民進党代表選と野党共闘の行方

9月1日に行われた民進党の代表選挙は、野党共闘の今後を占う上で、興味深いものであった。

しかし、一般メディア上ではこの問題に触れたものはほとんどない。わずかな手がかりをたぐりつつ、野党共闘の見通しについて探ってみたい。

例によって時刻表的に経過を追ってみたい。

1.都議選敗北と仙台の勝利

まずは7月都議会選挙の前後から、

7月2日に都議選が闘われ、小池都知事の与党として結成された「都民ファーストの会」が圧勝した。

まぁこれはいっときのブームみたいなもので、次の都議会まで持つかどうかも怪しい。

これを別とすれば、最大の特徴は自民党の大敗である。色々重なって最悪の状況で迎えた選挙だったから仕方ないにしても、公明党の支援を失った自民党がいかに脆いかが暴露された。

第二の特徴は共産党がブームに埋没せずに、既存陣地を守り、わずかながらも前進したことである。これまでは新党ブームが起きるたびに、その煽りをもっとも受けたのが共産党だった。それを考えると今回の選挙は「共産党ミニブーム」選挙だったと言っていいかもしれない。

ただ、僅差での当選がかなりあることから、これからもこのようにうまくいくとは限らない。

第三の特徴は民進党の惨敗である。これは連合の態度が大いに関係している。連合は民進党を脱走した連中をふくめ、小池新党に肩入れした。彼らは民進党の敗北の代わりに野党共闘派執行部の追い落としを狙った。そして見事に成功した。

「やはり連合なしには民進党は生きていけない」と言うことを、骨身に感じさせた。これによって野党共闘の発展にブレーキをかけようとした。

しかし市民はこれとは逆の反応を示した。都議選の直後に行われた仙台市長選挙では野党共闘の候補(民進党員)が現職市長を破ったのである。

2.股裂き状況と蓮坊体制の崩壊

こうして民進党は完全な股裂き状況に陥った。党そのものの明日を考えれば、野党共闘路線を走るしかない。これはまともな党員であれば誰が考えても分かる。

しかし、最大の支持母体である連合は、共産党をふくむ野党共闘は許せない。そのために、あえて民進党を支持せず自公連合やブーム政党に相乗りすることもいとわない。

こういう状況の中で進退窮まった蓮坊体制は崩壊していく。

7月27日、蓮舫が「党代表を辞職する」と発表した。「二重国籍問題」などという言いがかり的なキャンペーンも、やる気を失わせるには十分だったかもしれない。しかし執行部の取り続けた野党共闘推進姿勢が、強引に押しつぶされたと見るのがもっとも真相をついているのではないだろうか。

さらに連合は揺さぶりをかける。8月8日に 細野豪志が党代表代行を辞任、離党した。

共産党抜きの政界再編をめざすという。おそらくは小池新党や、場合によっては維新まで巻き込む野党連合の形成だ。

しかしこのような政界再編は、民進党の運命そのものを危うくする。かつて連合に見捨てられた社民党や自由党が辿った運命をみずからもたどることになる。

3.右派代表の前原が登場

直ちに次期代表を争うレースが開始れた。当初から前原対枝野の対決になることは明らかだった。

8月17日、前原が突如メディアに登場した。その記者会見は衝撃的でさえあった。

民進党から支持者が離れていく最大の原因は共産党との連携にある。共産党をふくむ野党連合の方針は解消する。

そして消費税増税も実現する、憲法改正にも積極的に取り組む…と驚きの内容が連打された。さぞ連合や経団連は喜んだことであろう。

しかしこのような方針が今の政治状況に見合っているとは到底思えない。これでは民進党の自殺行為ではないのか、と誰しも呆れただろうと思う。

多分言っている本人が一番良く分かっているのではないだろうか。

わたしはこれは練りに練られた一撃ではないかと思っている。党の存続をかけて、連合に詫びを入れたのではないだろうか。このような過激な言明は一度きりで、その後は聞かれていない。

党の解党的出直しのためには強いガバナンスを必要とする。そのためには連合にも頭を下げなくてはならない。

これ以上勝手な想像をしていても仕方ないので、次に進む。

4.前原・枝野の出来レース

8月21日、党首選が告示され、前原誠司と枝野幸男の2人が立候補した。今のところこの組み合わせしか考えられない。

両者の公約は1.自己責任型の社会ではなく支え合う社会を目指す。2.社会の多様性の尊重、3.党を基軸に政権交代を目指す,ことで一致。緊縮財政、消費税増税、金融緩和について意見が分かれる。(buzzfeed

比較

両者の理念は意外に似通っている。ウラで通じ合っているとも考えられる。

両者の公約は1.自己責任型の社会ではなく支え合う社会を目指す。2.社会の多様性の尊重、3.党を基軸に政権交代を目指す,ことで一致。緊縮財政、消費税増税、金融緩和について意見が分かれる。(buzzfeed)

