「パガニーニ弦楽四重奏団」というアンサンブルがあったようだ。恥ずかしながら、いままで知らなかった。
名前からしてちょっと怪しげだ。安売りCDの発行元が適当につけた名前かと思わせる。
それがベートーベンの四重奏曲を録音している。
聞きはじめの音からしてひどい。くぐもった音を人工的にいじって、強音はハウリングしまくりだ。
しかししばらく我慢して聞いていくと、「おやっ?」ということになる。
まずとにかく技巧がすごい。第1バイオリンがすごいのだが、他のパートがそれを支えるのではなく、逆に押し込んでくる。ジャズで言うグルーヴ感である。
歌心があって、こんな曲(失礼)でも面白く聞かせる。「ブッシュやブタペストでないと」、という人が聞いたら目をむくだろう。線香の匂いの代わりに艶っぽい香水の匂いがする。
解説文(発売元の自賛)から引用する。
1940-60年代のアメリカで活躍した名門アンサンブル団体、
1946年にベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集をリリースしたことを皮切りに、RCAVictorレーベルの下で弦楽四重奏曲の録音を数多く残した。
アンリ・テミアンカ(ベルギー生まれ)によって1946年に結成された。
ブッシュSQ、カルヴェSQ、レナーSQ、ブダペストSQといった戦前の歴史的な弦楽四重奏団と、ジュリアードSQといった戦後のアンサンブル団体のちょうど間にあたる。
団体名の由来はパガニーニが選んだ4つのストラディヴァリ(2Vn,Vla,Vc/通称パガニーニ・カルテット)に由来しています(現在、このパガニーニ・カルテットの楽器は東京クヮルテットが日本音楽財団の貸与で使用)。
芯の通った溌溂とした音色が素晴らしく、激しいパッセージにおいても揺るがぬ堅固なアンサンブルに圧倒されます。
別の情報によると、
1935年のヴィエニャフスキ国際コンクールで、ヌヴーがオイストラフを抜いて優勝した時、テミアンカは3位だったみたいです。
とのこと。
ヌヴーがオイストラフに勝った話は耳タコですが、一発勝負で勝っても、そりゃオイストラフが上でしょう、と、個人的には思っています。
まぁとにかくテミアンカがそういうレベルの人だったということ。

追補
パガニーニSQの演奏はリマスターされてCDで聞ける。You Tubeではベートーベンの1番がアップされている。音はすばらしくなっている。
135を初めて聞いたときの印象は多少薄まるが、グルーブ感の濃厚さは相変わらずである。どうしても時代的にはチャーリー・パーカーのビバップを連想してしまう。クラシックでいえばブタペストとジュリアードのあいだ、ジャズでいえばベニー・グッドマンとマイルス・デイビスのあいだである。
国際政治でいえば、終戦直後から冷戦・赤狩りが始まるまでの、世界中がワクワクしたつかの間の数年間、その遺産として受け止めたい。

追補
パガニーニSQの演奏はリマスターされてCDで聞ける。You Tubeではベートーベンの1番がアップされている。音はすばらしくなっている。
と書いたが、間違いであった。
全曲が聞ける。
ただしいつまで聞けるかは保証の限りではない。
もしブッシュSQとブタペストSQを持っているなら、どちらかを捨ててこちらに乗り換えるようお勧めする。
ついでに
著作権切れのせいか、最近スメタナSQの音源が出回るようになっている。こちらも見つけ次第ゲットするようお勧めする。「違法と知りつつダウンロードする」のでなければ違法ではない。