ネットを見ていたら、「キューバの音楽おすすめ曲10選」というページがあった。
「すげぇことをするもんだ」と眺めていたら、私も「独断と偏見」で選んでみようと思い立った。
むしろ「思い出の10曲」というべきか。自分なりの思い出が絡んでいるからかなり他の人とは違うと思う。順位はつけない。
1. エレーナ・ブルケ 「ノスタルヒア」
もう20年も前の話になるが、エレーナ・ブルケが北海道にやってきた。
私は滝川まで追っかけをやって、聞いてきた。ダンソン系の楽団と帯同しての公演だったが、彼女の歌は数曲だった。しかも彼女の得意とするフィーリンはまったく歌わなかった。
札幌での公演の後、「ノスタルヒアを聞きたかった」と声をかけたが、笑っただけだった。その後1年もしないうちに死んだと聞いた。
いうまでもなく「ノスタルヒア」はアルゼンチンタンゴの名曲で、フィーリンでもなんでもないが、彼女の歌唱が一番良い。(「タンゴ名曲百選」を参照されたい)
2.シルビオ・ロドリゲス 「プラヤ・ヒロン号」
2回めのキューバは1993年、経済危機の只中。サンチアゴの街は灯火もなく真っ暗だった。
革命広場の一角にソンを聞かせるバーが有る。たしかカサ・デ・マタモロといった。外国人を相手に営業している店だ。
そこでトリオ・マタモロスのコピーバンドが演奏していた。一通り終わって、リクエストタイムになったのでこの曲を注文した。
マスターは首を横に振って「出来ない」と言っている。するとギターを弾いていたアンチャンが「なんとかできると思う」と言って、弾き語りを始めた。
「なんとかできる」どころではない、頗る付きの名演で、私は終わるなり彼に飛びついた。
開け放たれた窓の外には、黒山の人だかり。みんな押し黙って眼だけが輝いていたのを思い出す。
3.ベニー・モレ 「BONITO Y SABROSO」
別にそれほどの曲ではない、普通のマンボだが、思い出がある。カマグエイの国営ホテルはソ連の建てたもので、いろいろ泊まったホテルでも最低だった。野外のディスコ・パーティの音が夜中まで部屋中鳴り響いた。
朝食堂に行くと、革命前からのものと思われるジュークボックスがおいてある。中のドーナツ盤も相当の時代ものだ。ところがコインを入れるとなんと動くのだ。
さあ何をかけるかと言われても分からない。適当に押したのがこの曲だ。この曲が流れると渋面のウェイターの顔がとたんににこやかになる。なんと歩きながら腰を振る。ガイドさんに「これは一体何」ときくとベニー・モレだそうだ。
彼は革命後も逃げなかった。そして63年にアル中で死んだ。ひょっとして逃げ出す体力がなかったのではないかとも思う。
結局、彼はいまだに人気がある。なにが幸いするかはわからないものだ。
4.グルポ・モンカダ 「Caiman no come Caiman」
グルポ・モンカダは私の大好きなバンドで、いろいろ探すのだが見つからない。どうして日本ではやらないのか不思議だ。
もともとはチリのヌエバ・カンシオンみたいなグループだったようだ。道理でコーラスが美しい。それが途中からサルサバンドみたいになって、ノリの良いリズムでやっている。
演奏者も観客も白っぽいが、なるほどと頷ける。
この曲は経済危機の頃のヒット曲で、旅行中にガイドさんが「カイマン、カイマン」と口ずさんでいたのを覚えている。
5.エステル・ボルハ 「Mi vida eres tu」
キューバで買ったCDの一つが、レクオーナの曲を歌ったもので、伴奏はレクオーナ本人。
音はひどいものだ。相当お化粧して、You Tubeにアップロードした。もうボルハ自身も盛りを過ぎているようで、昔のような声のハリはないが、その分しみじみとしてうまい。
この曲の他の演奏を探していて出会ったのがヨハナ・シモンというソプラノ。声も顔もよいが、とにかく歌が素晴らしくうまい。
6.パブロ・ミラネス 「チャン・チャン」
93年にキューバでCDを手に入れて以来のお気に入り。バラクーダよりさきに発見したというのが密かな自慢だ。
とにかくあの頃は見つけたら買わないと、いつ買えるかわからないという状態だった。このCDもサンチアゴのホテルのプールサイドの売店で買ったものだ。
ちなみにハバナクラブの21年ものは、プラヤヒロンに行く途中のワニ園の売店で手に入れた。
7.パブロ・ミラネス 「El Breve Espacio en Que No Estás」
これもパブロの曲。キューバ人で知らない人はいない。コンサートの最後に歌うと、聴衆の合唱となる。「トダビア」という歌だと思ったら、難しい題名がついている。日本語だと「あなたがいない隙き間」くらいなところか。
パブロについては 2014年10月15日 パブロ・ミラネスを聞け を参照されたい。
8.ロス・バンバン 「Aquí el que Baila Gana」キューバでいちばん有名な楽団といえばロス・バンバンで、そのいちばん有名な曲といえばこの曲でしょう。しかし題名の意味がわからない。「ダンスを踊りたい人はここへ」なんでしょうか?
9.レオ・ブローウェル 「11月のある日」
綴りは“Brouwer”だが、ブローウェルと読むらしい。レオ・ブラウアーと書くとガンダムのキャラになる。ギターの独奏で、76年にウンベルト・ソラスが作った同名映画の付随曲らしい。いかにもそれっぽい。
何か、「ルシア」の映像が思い浮かびます。高倉健と倍賞千恵子よりはだいぶ濃ゆい。
10.
最後の1曲になってはたと困った。一つはゴンサロ・ルバルカバの82年ころの録音で、コンサートのライブだ。そのLPが見当たらない。
20年位前、ヒステリーを起こした嫁さんがレコードをすべて無断で捨ててしまった。あれは1984年にハバナに行ったとき、もらったものだ。
1曲めがチャポティーンで2曲めがルバルカバを中心とするバンドだった。15分位の熱演で、ジャズというよりファンキーだったように憶えている。
10年くらいしてからルバルカバが有名になって、ジャケットを見てみたらルバルカバの名前があった、というくらいレアな盤だった。
MDに落とした気もするがいまさら探す気にもならない。
ゲバラを歌ったカルロス・プエブラの「アスタ・シエンプレ」は93年に初めて聞いて、良いなと思ったが、今やすっかり観光ずれしてしまった。
オルケスタ・アラゴンのチャチャチャはなかなか1曲に絞りきれない。有名なのはエル・ボデゲーロだがBaile del Suavecitoの美しさも捨てきれない。
おお、そうだこれでいいんではないか
10.セステート・アバネーロ 「エレナ・ラ・クンバンチェラ」
そこそこヒットしたし、もろにソンなのは他に1曲もないし。グルポ・シェラマエストラのカバーも良いものです。テクニック的にははるかに上ですが、いちおうオリジナリティを尊重して。
最後はちょっと雑だったね。
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