しかし連合との関係では水と油である。だから前原は意図的に連合よりの候補であることを押し出したのではないだろうか。

当選後は枝野と二人三脚でやるという暗黙の了解があった可能性もある。

5.小沢一郎の影

こういう剣が峰での立ち回りは前原一人でできるものではない。

前原の推薦人には旧小沢派の2人が名を連ねる。小沢氏は「前原氏が勝利すれば、野党結集を打ち出すと思う」などと発言したという。(ismedia

地方での投票率は公表されていないが、岩手県選出の民進党国会議員は「全員が前原に投票した」と公言している。

報道によれば、小沢は共産党の不破哲三と太いパイプを持ち、野党共闘のフィクサーの役割を果たしている。

新潟県知事選挙での自由党、森議員の差配はみごとなものであった。民進党抜きで見切り発車した上で、事実上の野党共闘にこぎつけた。誰もその功績が一人、森議員のものだとは思わないだろう。

不破哲三は長年の国会議員経験を持ち、創共協定にも関わるなど、局面では博打も必要なことは分かっている。

前原はこれに乗った可能性がある。表の発言とウラでは意味が違うかもしれないと言われている。

前原の真意は党を割らないことであり、連合とのパイプを残しつつ、議席を確保することである。それは枝野も理解している。

どこまで押しても共産党が黙っているかを推し量りつつ、反共路線を押し出すことで右派の引き止めを図る。

これが前原の胸算用ではなかったろうか。

6.選挙の結果をどうみるか

9月1日国会議員の投票が行われ、前日に締め切った党員の投票と合わせて、前原の当選が決まった。

国会議員 前原 83票 枝野51票

公認予定者 前原 84票 枝野42票

合計 前原250pt  枝野144pt

全てを合計した結果、前原氏502pt、枝野氏332pt

ということで、枝野の予想以上の健闘という側面はあったものの、ほぼおさまり型の結果となった。枝野の顔も立った。

メディアの評価では、「枝野氏の予想外の善戦」で共闘路線への支持が根強いことが示される。「左派系議員を切る純化路線が取りにくくなった」とされる。

これはある意味で、狙い目でもある。

しかし、代表就任に当たっての前原の記者会見はそんな平穏なものではなかった。「厳しい党運営になると思ったのは、無効票の多さだ」と語っている。

国会議員8人は前原支持に回らず、あえて無効票を投じた。これは、共産党との共闘などに不満を持ち、すでに党を離れた細野らと気脈を通じる「離党予備軍」とされる。

連合の神津里季生会長は「目指す国家像が全く違う共産党と選挙で手を組むことはあり得ない」とあらためて釘を差した。

前原の右翼丸出しのポーズは、党内右派からかなり見透かされていると見なければならない。

ここに前原の最大の危機感がある。

7.10月22日までの動き

前原に残された時間・ハネムーン・ピリオドはきわめて限られている。連合がとりあえず差し出口を控えるのは10月22日のトリプル補選までであろう。

選挙次第では、連合は民進党から手を引く可能性もある。流石に維新とは行かなくても小池新党に合流する可能性は高い。そうなれば民進党の社民党・自由党化は避けられない。

各紙の世論調査で前原新代表に「期待しない」との回答は51.2パーセント(共同)で、「期待する」の40.3パーセントをかなり上回った。(連坊就任時は56.9%が期待を示す)

同党の政党支持率も毎日の調査で5%と低迷している。

どうしても議席がほしいとなれば、逆説的に野党共闘への傾斜は不可避である。

9月3日、次期国対委員長予定の松野頼久衆院議員は、「与党との一騎打ちに持ち込まなければ勝てない」と述べ、共産党を含めた野党共闘を維持すべきだとの考えを示した。

松野氏は「(野党共闘を)見直すとは言っても、やらないとは言っていない」と強調。

周囲の状況も慌ただしい。

代表選の翌日、小池都知事が側近の若狭勝衆院議員と会談し、「小池新党」を立ち上げる方針を確認した。

小池氏は「しがらみのない政治であるとか、大改革とか遂げられるような状況を国政でも作っていきたい」と意欲を示した。

山尾議員をめぐる報道も連日続いている。山尾は「保育園落ちた。日本死ね」の質問で一躍有名になったが、もともと経歴は芳しくない。

昨年、ガソリン代支出での不適切な処理を指摘され、「ガソリーヌ」というあだ名で呼ばれていた。

今年の仙台市長選では野党共闘候補を応援し、2週間後の横浜市長選では自公候補を推すという無節操ぶりである。

権力の標的とされ、民進党に残っても目がないと見るや、さっと逃げ出す足の速さは一流である。

今回の不倫疑惑は例によって公安と週刊文春の二人三脚であろうが、権力側が民進党の動向を野党共闘の成否の勘所と見て、攻撃に回ったことの証であろう。

いずれにしても10月のトリプル選挙だ。民進党がどうなろうとそれは民進党の問題だ。しかし権力が野党共闘を阻止するために民進党に的を絞ろうとしているなら、この選挙は天下分け目の戦いになるかもしれない。

追補

山崎元さんはわりと好きなエコノミストである。その山崎さんがダイアモンド・オンラインに面白い記事を載せていた。

前原・民進党は何をすべきだろうか。簡単にまとめるなら、以下の7点だ。

(1)安倍首相への批判に争点を絞る

(2)憲法と対共産党の議論は棚上げ

(3)選挙協力は実を取る

(4)「再分配政策」重視を打ち出す

(5)金融緩和継続と消費税率引き上げ延期を確約

(6)フレッシュな顔を前面に出す

(7)仲間割れしない!

リアルで適確だと思う。ただし民進党にとってはよろしいが、国民にとってよいかどうかは別。