アレンスキーを聞いていて、びっくりした。

作品74というおそらく最後に近い番号のピアノ練習曲集だ。

全12曲ということで練習曲集としてのルーチンは踏んでいる。

物の本によると、この人は将来を嘱望されながら酒とバクチで身をもち崩し、最後は結核となり45歳でなくなったらしい。

それが1905年のことであるが、この曲集はその年に作られている。

アレンスキーの作風は保守的で、ミニ・チャイコフスキーみたいな路線を走っていた。最初から交響曲とか協奏曲で売り出した。

ピアノ独奏曲には大したものはなく、2台のピアノのための組曲が5つもある。売れ線狙いであろう。

練習曲というのはかなりピアノ弾きの証しみたいなところがある。みんな結構書いているが、この人は盛りの時期にはほとんど練習曲は書いていないし、書いても面白くもないものだ。

それが死ぬ直前になってとつぜん練習曲集を、しかも完全な形で残した。ある意味で信仰告白とも遺書ともとれる。

そんな曲がなぜかYou Tubeで聞ける。

この人はムラっ気があって、だめな曲はだめなのだが、どういうわけか、ウィキにもとりあげられないようなこの練習曲集が12曲全部素晴らしいのだ。

1番で「えっ」と驚いて、2,3,4、5と進む。6番がすごいデモーニッシュな曲で、ショパンの葬送ソナタの第3楽章みたいだ。

7番が最高で、シンプルな旋律だが和音は世紀末だ。しかし無調の世界へは踏みとどまる。最後の12番は宗教的な香りさえ漂わせる。

参考までに私の「ロシアのショパンたち」100曲にランキンしたアレンスキーの曲は以下の通り。

34 Op.15 2台のピアノの組曲から I. ロマンス

35 Op.15 2台のピアノの組曲から III. ポロネーズ

36 Op.23 2台のピアノの組曲「影」から 1.学者

37 Op.23 2台のピアノの組曲「影」から 3.道化

38 Op.23 2台のピアノ組曲「影」から 5.バレリーナ

39 Op.25 4つの小曲から No.1 即興曲

40 Op.25 4つの小曲から No.2 夢想

41 Op.28 「忘れられたリズムによる試み」から 1-ロガエード

42 Op.41 4つの練習曲から No.3 変ホ短調

43 Op.65 2台のピアノ組曲「子どもたちの組曲」から 8. ポーランド風に

44 練習曲集 Op74_6 プレスト(ニ短調)

45 練習曲集 Op74_7 アンダンティーノ(変ホ長調)

46 練習曲集 Op74_12 アレグロ・モデラート(嬰ト短調)