もう一度ポイヤウンペについておさらいしておこう。と言うより、以前の記事を書いた後、ネット文献もかなり充実してきており、書き直しが必要になった。

以前の記事とは、この2つである。

そこに書かれていたのはごく簡単な紹介で、ユーカラの英雄の一人ポイヤウンベが浜益を拠点としていたということだった。

それだけならそれで済んだのだが、キタムコさんのページで、浜益には巨大が砦があって、それがポイヤウンペの城だったということ、その城が明治時代の開発で跡形なく壊されてしまった、ということを知るにおよんで俄然興味が湧いたのである。

キタムコさんによると、

この山は明治30年まではシヌタプカと呼ばれ、高さは200メートル。頂上は平地となっており、その広さは200x150メートルにおよんだそうだ。

覇者たるに相応しい城ではないか。


ということで、あらためてユーカラとポイヤウンベのお勉強。

まずはウィキペディア

ユーカラに登場する英雄。表記は、ポンヤウンペ、ポンヤンペとも記される。意味は、「小さい・本土の者」。

ポイヤウンペ伝説には2つの系統がある。一つは超能力を持つ神の一人で、分身の術を使って一度に6人の首を切り落としたと言われる。

もう一つの系統が、我々の聞きたい話しである。

① トミサンベツのシヌタプカの大きな城(チャシ)で生まれた。父は樺太方面に交易に出かけ、そこで亡くなった。このため兄と姉に育てられた。

② 「黄金のラッコ」がいて、皆が欲しがった。石狩・川尻のイシカリ彦は「退治したものには自分の妹と宝を与える」と勇者を募った。

③ 東方の人・ポンチュプカ彦、礼文島の人・レブンシチ彦、小島の人・ポンモシリ彦などがこがねのラッコに挑むがいずれもやられてしまった。

④ ポイヤウンペは苦戦の末、名刀「クツネシリカ」の力を借りて「黄金のラッコ」の退治に成功する。

⑤ 彼はそのままラッコの首をつかみ、天空へと去り、真っ直ぐにシヌタプカの城へと逃げ込んだ。

⑥ このことが原因となって大戦となり、それは繰り返された。ポイヤウンペは何度も危機に見舞われたが、そのたびにさまざまな憑神に守られて勝利した。

⑦ 最後は敵方の女性呪術者がポイヤウンペと結ばれて平和が実現する。

⑧ ポイヤウンペに味方したものは「ヤ・ウン・クル」(丘の人)と総称され、敵側の総称は「レプン・クル」(沖の人)といわれた。(戦闘メカ ザブングルとは関係ないようだ)

ただこれは一つの読解であり、ユーカラの記述そのものではないようだ。

カンナカムイとポイヤウンペの闘い

を読むと、2つのことが分かる

まずポイヤウンペは英雄ではあるが殺人鬼だ。オタサムという村の争奪戦では、敵対国に乗り込んで村人を狂人のように切って切って切りまくっている。

ポイヤウンペは神を恐れず、神と闘い、神を打ちのめしている。すなわち既存の権威を打ち壊している。彼は兄がとりなしに入るまでそれをやめようとしない。

彼はレブンクルが支配する体制の破壊者であったのだろう。だからその凶暴性はヤウンクルからは許されたのである。

第二に、彼の英雄譚は浜益を越えて日高の人にまで語り継がれたということである。日高の人と浜益の人の縦帯を共通の英雄譚として結びつけるとすれば、それはアイヌ民族のオホーツク民族に対する反抗心の表象であったのかもしれない。

ただ、それはオホーツク人に対する逆恨みであるかもしれず、オホーツク人を殺し駆逐する行為を合理化するためのイデオロギーであったのかもしれない。

知里真志保「ユーカラの人々とその生活」では次のように語られている。

この戦争の相手である異民族を一括してユーカラではレプンクル(沖の人)と云うのでありますが,それはつまり「海の彼方の連中」ということ
で, その連中の中には「サンタ」と称していわゆる山丹人が出て来るし, その山丹人の仲間には「ツイマ・サンタ」(Tuyma-Santa)すなわち「遠い・山丹人」と称する中国人も出て来ます。

アイヌ物語 というページがネット上では出色である。ページそのものはリンク切れになっているが、グーグル・キャッシュで読むことができる。

ユーカラにはポイヤウンペ、アイヌラックル、オキクルミ・サマイユンクルなどの英雄が出てくる。いずれもアイヌたちの生活や文化を拓いたものだ。この英雄神たちは半神半人であったり、神であったりさまざまである。

1.ポイヤウンペ

ポイヤウンペは両親がおらず、両親以外の人に育てられている。このような生い立ちは英雄たちに共通する。

彼はある日、自分の憑神に両親のかたきの事を知らされ、かたき討に出陣します。

敵討に行く途中に敵であるものとも、敵でないものとも戦いますが、兄や姉の協力を仰ぎ倒していきます。

敵の首領の妹は巫女であり、未来を読んで主人公の味方になります。その後主人公は勝利し、そのまま首領の妹と結婚し、物語は終わりとなります。

ポイヤウンペが使う刀はクトゥネシリカと呼ばれる名刀で、刀に彫りこまれた夏狐の化神、雷神の雌神・雄神、狼神などが憑き神となっており、それらの神獣が現れ持ち主を救います。

とされており、ウィキペディアの説明とはだいぶ異なる。「ファイナル・ファンタジー」の感覚そのままだ。

ただ、深読みにすぎるが、男どもを皆殺しにし、女どもを妻とするという構図は、アイヌ人のY染色体が縄文の色を強く残し、ミトコンドリアDNAがウィルタやカムチャッカの少数民族と共通するという事実と一致しているようにも見える。

2.アイヌラックル

ポイヤウンペはその弱点もふくめ、一番人間臭い英雄であるが、アイヌラックルはもう少し超人的である。

アイヌラックルという名前がそもそも「人間くさい神・人間と変わらぬ神」という意味らしい。

雷神であるカンナカムイとハルニレの木の精霊でもあるチサニキ姫との間の子で、燃えさかる火の中から誕生したという。

彼は神の子でありながら、地上で人間同様に暮した。人間を襲う鹿を退治したり、魔女ウエソヨマを始めとする魔神や悪魔たちを倒し、雷神の力を持った宝剣で暗黒の国を焼き滅ぼした。

しかし晩年は人間たちに嫌気がさし、どこかへと行ってしまった。

これは乃木大将が軍神に祭り上げられた経過と同じではないか。いずれにしても血生臭さがウリの英雄である。世の中が落ち着いてくると居場所がなくなって何処かに引きこもってしまうというのも、そぞろあわれではある。

いずれにしても、アイヌ人には血を血で争うような過去があり、その闘いの中からアイヌ人という民族が誕生したのだということだ。大和・出雲神話とはまったく異なる世界である。

3.オキクルミ・サマイユンクル兄弟

オキクルミは道央~道南、サマイユンクルはサハリン(樺太)南部~道北・道東にかけて活躍した英雄神です。天から降り、人々に農耕や狩猟などの生活の知恵を授けて回りました。

彼らは兄弟とされており、信仰されているところでどちらかが優位に立ち、どちらかが損な役割になっています。

オキクルミは多くの英雄譚と習合していて、オリジナルのキャラが見えにくいようだ。

この神様たちはかなり和人の匂いがする。

なおこのページには、ほかにヌプリコロカムイ、チロンヌプカムイ、コタンコロカムイ、カムイフチ、カンナカムイ、ウバシチロンヌプカムイなどの名前がリンクされているがたどることは出来ない。