woese)ら、16S rRNA配列を用いて生物の分類を開始。16S rRNAは細胞中に大量に存在するため、PCRが開発されていない当時でも配列の比較が可能だった。

1977 メタン菌、好熱菌(45°C以上で活動)が高度好塩菌と同じエーテル脂質の細胞膜を持つことが確認される(Makulaら)。これら三種は16S rRNA配列も近似していることがわかった。

1977年 ウーズら、三種の細菌を古細菌“Archaebacteria”という概念で括り、原核生物が古細菌および真正細菌からなると提唱する。

それ以前は古細菌の概念はなく、それぞれが真正細菌の特殊系として括られていた。

1982 110℃で増殖する古細菌(超好熱菌)が、海底の熱水噴出口で発見される。(今日では古細菌以外にも超好熱性を示す生物が確認されている)

1984 レイクら、古細菌の1系統であるエオサイト(=クレン古細菌)が真核生物の祖先となったと提唱。エオサイト説と呼ばれる。(Lake の系統樹そのものはかなりポレミックである)

1986 真性細菌、古細菌のいずれにおいても、古いものほど好熱菌が多いことが指摘される。

1989 遺伝子解析により、古細菌が真正細菌よりも真核生物に近いことが報告される。ただし困ったことに、細胞膜は真核生物は真正細菌と同様エステル系細胞膜である。

1990 カール・ウーズら、3ドメイン系統樹を作成。原核生物と真核生物の分岐よりも以前に、古細菌と真正細菌の分岐が起きたとする。

ウーズはLUCAについては否定的で、遺伝的仕組みが成立していない複数の生物が先行したとする。(プロゲノート説)
系統樹
1993 好熱性古細菌も真正細菌と同じ環状DNAを有することが発見される。ここから環状ゲノムを有する共通祖先の存在が提唱される(コモノート説)

1996 超好熱性メタン菌の全ゲノムが解読される。遺伝子の半数以上が古細菌独自のものであった。

1996 古細菌のタンパク合成経路が明らかになる。DNA→リボゾーム機構は、真核生物のそれの祖先型とみられる。

2009 古細菌がTCA回路を持つことが明らかになる。ミトコンドリアではなく細胞膜付近のコンポーネントで行われる。解糖系はEDもしくはEM経路に類似。

2014 古細菌の代謝機能関連遺伝子のいくつかが、細菌からの水平遺伝子獲得によることが明らかになる。

2015 エオサイト仮説を補強するロキ古細菌群が発見される。「ロキ」は北極海の深さ3千メートルの熱水噴出口の名前。遺伝子的には、これまでの候補に比べて真核生物にかなり近いという。

系統樹2

2015 新種の古細菌による脳脊髄炎の集団発生が報告される(Sakiyama)。

2017 ロキよりさらに真核生物に近縁とされるアスガード古細菌群が報告される。古細菌は新種が続々と発見されており、エオサイト候補もさらに更新されていく可能性がある。

* やってみて感じたのだが、LUCAの話は当分問題になりそうもない。LUCAの前の不完全な生命体にとってのゴールでしかない。
ミトコンドリア・イブのようなもので、「きっとそんなのがいたんだろうなぁ」程度の話にしかならない。そのほとんどは古細菌の研究で明らかになってしまうだろう。
古細菌と真核生物を結ぶ線はほぼ見えてきた。これはこれで非常に面白い。
しかしそれよりも肝心なのは、古細菌がすでに持っているDNA、リボゾーム、細胞膜、TCA・解糖系といったコンポーネントがいかに形成されて、いかに一体化していったかという問題であり、それらはLUCA以前の問題である。RNAワールド(真偽はともかく)とLUCAを結ぶ線は限りなく不透明である。