不破さんの文章が赤旗のオンライン版にないか探したが、今のところなさそうだ。やはり日刊「赤旗」を購読せよということか。

ところが、グーグル検索で、ほぼ同じ内容をもっとくわしく説明した文章が見つかった。

2014年7月10日の紙面に掲載された「理論活動教室」第2講「マルクスの読み方」(2) 追跡 マルクス「恐慌の運動論」

という記事である。

読み飛ばしていたようで、そんな記事があったことは記憶しているが、中身には憶えがない。以下、紹介していく。

草稿のなかで65年の恐慌論の転換を知ったときは「衝撃でした」と力を込めた不破さん。何回も草稿を読み返して確かめるうち、「それまでなかなか理解できなかった記述が、発見前の“前史的”部分と発見後の“本史的”部分を分けて読むと、はっきり分かり、理論的発展の裏付けになりました」と語りました。

ということで、不破さんはこれをみずからの“大発見”と自負しているようだ。

マルクスの65年以前の考え

①恐慌の根拠
資本家は、できるだけたくさん利潤を得るために労働者の賃金を抑えようとします。一方、商品の買い手としての労働者にはできるだけ大きな消費者であることを望みます――マルクスはこの矛盾に恐慌の根拠を見ました。

②恐慌の運動論

利潤率が資本主義の発展とともに低下してゆくことは、スミスやリカードウも気がついていました。

マルクスは、利潤率の低下が、「不変資本」の比率が「可変資本」に比べて大きくなることに伴う当然の現象であることを解明しました。

マルクスはこの発見を「恐慌=革命」説と結びつけ、恐慌の反復をこの法則の作用によって説明しようとしました。


マルクスの65年の大発見

マルクスの発見した運動形態は、「流通過程の短縮」と呼ばれるものです。

資本家の商品を消費者ではなく商人資本に販売すると、商品が貨幣に転化される時間が先取りされ、それによって「流通過程が短縮」され、再生産が加速・拡大されるというのです。

これによって、「架空の需要」による生産がすすみ、恐慌が準備されます。

(もう一つは信用制度です)信用制度によって商人資本 は、銀行から貨幣を借り入れて、買った商品を「売ってしまうまえに、自分の購入を繰り返すことができ」、「架空の需要」が拡大されます。

こうして、消費の制限を超えて生産が拡大し、ついには恐慌に至る(のです)

ということで、産業資本家、商人資本、銀行が三位一体となって流通過程を高速度回転させるのが恐慌の原因だということになる。

うーむ、それだけでは「世紀の大発見」と言うにはちょっと物足りないな。やはり剰余価値生産という生産様式がそれらを必然的に帰結するという論証がないと…

うろ覚えだが、大谷さんによると、たしか第3部のこの部分を書いていて、マルクスが何かに気づいたことは間違いないようだ。第3部の清書を一時中断して、第二部の該当部分(流通過程)のところにマルクスは戻っている。
第1部以来、剰余価値説を中核概念としながらこの概念が弁証法的に発展して総過程へとつながっていくはずなのに、いきなり「流通過程の短縮」という外来的な概念が混入してしまった(混入させてしまった)ために、首尾一貫性が途絶してしまう。このままでは「流通過程の短縮」は超時代的なメカニズムになってしまう。このためにマルクスは論理構築過程の再検討を迫られたのではないだろうか。
それにもかかわらず、論理の再構築に向かわせるほどに、このアイデアは強烈だったといえるのかもしれない。

ただ私としては、マルクスが “需要(欲望)の再生産” 過程を一貫して自然成長的なものとしてみていることに無理を感じる。ここが分析されないと、結局二つの命題は接ぎ木状態のままだし、最終的な価格の実現も説明できないのではないかと感じている。ケインズ的、ないし福祉経済学的な知見を資本論の論理の中に繰り入れる作業が必要ではないだろうか。