DNAをやっているうちにわからないことが出てきた。

まず核というのが分からない。そういえば、むかし核の中に仁というのがあったと覚えているが、多分核小体のことだろう。

核膜は真核生物のときにできたのだが、できた理由はおぼろげながら分かるのだが、How が分からない。細胞膜との違い、それが真核の維持という目的にどう関わるのか。

核膜内液は細胞内液とは違うのだろうか。違うとすれば、何か出し入れの機能が働いているのだろうか。

核膜が細胞分裂の際に一時消失するというのは、多分世代帰りをするのだろうが、DNAはどうして核膜なしに生きて行けるのだろうか。

核膜もよく分からないが、実はリボゾームもよく分からない。ミトコンドリアはATP産生工場だが、他社を吸収合併したものだ。これに対してリボゾームは生え抜きのようだ。なぜか。その違いはどこから来るのだろうか。

「よく知らない」どころかまったく無知である。「何も知らないくせに大口叩くな」と言われそうなので、ちょっとかじっておく。


ウィキに「細胞核の概要」という模式図がある。まずはこれを眺めての感想。


細胞核の概要
(1) 核膜 (2) リボソーム (3) 核膜孔(4) 核小体 (5) クロマチン (6) 細胞核 (7) 小胞体(8) 核質

という説明がついている。それぞれについて知りたければリンクをたどればよいということで、まことに親切である。

例えば、ドライブしてどこかの公園に行ったとすると、大抵は入り口に公園案内図という大きな絵看板がある。それを眺めている気分だ。

ところがこの案内図、意外に不親切である

1. 核というのは丸いんじゃなくて、帆立貝のように貝柱とウロからできているものだ、と見える。

2. 絵を見たら⑥が核の境目のように見えるが、そこには「細胞核」と書かれている。そのまんまだ。

3. 紫のゾーンは何か分からないが、核であって核でない。本当の核は核膜の中にある。

4.つまり核というのは三層構造になっていて核膜で囲まれた本丸、その周囲の外丸、そして細胞内に張り出した三の丸という構造になっている。核小体は天守閣だ。

5. 核膜と言い、核膜孔と言うが、実はけっこう「ダダ漏れ」のところがある。それが三の丸=小胞体につながっている。

ということで、この案内図核膜に包まれた本丸以外の部分についての定義がはっきりしない欠点がある。

ウィキの「細胞核」の項目はみごとに私の関心事項を素通りしている。


ピッタリのサイトを見つけた。理化学研究所 今本細胞核機能研究室 の運営するものだ。和光市と言うからホンダの近くだろうか。

私たちの研究」というところを読む。

真核細胞では遺伝子機能の場「核」が、タンパク質合成の場「細胞質」から核膜によって仕切られています。

タンパク質やRNAなどの機能分子が、核膜孔複合体を介して核と細胞質の間を絶え間なく往来しています。

核—細胞質間輸送を1つのシステムとして捉えること…を目指しています。

とここまでが前置き。次が核膜の形成過程。

核膜孔複合体因子、核内膜因子、核膜前駆体小胞がクロマチンに集積します。それらは異なるクロマチン部位に局在していきます。

クロマチンと核膜は強い共依存関係にあるということだ。ところでクロマチンてなんだ。

このあと突如話は難しくなる。

importinα/βは、低分子GTPase Ranと協調してクロモキネシンKidを染色体にローディングする働きをもつ。

と言われても食いつきようがない。そもそも間期と分裂期の比較話なので、あまり興味はない。

核ー細胞質間輸送

という項目があるので、そちらに手を伸ばす。

真核生物には、核内で何らかの機能を果たす「核タンパク質」が一万種近く存在します。

これら核タンパク質は、細胞質で翻訳されたあと必要に応じて核内へ侵入します。その際、すべての核タンパク質が核膜孔を通路にしています。

「タンパク質が通過できる膜って、膜でないじゃん」と思ったら、それが罠だった。なかなかの名文家である。

