共産党創立95周年記念講演会での不破講演が赤旗に掲載された。
相変わらずの頭脳明晰ぶりに頭が下がる。ただ冒頭の軍国少年の思い出がやや長くなり、後半、とくに綱領の話題が端折られてしまったのは残念だ。
講演内容はほぼ既出の内容だが、マルクス・エンゲルス全集の話は初耳だった。
…ソ連においてさえ、全集の刊行が最初の部分だけで中断していたときに、「マルクス・エンゲルス全集」全32冊、「資本論」をふくめると37冊になりましたが、これが世界で初めて刊行されたのであります。
…これは、多くの研究者がマルクス・エンゲルスの文献をヨーロッパ方面で収集しながら刊行したもので、科学的社会主義の研究への大きな貢献となりました。

政治反動化の構図の中では、「共産党を除く」という共産党外しの戦略を、自らの体験を踏まえて非常に重視している。
我々はこれまで社公合意、小選挙区制、二大政党制を反動化の3点セットとしてとらえていたが、「共産党を除く」路線は社公合意にとどまらず、小選挙区、二大政党制を貫く権力側の方針の底流であったと強調している。そして「共産党を除く」がまかり通った34年間を歴史的な一時期として捉えるようもとめている。
ただ「共産党外し」だけを取り上げるのは、いささか一面的な気もする。たしかにそれは「主要な側面」ではあったが、彼らにとっては、共産党を除く政党の中から「健全野党」を形成しようという展望も併せ持っていたのではないかと思う。ただその「健全野党」の枠組みはかなり右寄りにシフトされており(例えば読売vs日経みたいな感じか)、国民の常識に沿うものではなかったがゆえに、その後も軋轢を生み続けてきたのであろう。
それはさておき、不破さんは「共産党外し」という基本戦略の上に、安倍政権の特徴的な政治手法として3つを上げている。
1.候補者の指名権の最大限利用による首相の支配権強化。(これは小泉首相以来だが、安倍首相ははるかに高度なものにした)
2.国政の密室化。国政の真相を国民の目から隠す秘密主義が一気に拡大強化された。
3.内閣人事室の設置(2014年) 官庁から上級幹部の任命権を奪った。官僚機構が首相官邸の絶対的支配下におかれることになった。
不破さんは、これらの手法が一体化されて首相官邸の国会と官庁の独裁的支配に繋がったと見ている。そして官邸独裁システムの完成により、「ウルトラ右翼の潮流による国政私物化」が一段と深刻な段階に入ったと見る。
長年国会運営に関わってきた人の、重みのある発言であろう。