しばらく読みかけにしていた杉谷さんの本を、最後まで読み切った。
読後感はかなり爽快である。
本の後半は化石掘りの体験記である。
最初の、わずか一週間の貧乏オーストラリア発掘旅行で、宝物の大型微化石を見つけてしまったこと、それを世に出すまでのはかりしれぬ苦労。次々に追い越されていく焦り。
宝物探しみたいな研究は本当の学問じゃないとかいう陰口、エトセトラ。
「こんなものを見つけてしまったために、一生を棒に振ってしまった」と言えなくもない人生。
老眼になるほどに顕微鏡を覗き続けて達した現在の境地だということが、実感を持って迫ってくる。
その中で勉強になったのが二つ、
一つは生物化石の確からしさの二つの条件、年代的な確からしさと生物的な確からしさだ。それぞれに何項目もあって厳しく条件付けられている。この「確からしさの条件」は長年の論争の中で積み上げられてきたものだけに、ほかの分野でも十分応用の効くものだと思う。ただ絶望的なまでに煩雑で、とても憶える気にはなれない。一応そういうものがあるということだけは覚えておこう。
二つ目は、そういう過程を経てここ数年のあいだに、それらが生物化石であることがほぼ確定されたということだ。
これは炭素同位元素化石ではなく、しっかりと胞体でもって確認された細胞である。大型微化石として確認されたレンズ型の細胞は、杉谷さんによれば34億年前の南アフリカ、そして30億年前のオーストラリアのものである。その後者に杉谷さんの発見した微化石も関連している。
これで私としても、安んじて年表に書き込むことができる。
もちろん炭素同位元素化石はさらに歴史を遡るであろう。ただしそれは「今はまだ34億年をはるかに遡ること数億年」と言うかたちでしか書けない。