アベノミクスを裏切った安倍首相

アベノミクスの1本目の矢=量的緩和は「成功」したと言うべきであろう。率直に認めるべきだと思う。成功を「」付きにしたのは、日本経済の再生に成功したわけではないからである。
それではアベノミクスの何が成功したのか。そのために何がしわ寄せされたのか、の分析をしてようと思う

1.円高不況と産業空洞化、労働力の過剰流動化
アベノミクス開始時の状況は惨憺たるものであった。
リーマンショック以来、日本は不況と円高に苦しめられていた。
主要な原因は、リーマンショックに先立つ5,6年間、経済成長が企業側に取り込まれるばかりで、内需拡大に向かわなかったためである。

97年ショックから数年間については、たしかにそれなりの理由があった。バブル崩壊のあと企業は軒並み深刻な不良資産を抱えていたからである。

しかしそれは2008年の初頭で基本的には解決した。輸出は引き続き好調で、不良債権や累積債務は急速に解消された。

しかし企業は利益を還元しないまま突っ走った。労働法規は改悪され非正規就業がさらに拡大した。

そこにリーマン・ショックが襲った。企業はさらにガードを固くした。不況下の円高はさらに企業の海外逃避を加速した。

この時期には、財政出動以外に脱出口はなかった。しかし従来型の大型土木建設工事による財政出動はすでに無効となっていた。

今日につながる「出口戦略の欠如」がすでに露呈していたのである。

2.「流動性の罠」を脱出するために

残る手段は赤字国債の発行による内需の拡大しかなかった。しかしこれは財界、財務省、日銀の三位一体となった強力な抵抗の前に実現困難であった。
アベノミクスはそのかわりに金融の量的緩和という奇策に打って出た。日銀券の大量発行というインフレ政策である。
これにより一気に為替相場は、円安に振れた。

輸出企業を中心に円安利益が集中し、庶民の財産価値が大幅に目減りしそれが企業のもとに流れ込んだ。

疲弊した企業は業績を持ち直し、経済成長はプラス方向に向いた。

量的緩和自体は一つの賭けであり、財政基盤の弱体化をもたらす危険があるが、経済成長があればそれは相殺される。

だからスティグリッツも量的緩和そのものは支持したのである。しかしそれは国民に還元されない限り、最悪の結果を招く。

おそらく政策担当者は悪性インフレの出現を恐れたのであろう。だからインフレ・ターゲットを設定したのであろう。

しかしインフレどころか物価の上昇はまったく見られない。なぜか。企業が利益を還元しないからである。

もっとも企業というのはそういうものであり、そこから利益を吐き出させるのは政府の責任である。

政府が「世界一企業に優しい国」を目指すのは、アベノミクスの本来の目的に著しく反している。

持続的な経済成長まで持って行って初めてアベノミクスは成就するものである。このままの状況を放置することは、アベノミクスの成功をスポイルするだけでなく、今後の政策選択幅を著しく毀損する。

とにかくここまでやった以上は、社会保障、地方経済の復活に有効な投資を行い、有効需要を喚起する以外にないのだ。

もしそれをやらないのなら、安倍政権は一刻も早く退陣すべきであろう。

そして野党連合の政権が、第二の矢の実行を担うべきであろう。