細胞には、核膜孔を通過できない分子に、核膜孔を通過させる核輸送システムが備わっています。それがImportinファミリーと呼ばれる輸送運搬体群です。

ヒトでは21種類のImportinβファミリー運搬体分子が数千種類のタンパク質の核輸送を分担しています。

そしてImportinファミリーを制御して輸送の流れを作り出すのがRanというシステムです。

ということで以下は我が田に水を引くことになる。

もう一つのクロマチン分配・複製という記事はのっけから歯がたたないので省略。

ということで、細胞核を専門でやっている研究室があるということがわかったのが、最大の収穫。

ウィキの核小体の項目から

細胞核の中に存在する、分子密度の高い領域で、生体膜によって明確に区分される構造ではない。

電顕による観察では、繊維状中心部、高密度繊維状部の二層よりなり、その周辺部に顆粒部が散在する。

rRNAの転写やリボソームの構築が行われる。

と書いたあと、その過程についての説明が記載されるが、さっぱりわからない。

ここまでmRNAとtRNAは出てきたがrRNAは知らない。rDNAというのも、RNAポリメラーゼというのも聞いたことが無い。

rRNAにリボソーム蛋白質が会合して形成されたリボソームは核膜孔を経て細胞質に運ばれ翻訳装置として機能する。

という記載は衝撃的だ。いままでのリボゾーム理解がまったくの誤りだったことになる。

核小体の勉強をする前に、リボゾームの再学習が緊急に必要だ。

それにしても、こちらの概念図、さっきの公園掲示板とはまったく様相を異にする。いったいどちらを信じたら良いのか。



ウィキのリボゾームの記載は最初から脅しが入る。

リボソームは、RNAの情報からタンパク質を合成するという容易ならざる作業を正確に行うため、大きく複雑な構造体となっている。

リボソームはリボソームRNA(rRNA)とリボソームタンパク質の複合体である。えらく不細工な形をしている。

rRNA は核内で様々な修飾を受けた後、リボソームのある細胞質へと移行する。そして主として粗面小胞体上に付着してmRNAを待機する。

リボゾームはやってきたmRNAの連鎖にいろいろな場所で噛み付く。このような状態のmRNAをポリリボソームと言う。

mRNAの周りにはtRNA(運び屋RNA)が集まり、コドンの情報に応じてそれに合わせたアミノ酸をもってくるのだが、それはリボゾームが付着している部分に限局される。

リボゾームの中の暗号解読センターがmRNAのコドン情報を読み取り、それをtRNAに指令するからである。

集まってきたアミノ酸をポリペプチドの形に結合するのもリボゾームの働きとされる。

ということで、少し全体像が見えてきた。

リボゾームは細胞内小器官と言うには小さいが、それににた働きをしている。リボソームは核小体内でrRNAを核として形成される。そして核外に放出される。

それは無様な形のはだか単騎の小器官であり、タンパクがrRNAの衣の役割を果たしている。

それはリボゾームRNAとタンパクの複合体であり、次のような過程でタンパクを合成する。

① 核の近傍の粗面小胞体の表面に付着し、mRNAを待ち構える。

② mRNAがやってくると遺伝子情報部分に食らいつく

③ リボゾームRNAが情報を解読し、コドン情報にまで分解する。

④ tRNAに命令してコドンに対応したアミノ酸を収集させる。

⑤ tRNAが所定のコドンにはめ込まれると、その背中にはコドンに対応したアミノ酸が連続する。

⑥ 連続したアミノ酸のあいだにペプチド結合を行わせ、これによりタンパク質が出来上がる。

というわけで、「いままでのリボゾーム理解がまったくの誤りだった」わけではない。良かった。

ただ不足していたのは、それがミトコンドリアのような小器官ではなく、むき出しの核酸+タンパクの複合体であることだ。




それにしても、核膜の外に出てきたmRNAをたちまち見つけ、噛みつき情報を吸い取るというこの生き様は、異様の形相と相まって、細胞界のアンチヒーローと呼ぶにふさわしい。