シアノバクテリアと葉緑体の関係

1.わからず屋の教師たち

前にも染色体とDNAとの関係について書いたのだけど、生物学屋さんというのはどうしてこうも分からず屋が多いのか不思議だ。

染色体イコールDNAと書いて平気でいる。生徒が悩んで聞いても質問には答えないでけむにまく。

染色体というのはただの入れ物にすぎないのだ。しかも細胞分裂をするときにだけ現れる引越し屋の梱包のようなものだ。

普段はDNAはぞろぞろと二本鎖のまま核内に折りたたまれている。

その昔、木原さんという遺伝学の大家がいて「染色体こそ遺伝の本質だ」と言った。DNAの存在すら知られていなかったその頃は、それで正しかったのだが、いまは過去の遺物だ。

DNAは生殖の場面での遺伝情報の伝達に留まるものではない。むしろ本態は、蛋白の生成のための情報センターと言うところにある。

旧来の「遺伝子、ジーン、ゲノム」という言葉は使っているが、いまや遺伝とは関係のない話なのだ。遺伝屋さんや染色体屋さんが出張ってくる幕はないのだ。

2.生徒は本当に悩んでいる、教師は本当に分かっていない

シアノ 質問

YAHOO知恵袋に寄せられた質問の一覧である。

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をクリックするとさらにぞろぞろと出てくる。
要するに、まともに分かるような教え方をしていないということだ。それで回答者も同じような連中だから、質問の意味がわかっていない。


3.問題の本質は何故シアノバクテリアが光合成できるようになったかだ

ここをしっかり説明すれば、他の問題はささいな、どうでも良い話になる。

じつは、シアノバクテリアは光合成を行う唯一の細菌ではないし、最初の細菌でもない。

シアノバクテリア型光合成の前に幾つかの試行例があった。名前は覚えなくてもいいが、緑色無硫黄細菌、緑色硫黄細菌、ヘリオバクテリア、紅色光合成細菌などがある。

それらの能力はいずれも弱く、酸素を発生することもなかった。なぜかというと、光合成の二つの段階(Ⅰ型複合体とⅡ型複合体)のうちどちらかひとつづつしか持っていなかったのである。

シアノバクターはこの二つをⅡ段式ロケットにして一気にエネルギー発生効率を高めたのである。同時に凄まじい量の酸素を発生し始めた。

その革新的なプラントが、シアノバクターの細胞の中に詰め込まれている。いま葉緑体の中に詰まっている諸要素でもある。

4.シアノバクターはこのプラントを自分一人で作ったのだろうか

生徒たちは、こう考えるに違いない。真核生物がシアノバクターを細胞内に住まわせたように、シアノバクターも葉緑体(クロロブラスト)を食ったに違いないと。

実はそういう説もあるのである。

たとえば、緑色硫黄細菌はⅠ型複合体のみをもっている。紅色光合成細菌はⅡ型複合体のみを持っている。

これが合体したらどうなるだろう、とおたがいに思ったとしても不思議はない。

ただ原核生物同士の合体なので、垂直統合とかM&Aとは違って、DNAの問題が絡んでくる。みずほ銀行のようになっては困るのだ。

「運転手は君だ、車掌は僕だ、後の2人は電車のお客」と折り合いをつけなければならない。

まったくの与太話なのだが、何度も失敗した末に「奇跡の大逆転」が起きて、シアノバクターが誕生し、このハイブリッドがプリウスも真っ青の大成功を収めたのでは? と想像するだけでも楽しい。

5.ドジョウが出てきてこんにちは

実証はされていないが、理論的には40億年ほど前に海底の熱水噴出孔に原始生命が誕生したと考えられている。

原始生命にとっては、この暗黒、高圧、灼熱と極低温の世界がエデンの園であったわけだ。

地表の環境が徐々に変わってくると、ソロリソロリと出エデンを図るものも出てくる。

彼らにとってはエネルギーの確保がすべてである。メタンや硫黄などをもとめてさすらう。その中で「どうせここまで来たんだ。太陽光も使おうじゃないか」という連中が現れて、光合成もやるようになる。

これが真性細菌と呼ばれるようになる。海底に残った連中は古細菌(アーキア)と呼ばれる。

地表近くでシアノバクターが大成功をおさめると、古細菌の中からも「ちょっとあちらも覗いてみようか」という連中も出てくる。それがシアノバクターの方からすれば、「ドジョウが出てきてこんにちは」の場面となる。

ドジョウはシアノバクターと遊ぶふりをして、食べてしまう。食べられたシアノバクターは「あなたのために一生懸命働きますから、どうか堪忍してください」ということで、生殺与奪の権を譲り渡して奴隷生活をおくることになる。

というのが筋書きだ。

もっとも古細菌の方から頭を下げて、婿養子に入ってもらった可能性もあるが、そんなことはどうでもいい。

6.共同生活のルール

共同生活は難しい。嫁さんと50年も暮せば身にしみて分かる。心を通わせるとか慈しみ合うなんてぇのは嘘っぱちで、かろうじて折り合いをつけながら、相手を空気のように考えられるようになるのが究極の目標だ。

殺し合わないこと(免疫学的寛容)、助け合うこと、歩調を合わせること、共通の敵に立ち向かうこと、などが思い浮かぶ。

とくに歩調を合わせることが重要だ。成長・増殖の際には1対1の対応が厳密に求められる。そうでないとシアノなしの空細胞や、シアノだらけの過密状況が生まれることになる。

だからシアノバクターは自らのDNAの中から、増殖の扉を開ける鍵(遺伝子)を真核細胞に預けることになる。増殖するための遺伝子は持っているから、真核の方から増殖を開始せよといえば増殖できるが、自分の判断で増殖することは出来ないのである。